被災がれき受け入れ

記者:高橋 宏

 先月号で被災地の災害廃棄物を広域処理する問題について、大阪府の動きをお伝えしました。今月もまず、その続報から報告させてください。私が広域処理の是非にこだわる理由は、放射能汚染の拡大という問題に加え、日本の原子力行政のあり方そのもの、そして原子力問題に対する自治体(特に原発現地以外)の姿勢が問われていると考えるからです。

海老澤徹さんたちが提出した質問状に対しては、1月20日付で知事名による回答書が届きました。松井一郎知事の名前になっているものの、担当として環境農林水産部の広域処理対策担当と記されていましたから、そこで作成されたものなのでしょう。果たして知事がどこまで自分自身で質問状の内容を吟味し、考えたのかは不明です。回答は、9項目の質問にそれぞれ答えるという形ではなく、順不同で12項目にわたって大阪府のこれまでの見解を示しただけのものでした。しかも、9項目のうち大阪府が出した処理指針が「各自治体の焼却炉そのものの汚染については検討されていない」ことを指摘し「放射能汚染される焼却炉の対応」と「使用済みフィルターの処理」への対策を質した項目を含め4項目は回答がなかったのです。

ところで、回答に先立つ1月18日、大阪府は災害廃棄物の処理指針について、市町村担当者らを集めた説明会を開催しています。集まった約80名に、大阪府の担当者は「被災地の早期の復旧、復興のためには災害廃棄物の処理を全国の自治体で分担する必要があるので、広域処理に対して前向きに検討いただきたい」と要請したそうです。指針について、処理の流れや、作業者や周辺住民の被ばく線量の試算結果などの説明がありましたが、焼却炉そのものの汚染については、やはり触れられませんでした。

海老澤さんたちは2月13日付で知事に対して再質問状を提出しましたが、その前文の一節を少し長くなりますが引用しておきます。「そもそも今回の福島原発事故をそのはじめに戻って考えてみてください。福島県を中心にして大変な放射能汚染をもたらしましたが、その主要な原因となったものは、事故時に排気筒から『フィルターなしで』ベント、放出された放射能です。もし、バグフィルター(注・焼却炉で使用される集塵用のフィルターのこと)が国の言うように99・9%の除去効率があるものなら、そのようなフィルターは、真っ先に、福島原発の排気筒に装着されねばならなかったわけです。そうすれば、今回の放射能汚染は、はるかに少なくて済んだはずです。

しかしながら、国は福島原発に対しては排気筒にフィルターの装着を義務づけませんでした。(中略)その国が焼却場に対してはバグフィルターがあれば99・9%放射能は除去できると言っています。その言葉を大阪府は何の疑問も感じることなしに信じたのでしょうか。そのようなことで、大阪府民の健康を守ることができるのでしょうか」

最近になって、原子力委員会の専門委員3人が、原発関連の企業・業界から多額の寄付金を受けていたことなど、国と原子力産業の癒着ぶりが次々と明らかになっています。こうしたことは今に始まった事実というわけではありません。次々とマスコミに取り上げられるようになった、と言う方が正確でしょう。

さらに、2月15日に国会に設置された原発事故調査委員会に参考人として出席した原子力安全委員会の班目春樹委員長が、今回の事故に関して自分には責任がないかのような発言を繰り返し、原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長が「自分は事務方で技術的なことは分からない」という内容の発言をしています。日本の原子力行政は、こうした人々が中心となって動いてきた(現に動いている)ことを、私たちは改めて認識する必要があります。そして、そのような人々によって出された指示や指針を元に、各自治体が原子力関連の対応をしているというのが現実なのです。

災害廃棄物の広域処理をめぐっては、大阪府下の自治体でも勉強会や検討会を開催するなどして高い関心が示されています。そのような中で箕面市が2月13日、市のホームページで次のような表明をしました。「震災がれきの受け入れについては、放射性物質による市民の健康と安全への影響に対する懸念を払しょくすることができません。大阪府においては受け入れに関する検討が行われていますが、本市は受け入れは行わない方針とし、受け入れを前提とした議論には参加しません」。市長と直接交渉してきた市議の増田京子さんや、多くの市民の働きかけによるものでした。今後、他の自治体も広域処理について自ら考え、方針を決めてほしいと思います。

もちろん、ただ単に「危険だから受け入れられない」とするだけでは、被災地の方々も納得できないはずです。放射能汚染をこれ以上拡大しないという前提とともに、広域処理に代わる被災地支援のあり方を自治体として真剣に議論することが大切になってきます。私は、災害廃棄物を被災地で処理・処分できるような物的・人的支援の方法を検討していくべきだと考えます。皆さんはどう思われますか?

来月は事故発生から1年を迎えます。この頃は「事故後」の報道ばかりが目につき、福島第一原発の現状があまり伝えられなくなってきました。しかし、事故は未だに進行中であり、住み慣れた故郷からの避難を余儀なくされた多くの人々が存在することを、私たちは忘れてはなりません。災害廃棄物の広域処理問題は、原発事故がこの国にもたらした災厄の、ほんの一部に過ぎないのです。

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