大阪府・市 補助金打ち切りへ

記者:矢野宏、栗原佳子

大阪市の橋下市長は6月2日、来年度の本格予算編成に向けた各部局との折衝で「大阪人権博物館(通称・リバティおおさか)」の補助金を今年度限りで打ち切ることを決定した。大阪府の松井知事も「市が補助金を出さないなら府だけで支えるのは無理」と追随した。「リバティおおさか」の年間予算の85%は府市の補助金である。事実上の廃止通告に等しい。
橋下市長は4月に「リバティおおさか」を視察、「差別と人権のオンパレード」などと批判したうえで翌5月には「廃止に向けて検討中」と表明した。その後市に寄せられたパブリックコメントは、存続を求める声が圧倒したが、顧みられることはなかった。
同日の会見で橋下市長は「ワンチャンスを与えたのに(見直しの指示に)沿ってやってくれなかった」(6月3日付朝日新聞)と突き放したという。しかし、そもそも、橋下市長が批判した展示内容は、府知事時代の氏の意向に添ってリニューアルしたもの。「指示に沿ってやってくれなかった」と言うのは虫が良すぎるというものだ。
すでに「リバティおおさか」は橋下府政下で補助金が大幅にカットされており、特別展などの実施も不可能な状況になった。今年度、前年度予算の2割減でついた「最後の」補助金は〝事業整理のための費用〟。常勤職員らへの退職金支出すら認めないという。

市政記者クラブで記者会見する「ピースおおさかと大阪の平和施策の進展を願う有志」

一方、橋下市長が「リバティおおさか」と「大阪国際平和センター(ピースおおさか)」に代わるものとして打ち出した「近現代史教育館」(仮称)新設構想の波紋も広がっている。「新しい歴史教科書をつくる会」系など歴史修正主義に立つ学者に助言を求め「両論併記」にすることに危機感を抱き、6月15日には大阪の歴史学者や大阪大空襲の体験者らが声明を発表した。「世界平和達成に向けた努力をさらに強めること」「大阪国際平和センター(ピースおおさか)の設置理念を生かすこと」を求めている。 
声明を出したのは、「ピースおおさかと大阪の平和施策の進展を願う有志一同」。大阪電気通信大学教授で大阪歴史学会代表委員の小田康徳さんら25人で、矢野もその一人。
声明では、加害と被害の両面を展示するピースおおさかの姿勢について、「世界の人々、とりわけ中国や韓国など東アジアの人々からも深い感銘をもって迎えられ、大阪の企業や市民が友好・経済活動を深めていく上でも重要な役割を果たすものとなっている」と指摘。展示リニューアルと新施設構想について、「過去の対外戦争によりアジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えたことなどの厳粛な加害事実を相対化し、被害当事者を辱めるようなことがあってはならない」と求めている。
また、「新しい歴史教科書をつくる会」系の意見を取り入れることについて「結局は日本の戦争責任をなかったものとする意見に一定の市民権を与える」と訴えた。

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