理不尽な現実 いまも変わらず

 

続・復帰40年 大阪の読谷出身者

記者:栗原佳子

 沖縄本島中部に位置する読谷村。67年前の沖縄戦で米軍の上陸地点となり、村面積の95㌫までを米軍に奪われた。住民の多くは、自分の土地に帰還することもかなわなかった。
 関西地区読谷郷友会会長の平安

容疑者が逃げ込んだトリイステーション

名常徳(へんな・じょうとく)さん(69)=大阪市生野区=は基地に四方取り囲まれるようにして育った。「米軍や米兵による犯罪や事故は日常茶飯事でした」と振り返る。

 終戦の翌年、母方の親せきの知念洋子ちゃんが亡くなった。3歳。自宅庭で遊んでいるところを、セスナ機から降ってきた燃料補助タンクに直撃された。
 米軍は日本軍の飛行場を占領・拡張した読谷補助飛行場で、パラシュート降下訓練を日常的に行った。コンクリートや装甲車までも投下、たびたび目標を外れ、住民の生活を脅かした。1965年6月、当時10歳の棚原隆子ちゃんは、自宅庭に落下したトレーラーの下敷きになり命を落とした。
 平安名さんは小学生時代を石川市(現うるま市)で過ごした。その当時、目と鼻の先に住んでいた女の子が55年9月、米兵に誘拐・殺害された。「由美子ちゃん事件」だ。当時6歳の永山由美子ちゃんは米兵にレイプされ、無残な刺殺体となって遺棄された。
 それから4年後の59年6月、石川市の宮森小学校にジェット戦闘機が墜落、児童を含む17人が死亡するという大惨事が起きた。整備不良のため上空でトラブルが発生、パイロットはパラシュートで脱出し、無人の戦闘機は制御不能の状態で集落をなぎ倒し、小学校の校舎に激突した。平安名さんは5年生の1学期まで宮森小に通った。事故では同級生の弟や妹も亡くなった。
 「僕だけじゃありません。沖縄の人間なら当時、みな同じ体験をしてますよ。我々には何の人権の保障もないに等しかった。だからこそ平和憲法のもとで平和に暮らしたいと、復帰を求める声が高まっていったのです」

 2009年11月、村最大のイベント「読谷まつり」でにぎわう会場近くで、男性の遺体が見つかった。村内在住の66歳。状況から警察はひき逃げ死亡事件と判断した。男性は早朝ウオーキング中に事故に巻き込まれ、半日以上、雑木林の陰に放置されていた。
 帰郷していた平安名さんは翌日新聞を開いて絶句した。「読谷高校の3年のときの同級生だったのです。ショックでしたね」。数日後には同窓会が予定され、久しぶりに彼とも再会できるはずだった。
 ショックに拍車をかけたのはひき逃げ犯人の素性。トリイステーションに所属する27歳の米兵だったのだ。フロントガラスが割れた「Yナンバー」の車を修理工場に持ち込んだことが決め手となった。
 普通ならここで容疑者が逮捕されてしかるべきだ。ところが相手は米兵。基地に逃げ込み、身柄の引き渡しどころか、県警の任意の取調べすら応じようとしない。それでも、不平等な日米地位協定が壁となり、日本側は手も足も出せないのだ。
 米兵は繁華街で遊んでの朝帰りの途中だったという。飲酒運転の可能性も指摘されていた。にもかかわらず、那覇地検の起訴を受けて、米兵の身柄が日本側に引き渡されたのは、事故から2ヵ月後のことである。この6月、懲役2年8カ月の実刑判決が最高裁で確定したばかり。裁判では不誠実な態度に終始、遺族感情を逆撫でし続けたという。
 沖縄では、米軍等の事件・事故がいまも年間1000件あまり発生している。沖縄の人々は、一貫して日米地位協定の抜本改定を求めて声をあげてきた。しかし、その叫びを米国はもちろん、日本政府も聞こうとはしてこなかった。

 野田首相らも出席して沖縄で開かれた5月15日の復帰40年記念式典。その模様を報じる翌日の新聞を見ながら、金城洪臣(きんじょう・こうしん)さん(72)=大阪市淀川区=はぽつんとつぶやいた。「私もこの気持ち、よくわかるんですよ」
 紙面には大きく大田昌秀元沖縄県知事の写真があり「深まる本土との溝」という見出しが添えてあった。大田元知事は、「とても祝う気になれない」と、招待された式典の出席を拒否していた。沖縄は大の虫を生かすためには犠牲にしてもやむをえない小の虫であり、政治的質草、取引の愚であり続けたとーー。
 金城さんは関西地区読谷郷友会の初代会長。1995年に沖縄で起きた少女暴行事件を機に、基地をなくす運動を関西の地で取り組んできた。「それからさらに17年も経つのに普天間基地は動かない。沖縄への基地負担も変わらず、さらに危険なオスプレイまで配備されようとしています」と怒りをにじませる。

残波岬に建つ「旅人(たびんちゅ)」のモニュメント。郷友会の発案で建立された。読谷村在住の彫刻家・金城実さんの作品。古里を離れて、古里を強く思う読谷山人(ゆんたんざんちゅ)の思いがこめられている。

 「こんな一つの地域が半永久的に基地として、好き放題に使われるということは、世界に例がないですよね。では、そうさせたのは誰なのでしょうか。日本は独立国として法治国家として、アメリカに言うべきことをいわなくてはならない。結果的に辛い思いをするのは沖縄県民。どうか日本の国民全体が考えてほしいのです」

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