今月の核 高橋宏 福島第一原発事故2年

被ばく作業員6割は福島県民

東日本大震災から2年目の「3・11」を迎えました。未だに31万人あまりが避難生活を余儀なくされ、被災地の復興は遅々として進んでいません。特に、福島第一原発事故による影響は深刻で、避難区域の人々は言うに及ばず、放射能に汚染された東日本から自主避難せざるを得なかった人々は、満足な補償も受けられず厳しい避難生活を続けています。原発事故から2年目を迎えるに当たって、国内はもとより世界各地で原発反対を訴えるイベントや集会が行われました。台湾では主催者発表で20万人が参加した過去最大規模の集会やデモが開かれたと伝えられています。

大阪では10日、「さよなら原発3・10関西2万人行動」が開催されました。途中から風雨が強まるあいにくの悪天候でしたが、会場となった大阪市北区の中之島に約2万人(主催者発表)が集まり、午前10時半からイベントや集会、最後はデモ行進が繰り広げられました。音楽の演奏や3分アピールなどが三つのエリアで行われた後、午後1時過ぎから女神像前エリアで集会があり、福島から駆けつけた「ハイロアクション福島四十年実行委員会」の武藤類子さんが、「福島はいま」と題したメッセージを届けました。

武藤さんはまず、「福島は例年より寒さが厳しかった冬が、ようやく終わりを告げようとしていますが、雪解けとともに、雪によって遮蔽されていた放射線が徐々に上昇し、春先の強い風に放射性物質が舞う季節、いち早く顔を出すフキノトウを喜んで食べていた事故前の日々を懐かしむ季節でもあり、どこか悲しい春でもあります」と挨拶しました。福島では「学年末を機に遠くへ引っ越していく人々で引っ越し業者は大忙し。一方で、二重生活が立ちゆかなくなり避難先から福島に戻る人も多い」そうで、「事故を起こした四つの原子炉からは毎日2億4千万ベクレルの放射性物質が空気中に放出されており、海に出た量は誰にもわからない。福島原発専用港で捕獲されたアイナメから51万ベクレルのセシウムが検出され」るなど、深刻な状況が続いているとのことです。

分断される人々

また、「原発内で被ばくしながら働く作業員の6割以上は福島県民であり、事故で職を失った人も多く含まれ」「危険手当のピンハネなど、作業員の待遇の劣悪さが問題となっており、除染作業員たちも被ばくしながらの厳しい労働を、十分な防護策も与えられないままに、低賃金で強いられています」と報告。さらに、「18歳未満の子どもたちの甲状腺検査の2011年度の結果が公表されたが、約3万8千人のうち、悪性診断された人が10人おり、その中で3人が癌と確定された」にもかかわらず、「福島県立医大の副学長となった山下俊一氏らが、他県の検査結果でものう胞や結節の出現率が同じか、むしろ他県の方が多いと発表し、原発事故との関連がないとの結論づけを地元紙が一面全部を使って報道」しており、「私たちは子どもたちの健康被害を皆、心から心配しています」と訴えました。

昨年の衆院選の前に議員立法で成立した、子どもたちの避難の権利が含まれた重要な法律である「子ども・被災者支援法」について、具体的な中身が全く決まっておらず、予算すらついていない状態を指摘し、「皆さんもこの法律への関心を持ってください」と呼びかけました。

武藤さんはまた、「福島では8千ベクレル以上の稲わら、牧草などの農林関係の廃棄物の焼却実験炉が密かに作られようとしていたり、除染の伐採林を使ったバイオマス発電所が作られようとしている」として、放射性物質を焼却することの安全性が十分議論されず、「奇跡的に放射線量が低かった地域に、これらの施設が建てられることに大変疑問を感じています」と問題提起をしました。福島県で起きている一番大きな問題は、「意図的に、あるいは無意識に行われる人々の分断です。賠償範囲の線引き、新たなる放射能の安全神話の流布、強引とも思われる復興策の数々の中で、人々はさらに引き裂かれ、また互いを気遣って物が言えなくなる状況」とし、「私たちが抱える問題は、複雑化し細分化されています」と現地の苦悩を訴えました。

最後に武藤さんは「困難な社会状況の中で、私たちは冷静さと明晰さを持つ怒りが必要なのではないでしょうか」と呼びかけ、福島県民が昨年から始めた福島原発事故の責任を糾す告訴運動への協力を感謝して、メッセージを終えました。

デモに暴力的ヤジ

その後、参加者は三つのコースに分かれて市内をデモ行進しましたが、御堂筋を行進していた人々に対して「神鷲皇國会」の腕章をつけたグループが、「ゴキブリ」「臭い」などの言葉を拡声器で浴びせながら、一時はデモ参加者とつかみ合いになる一幕がありました。

警備の警官がグループを取り囲み、動きを封じようとした際には、罵声を浴びせながらもみ合う場面もありましたが、その場で逮捕されるようなことはありませんでした。これが、反原発運動の場合だったら公務執行妨害などで逮捕される(以前に報告したように、実際に逮捕者が出ています)ケースなのに……です。いくら主張が違うからと言って、汚い言葉を浴びせながら暴力的な挑発をする行為は、明らかに言論の自由を逸脱しており、断じて許せません。こうした動きに対しては、武藤さんが呼びかけたように「冷静かつ明晰」に私たちは対応していく必要があります。

事故から2年を経過してもなお、反原発の訴えが衰えることがない一方で、事故自体を風化させ、過小評価しようとする動きも目立つようになってきました。私たちは、常に福島第一原発の事故現場と、福島県内で起こっていることを注視しながら、原発問題と向き合っていかなければいけません。

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