問題点突き敗訴「伊方訴訟」

記者:高橋宏

新聞うずみ火主催の講演会「いまさら聞けない原発の話」の第5回が2月25日、大阪市中央区のエル・おおさかで開催されました。講師は元・京都大学原子炉実験所助教授の川野眞治さん。これまでずっと、原子力開発・利用に警鐘を鳴らし続けてきた「熊取6人組」の一人です。川野さんには「市民と『アカデミズム』のはざまで・フクシマ原発事故を考える」と題してお話をしていただきました。

川野さんはまず、自己紹介を兼ねて日本の原子力開発・利用の経過を紹介。導入当時の楽観・歓迎ムードに触れた上で「通常は40年経てば技術は成熟し、産業として成立するはずなのだが、原子力は未だにそうはなっていない。そもそも、社会が受け入れられる技術なのか」と問題提起をしました。そして、自身が関わった四国電力の伊方原発訴訟について説明し「理論的には原告(住民)側が被告(国など)を圧倒していた。にもかかわらず、第一審の判決の際に裁判長交代があり、原告敗訴の判決が出て、最後は最高裁で請求棄却となってしまった」「当時、原告側は原発が抱える問題点のほとんどを指摘していたと思う。それらは今日まで未解決の、原子力が抱える本質的な問題だった。その延長線上に今回の福島第一原発事故がある」と、司法の対応を批判しました。同時に、科学者が住民側の技術的サポートをすることの重要性を強調しました。

さらに、川野さんは今回の原発震災は予告されていたこと、原発の多くが地震の巣の上に立地されていること、原発が生み出す「核のゴミ」の処理・処分が未解決であること等々、原発が抱える問題点を丁寧に説明。原発を推進する根拠の一つである「地球温暖化対策」について「温暖化を口実に原子力を正当化するような忌まわしい二者択一をしてはならず、双方を避けようとするのが倫理的な態度だ」と訴えました。また、福島第一原発事故については「地震と津波の想定が甘すぎ、対応に失敗して被害を拡大させた人災事故で、今も深刻な事態が続いている」「事故収束の終わりは見えず、放射能汚染水がどこから漏れ出すか分からないなど、まだまだ危険な状態だ」と警告しました。

最後に、自身が「化学」の専門家であることを踏まえて「私たちの社会や環境を形作っている鉄やコンクリートは化学結合のエネルギーによる材料。核を破壊して得られる原子力エネルギーは、化学結合のエネルギーの百万倍以上の大きさだ。そもそも、原子力エネルギーを、その百万分の一でしか結合していない材料で制御するということは、基本的に無理な話なのだ」として、講演を締めくくりました。

この指摘は、今回の事故のみならず、平常時であっても原子力開発・利用が内包する危険を、ズバリ言い当てたものだと言えるでしょう。

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