リニア新幹線計画 

沿線住民から疑問相次ぐ

記者:森山和彦

東京ー大阪間が約1時間で結ばれる夢の鉄道「リニア中央新幹線」。この計画に疑問の声が相次いでいる。9月30日、甲府市に東京、神奈川、山梨、長野、岐阜などの沿線住民が集まり、「ストップ・リニア沿線住民の集い」と題して、それぞれの地域が抱えている問題を話し合った。

リニア中央新幹線計画とは、東京から名古屋を経て大阪までのほぼ直線ルートを約1時間10分で結ぶ計画で、公式速度は時速500㌔とされている。まず、東京―名古屋間が2027年に開業、そして大阪までが45年に開業予定となっており、2年後の14年には着工される予定だ。

リニアは超伝導磁気浮上方式と呼ばれ、レールも架線も使わずに、電磁石の反発力と吸引力で地上約10㌢を浮上走行する技術で、実用化されれば世界で初めてとなる。運転士は乗車せず、制御センターからの遠隔操作で走る。そして、全体の8割以上が地下40㍍以深の大深度トンネルになる予定で、5~10㌔ごとに排気や緊急時の避難口となる直径30㍍の立坑が設置される。

建設主体のJR東海は、建設目的を東海道新幹線の老朽化や大規模災害に備えるための代替にバイパスとするとしており、東京から大阪まで9兆300億円と言われる総工費を全額自己負担するとしている。

今までにない規模と技術が使われることもあり、リニア計画に対しては、各地から環境への影響など様々な不安が上がっている。

今回の集会の主催者で、慶応大名誉教授の川村晃生さんは「リニアは、膨大なエネルギーを消費する懸念がある。JR東海は、時速500㌔で走行した場合の平均電力量は明らかにしているが、リニアが最も電力を消費する発進時の最大電力量を明らかにしていない。情報の開示と私たち住民が疑問に考えていることにちゃんと答えてほしい」と訴えた。さらに、JR東海の葛西会長が新聞紙面で原発再稼働論を浜岡原発停止の直後から展開していることもあり、リニアの推進が原発の再稼働とセットになっているのではないかとの懸念を示した。

また、川崎市の沿線住民である天野捷一さんは「川崎は市街地の地下40㍍にトンネルを掘る。市民には何のメリットもない。掘削の際に発生する膨大な残土の処理はいったいどうするのだろうか。住民の生活に影響があるが、この1年間、具体的な情報を知らされていない。1年後に着工ということなので、このまま何も知らされないまま事態が進むことはとうてい認められない」と述べ、情報開示を求めた。

岐阜県中津川市の住民で、JR東海労組の荻野隆一さんは、住民として「リニアのトンネル工事を進めれば必ずウラン鉱床に突き当たる。その放射性物質を含む残土をどうするのか。また、氷河期より前から自生する地域固有の植物『ハナノキ』や『シデコブシ』などの群生地がリニアの工事によって絶滅の危機にさらされる。それは見過ごせない」と環境への懸念を述べた。

さらにJR東海の社員として「ここ最近、急に夜勤明けのシャワーの制限など節約が叫ばれるようになった。一部列車では日中、室内灯の消灯なども行なっている。トンネルを抜けて消し忘れれば日勤教育になる。国鉄末期の状況を思い出す」と内情を説明した。

経営について、JR東海労組の渕上委員長は「いまJR東海は国鉄から買い取った時の借金が3兆円残っていて、その金利が8%から1%に下がっている。その7%分は金額にして年間3000億円ほど。それをリニアの建設費に充てることになっている。だが、金利が上がったらどうするのか。会社は建設スピードを下げるといっているが、それでは27年の開業は見込めないのではないか」と不安を語り、「もし失敗すれば、国からの資金注入という事態になり、みなさんの税金が使われることになる。本当に、国民のためになるのか」と、リニア計画への反対を表明した。

このほかにも、リニアから生じる電磁波の人体への影響を懸念する声や南アルプスにトンネルを掘る事による自然への影響、大深度で長大なトンネルでの安全性などさまざまな問題が話し合われたが、集まった人たちが口をそろえて言うことは「データの開示」と、一方的な説明会ではなく「話し合いの場を作ってほしい」ということ。

今後のJR東海の対応も含めて、リニア中央新幹線の問題をこれからも注視していきたい。

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