「君が代」斉唱不起立

定年前教員に免職警告

昨年4月の入学式で「君が代」斉唱時に起立せず、大阪府教育委員会から戒告処分を受けた府立高教諭の辻谷博子さん(60)が、研修後に提出した「意向確認書」の文言を修正したとして、定年後の再任用を拒否されたことが明らかになった。

辻谷さんは3月末で定年退職するため、新年度からの再任用を希望していたが、府教委から2月19日付で不採用通知を通告された。再任用制度は、希望すればほぼ全員が定年後も教員を続けることができる。辻谷さんは不採用に納得できす、府に再任用審査会の議事録を開示請求、そこにはこう記されていた。

<研修終了後の意向確認において、今後上司の職務命令に従う意思を示さず、意向確認書の文言を『教育公務員として、日本国憲法を遵守し、その精神に則り、今後も精進を続けていきます。また「子どもの権利条約」をはじめとする国際条約に鑑み、自らの人権、子どもの人権が侵害されることのないように努めます』と修正して提出。

上司の職務命令や組織の規範に従う意識が希薄であり、教育公務員としての適格性が欠如しており、勤務実績が良好であったとみなせない。

以上により総合的に判断して、再任用選考結果を「否」とする>

意向確認書には、「今後、入学式や卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱を含む上司の職務命令には従います」と書かれていた。宛先も記載されていない。

辻谷さんによると、「府教委の担当者は、これは提出しても提出しなくてもいい。文言を変えて提出してもかまわないと説明した」という。

しかし、その一枚が再任用の可否につながるとは知らされていなかった。その言葉通り、辻谷さんは文言を修正して提出し、再任用を拒否される。

「率直な気持ちを言えば、これはだまし討ちです。初めから巧みに仕組まれた罠だったとしか思えません。こんなことが許されていいのでしょうか」

いずれ生徒が標的

さらに、辻谷さんは3月1日の卒業式でも「君が代」斉唱時で起立しなかったとして、府教委から減給10分の1(1カ月)処分を受けた。2011年に公立学校の教職員に起立斉唱を義務付ける府の「君が代条例」が制定されて以来、初めての減給処分となった。

辻谷さんが勤める府立高の卒業式に私も参列した。卒業生が入場したあと、「全員起立」の号令がかかった。起立するとそのまま開会が宣言され、「国歌斉唱」へ。ピアノ伴奏もなく、歌声入りのテープが流れた。私の周りは誰も歌っていなかった。このとき、辻谷さんは一人起立していなかったが、私の席からは見えなかった。ただ、式の進行に混乱はなかった。

府教委は3月12日、辻谷さんに減給の辞令とともに「警告書」を手渡した。そこにはこんな一文があった。

<職員基本条例第29条第2項の規定に基づき、今後、あなたが同一の職務命令に違反する行為を繰り返した場合、地方公務員法第28条第1項第3号の規定により免職することがあることを警告します>

辻谷さんは3月末に定年退職になり、再任用を拒否されているため、入学式や卒業式で職務命令を受ける機会はない。にもかかわらず、今後、職務命令に違反すれば免職することがあると警告されている。誰に向けての警告なのか。

辻谷さんはこう指摘する。「対象は私ではなく、多くの教員に『君が代』不起立は免職までいくという『脅し』なんです。『君が代』を使って教員から表現の自由を奪い、その次の狙いは子どもたちです。誰かが声を上げないと変わらないと思います」  (矢野 宏)

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