反原発運動の正念場 「やむなし」空気広げぬために

年末の総選挙で自民党が圧勝した結果、波乱含みで2013年が幕を開けました。読者の皆さん、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

発足した安倍政権は、前政権が掲げた「2030年代に原発ゼロ」とする目標を「見直し」、停止中の原発の再稼働をはじめとして、再び原発推進に舵を切ろうとしています。今なお続く福島第一原発事故の惨禍を二度と繰り返さないためには、稼働中の大飯原発3、4号機を停止し、全ての原発が停止した状況を出発点として、原発に依存しない社会のあり様を具体化していかねばなりません。新たな原発の再稼働、ましてや原発の新設を許してしまったら、おそらく次の惨禍に見舞われるまで、私たちは原発と縁を切ることはできなくなってしまうでしょう。今年は原発を止めるための、まさに正念場の一年になると思います。

■大阪で逮捕者次々と

一方、止める方も必死ならば、進める方も必死です。電力不足や電気料金値上げを強調することによって、原発の必要性を訴える傍ら、福島第一原発事故後に高まった反原発の世論の沈静化を図ってきました。当初は、時間の経過によって徐々に沈静化するとみていたようですが、根強い反対運動が着実に広がっていくことに業を煮やし、徐々に弾圧を強めています。先月号で報告した阪南大学の下地真樹准教授の逮捕(12月9日)はその典型でしょう。逮捕容疑は約2カ月遡った10月17日、JR大阪駅構内でデモ行進やビラ配りを無許可で強行したというもので、威力業務妨害罪および不退去罪です。

12月17日に憲法研究者の有志が声明を出しましたが、その中で下地准教授の行為を「ハンドマイク等を用いて、駅頭で、大阪市のガレキ処理に関する自らの政治的見解を通行人に伝えるものであって、憲法上強く保護されるべき表現活動」としています。そして「刑罰に値するだけの相当の害悪(通行の妨げ等・筆者注)が発生し、または、そのような害悪が発生する実質的なおそれが存在しているとは考えにくい」とした上で、このような表現活動に威力業務妨害罪や不退去罪が安易に摘要されたことに大きな危惧を表明しています。この事件では下地准教授を含めた3人が逮捕されましたが、下地准教授ともう1人は12月28日に釈放されたものの、1人は起訴されてしまいました。

大飯原発再稼働や大阪市の災害廃棄物(放射性ガレキ)の受け入れをめぐる反対運動において、大阪ではこれまでに11人が逮捕(うち1人は再逮捕)され、4人は処分保留などで釈放されたものの、6人は起訴されています。下地准教授の事件以外の主なものは、10月5日の関西電力本店前の包囲行動で、警戒中の警官を転倒させ軽傷を負わせたとして1人が公務執行妨害と傷害の容疑で逮捕された事件。11月13日に開催されたガレキ焼却に関する住民説明会で、会場前で抗議活動をしていた人々のうち4人が、建造物侵入や公務執行妨害の容疑で逮捕された事件。11月22日に夢洲でガレキを運んできたコンテナを撮影していた1名が軽犯罪法違反の容疑で逮捕された事件などがあります。

10月の事件は、警察官がわざと突き飛ばされたふりなどをして転倒し、公務執行妨害罪を適用する「転び公妨」(過去の公安事件では実際に行われてきた)による不当逮捕だという声も聞かれます。

2月号核

原発問題に限らず、国の政策に異議を唱えるような活動(デモや集会など)には常に警察、特に公安警察(警察庁警備局を頂点とした警視庁公安部や警察署の警備課など)が目を光らせてきました。もちろん、微罪による逮捕や不当逮捕は今に始まったことではありません。私自身も、これまで数知れない反対運動の現場で、参加者を写真やビデオで撮影する公安警察の姿を見てきましたし、明らかな不当逮捕の現場にも立ち会っています。撮影等による情報収集にとどまらず逮捕に至る場合、その目的の一つはいわゆる「見せしめ」ですが、最も重要な目的は家宅捜索による情報収集にあると言われています。下地准教授も自宅のみならず研究室まで捜索を受けました。私自身が同じ立場にあるのでよく分かるのですが、大学の研究室は学生を中心とした個人情報の宝庫です。それを「合法的」に引き出せるわけですから、恐ろしい話だと言わざるを得ません。

■参加者守る意識を

私が危惧しているのは、こうした警察による弾圧を「やむを得ない」としてしまう空気が広がることです。確かに、必死になればなるほど、どうしても言動や行動は激しくなってしまうでしょう。大阪で起こった事件のいくつかについては、一般の市民感覚からすれば「過激だ」「やり過ぎだ」と見えるものがあったかも知れません。もしかしたら、警察による弾圧がなくとも、そうした行為が運動に加わることを敬遠させてしまうような側面があったかも知れません。反対運動をする人々が、今後は考えねばならない課題であると思います。

しかし、警察による弾圧を認めるようなことは断じてあってはなりません。言論の自由が奪われ、言いたいことが言えなくなってしまったらどうなるか? 戦前の日本を思い起こせば明らかでしょう。私たちは常に、警察による弾圧(不当逮捕など)に目を光らせていかなければなりません。被害に遭った人々を支えていかなければなりません。同時に、何か行動を起こす際には警察の介入から参加者を守ることを常に考える必要があるでしょう。

その上で、反原発の声を上げ続け、原発推進の動きを食い止めていかなければなりません。その意味でも、今年は反原発運動にとっては大きな正念場であると言えます。

 

 

Comments Closed