ジャーナリスト講座

うずみ火主催の「ジャーナリスト講座」が11月24日、12月1日、大阪市北区のキャンパスポート大阪で開かれた。沖縄タイムス記者の謝花直美さん『沖縄報道を問う』、毎日放送PR戦略室マネジャーの中西正之さん『テレビはどこへ行くのか』、朝日放送経営戦略室マネジャーの奈良修さん『使えるテレビディレクター養成講座』、毎日放送報道局ニュースセンター長、沢田隆三さん『大阪のゆくえとメディア』。それぞれの講演要旨を紹介する。
積み重ねた歴史に着目
沖縄タイムス 謝花直美さん

沖縄では、大きな県民大会が頻繁に起こっている。1995年の米兵による暴行事件に対する抗議。2007年の「集団自決(強制集団死)」を教科書から消そうとした動きに対する抗議。10年の辺野古への基地移転に対する抗議。そして今年のオスプレイに対する抗議。一般の人たちが抗議の声を上げると同時に、沖縄戦や米軍基地に関する先達の経験を学び直すことに大きな意味がある。

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1972年の施政権返還前には「島ぐるみ闘争」と「復帰闘争」の二つの大きな波があり、連日数万の人が集まる集会が行われた。その時、米軍の圧政に対して沖縄の拳が向かっていたが、今は日本に対して向けられている。少し前には沖縄に対する「差別」という言葉は、若い人には共有されていなかったが、今は現実味をもって受け止められている。自分たちの主張が全く伝わっていないからだ。

「差別」という言葉に本土のマスコミは困惑しているのではないか。運動に新規性を求めてしまうのは沖縄の報道も同じ。だが、積み重なる経験が運動につながっていると、認識することが大事である。

沖縄ではオスプレイが強硬配備後、落ちる危険性が高いものが頭上を飛ぶことで、悪夢や身体の違和感などとして現れている。嫌なものを押しつけられるのはゴメンだと、言葉で主張しても全く聞き届けられない。その現実に対する拒否感が身体感覚となっている。沖縄がそういう状況に来ていることを、どう伝えて行くかが課題だ。(謝花直美)
ワイドショーの政治バランス
毎日放送 中西正之さん

「情報番組」はもはや一つのジャンルとして確立しているが、その大きなきっかけとなったのが小泉政権誕生だった。それまで芸能が主体だったワイドショーは一斉に政治を扱い始め、一般視聴者に政治が浸透した一方で、政治のショー化が始まった。弊社の「ちちんぷいぷい」は身近な話題を楽しくお茶の間に届けることに重きを置いているが、政治や社会問題へのニーズが高まるにつれて、ニュース的な対応も求められるようになった。この傾向はこれからも続くだろう。

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番組で海外中継を始めたのはアテネ五輪の頃。その後、IT技術の格段の進歩で海外中継が容易になり、今では毎日のように海外のリポートを放送している。ローカルと世界の距離は確実に縮まっていると感じる。他方、政治と放送する側の距離感はますます難しくなっている。世間の注目を浴び、「視聴率の取れる」政治家にどう向き合い、どう取材するのかというバランス感覚が情報番組のスタッフにもますます求められるようになった。(中西正之)
準備してこそ面白さ増す
朝日放送 奈良 修さん

ディレクターに必要なのは①完成型をイメージせよ ②最短コースを取れ ③最新情報を上書きせよ――の3点である。
まず、現場に行く前に構成台本を書くこと。やりたいことを確認したら、同行するカメラマンなどに説明して情報を共有する。現場へ行くと、予定とは違うことが起きる。その方が面白い。下準備に時間をかけないと現場で起きるハプニングの面白さがわからない。予定調和にないことを上書きしていくことが大切だ。

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テレビの世界には取材とロケがある。「行く前に構成台本などできない。現場へ行ってみないとわからない」という報道に携わる「取材民族」に対して制作の「ロケ民族」はいかに効率よく面白いものをつくるかが求められている。
局の編成は「視聴者が見たいものを作れ」という。わからないから過去に成功した番組のコピーになる。それでは数字だけを求めて何も残らない。大原則は自分が見たいものを作ること。自分以外に3、4人が面白いと言えば大丈夫。誰もやっていないことに挑戦した方がいい。(矢野)
報道の原点 自覚しよう
毎日放送 沢田隆三さん

大阪市の橋下徹市長と『週刊朝日』の論争を考える上で「編集権」の問題がある。橋下氏が会見で「朝日新聞の見解を言え」と迫ったとき、朝日新聞側は「編集権が違う」と答えた。橋下氏は「朝日新聞社が朝日出版の株を持っているのだから一緒だ」と畳みかけたが、編集権は別。メディアそれぞれに編集権がある。スポンサーや政治権力からの圧力に屈することなく、報道の自由を守るためにも「編集権の独立」が大事だ。

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毎日放送の記者が「君が代斉唱条例」に関して橋下市長に質問したところ激高し、罵詈雑言を浴びせられた。そのやりとりを市側がHPにアップすると、記者への個人攻撃が始まった。橋下氏もツイッターで攻撃したため1週間で1000件を超えるメールやFAXが社に届き、その9割が記者批判だった。

記者個人を罵倒する政治家は初めてのタイプ。どう向き合っていくのか突き詰めると、国民の権利に奉仕するという報道の原点を記者一人ひとりが自覚するしかない。(矢野)

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