八重山教科書問題④

記者:栗原佳子

なし崩し導入のおそれ

 沖縄・八重山地区(石垣市、竹富町、与那国町)の中学公民教科書の採択をめぐる問題は、4月の新学期を前に未だ決着がついていない。

そんな中、2月8日、今回の採択のあり方をめぐり、保護者らが起こした訴訟が初弁論を迎えた。

まずは簡単に経緯を振り返りたい。昨年8月23日、3市町でつくる八重山採択地区協議会が「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版を選定。しかし答申を受けた3市町の判断は分かれた。石垣市、与那国町は育鵬社版。竹富町は答申とは異なり、東京書籍版を選んだ。

採択地区協議会は、3市町の教委の諮問機関にすぎず、採択の権限は各自治体にある。しかし、一方で採択地区内は同一の教科書を選定すると決められている。このため9月8日、3市町の全教育委員参加の協議を実施、沖縄県教委もオブザーバー参加した。そして最終的には多数決を取り、一転、東京書籍版が選ばれた。

これに対し、石垣市と与那国町の教育長は文部科学省に「協議は無効」と文書を送付。この申し立てに即したかたちで、当時の中川文科相は「9月8日の協議は整っていない」などと発言。石垣市、与那国町には育鵬社版を無償で、一方の竹富町には「東京書籍版にするなら無償の対象にならない」と恫喝した。竹富町は猛反発、来年度予算から、教科書の購入費を支出しない方針を貫く。県教委も「9月8日の協議は有効」という立場を堅持している。

しかし、石垣市、与那国町は育鵬社版の必要冊数を文科省に報告。このままいくと、2市町の子どもたちは育鵬社版の教科書を手にする可能性が極めて高い。

2月8日、那覇地裁ではじまった訴訟は石垣市と与那国町の小中学生と保護者と小中学生ら合わせて8人が原告。東京書籍版を選んだ「9・8協議」の採択を有効とし、石垣市教委と与那国町教委、県を相手取り、東京書籍版の教科書を無償で給付されることの確認を求めている。教科書の中身についてではなく、あくまで採択の是非、どちらの採択が有効かが争点だ。

初弁論では最初に原告に名乗りをあげた母親2人が意見陳述、「八重山の中学生に正しく採択された公民の教科書を配布してほしい」「適法な教育行政が行われたのかどうか問うことにより、民主主義とは何かを身をもって教え、親としての責任を果たしたい」などと訴えた。原告らは八重山の各地で勉強会も開いており、思いを共有する保護者たちは着実に増えているという。第2回口頭弁論は3月21日に開かれる。

いまの平野文科相は前任者を踏襲し、「竹富町は有償」と発言している。新学期は秒読み。時間切れを理由に、なし崩し的に育鵬社版を導入する狙いが透けてみえるかのようだ。

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