大飯原発の活断層調査

真価問われる原子力規制委

記者:高橋宏

11月2日、原子力規制委員会が国内で唯一稼働している関西電力大飯原発の敷地内を走る断層(破砕帯)について、発足後初めての現地調査を行いました。調査団(5人)は4日に東京都内で結果を検討しましたが、問題の断層が活断層か否かをめぐり、見解は真っ二つに分かれたのです。そこで、7日に再度会合を開いたものの結論は出ず、関電に追加調査を要請することになりました。このため、大飯原発の運転継続の可否が年内には出せない可能性が出てきました。
福島第一原発事故後、これまでの規制機関であった原子力安全・保安院が、原発を推進する資源エネルギー庁と同じ経済産業省の中にあることが問題視され、推進官庁から独立した機関の設置が求められました。内閣府に設けられていた原子力安全委員会も権限が限られていたことや、文部科学省などに規制機能が分散していたことも考慮され、一元化された規制機関として設置が検討されたのが原子力規制委員会(以下、規制委)です。様々な検討を経た結果、2011年に制定された放射性物質汚染対処特措法に基づいて、原発事故で放出された放射能による環境汚染に対処する施策を、環境省が所管していることなどを理由に、その外局として規制委を設置する案が固められていきます。そして9月19日、新たに原子力の安全規制を担う機関として規制委が発足し、同時に事務局機能を担う原子力規制庁(職員約460人体制。以下、規制庁)もスタートしたのでした。

「原子力ムラ」一員も

委員会のメンバーは5人です。原子力規制委員会設置法(6月27日公布)によると、委員長や委員は「人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者」から、「両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する」ことになっています。野田佳彦首相が任命したのは、田中俊一委員長(元日本原子力研究所副理事長)、島崎邦彦委員長代理(東大名誉教授・地震学)、更田豊志委員(日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門副部門長)、中村佳代子委員(放射線医学)、大島賢三委員(元国連事務次長)でした。また、初代の規制庁長官には池田克彦前警視総監が就任しました。

田中委員長就任に抗議する市民

このメンバー構成については、政府が7月に人事案を国会に示しましたが、与党・民主党内からも「『原子力ムラ』の一員ではないか」という批判が起こり(国会外でも多くの人が「認められない」という声を上げました)、採決が見送られたという経緯があります。そこで政府は、規制設置法の例外規定(緊急事態宣言中なら国会の同意を先送りできる)を理由に、首相権限で任命したのでした。福島第一原発事故について「収束宣言」を出していながら、「緊急事態宣言中」とは何とも矛盾した話なのですが……。こうして、未だに国会の同意を得られないまま、規制委は発足したのでした。

発足直後、規制委は原発再稼働のための基準見直しなどに着手し、田中委員長は「現行基準では再稼働させない」として、大飯原発に対する政府の姿勢についても批判的な見解を述べました。しかし一方で、原発再稼働の判断について田中委員長は「規制委の判断は科学技術的判断にとどまり、再稼働の最終判断は政治の責任」と述べるなど、再稼働の判断については政治に委ねるような発言をしています。同名のアメリカの原子力規制委員会(NRC・大統領が上院の同意を経て5人の委員を任命)が、原子力規制をめぐっては大統領をしのぐ権限を持っていることを考えると、本当に原発を規制することができるのかどうか、大きな疑問が残ります。

原発止め追加調査を

大飯原発の断層調査は、規制委の島崎委員長代理の他、活断層の危険性を警告し続けてきた渡辺満久・東洋大教授や、広内大助・信州大准教授、岡田篤正・立命館大教授、重松紀生・産業技術総合研究所主任研究員の5名で行われました。関電の調査では「活断層ではないとする従来の評価を覆すデータは見つかっていない」という中間報告が出されています。4日に開かれた調査団の会合では、渡辺教授が「原発敷地内に活断層があるのは確実」と指摘して「追加調査をするのなら原発を止めてやるべきだ」としたのに対し、重松研究員や岡田教授は「現時点で活断層があるとみなすことはできない」と、さらに調査が必要という見解を示しました。7日の再会合でも議論は平行線を辿り、結局は追加調査を関電に要請することとなったのです。

規制委の田中委員長は、9月に記者会見をした際に「活断層の可能性がクロか濃いグレーならば運転を止めてもらうことをお願いする」としていました。「専門家」の中で意見が分かれるということは、私たちの市民感覚では明らかに「グレー」です。調査団の会合で渡辺教授が指摘していたように、もし追加調査が必要ならば原発を止めた上で実施するべきでしょう。規制委の目的が、設置法で定められたように「国民の生命、健康及び財産の保護」に資することならば、活断層である疑いが払拭できない以上は、ただちに原発を止めて調査しなければならないはずです。

福島第一原発事故の反省を踏まえて設置された組織が、事故を未然に防ぐために当たり前とも言える措置が取れないとは……。発足当初から予想されていたこととはいえ、期待外れを通り越して失望させられてしまいます。1999年のJCOの臨界事故後、「一元的な規制」を行うために設置された原子力安全・保安院と同様に、結局、名前を変えただけで終わってしまうのでしょうか。

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