今月の核 高橋 宏  チェルノブイリ原発事故

「フクシマ」対応 より厳格に

もうすぐ27年目の「4・26」がやってきます。旧ソ連のチェルノブイリ原発4号機で史上最悪と言われた核暴走・爆発事故が起こった日です。しかし、「4・26」といっても多くの人にとっては「?」となってしまっているのではないでしょうか。

これまでに再三にわたって指摘してきたように、当時「レベル7」と評価されたチェルノブイリ原発事故の教訓が全く生かされなかったために、同じレベルの福島第一原発事故が起こってしまいました。今度こそ、チェルノブイリ原発事故が与えた教訓を見直し、同じ悲劇を繰り返さないための努力がなされるべきなのですが……。国や電力会社の事故対応を見ている限り、どうもそうではなさそうです。

チェルノブイリ原発事故当時、国や電力会社は「日本の原発とは炉型が違う」「事故は運転員のミスによるもので日本では起こり得ない」などという理由で、ある意味で全く他人事のような対応をしました。事故による被災者は、運転員や消防士1000~2000人、事故処理作業従事者60万~80万人、事故直後の避難住民約12万人、高汚染地からの移住者約25万人、汚染地域居住者約600万人とされています。当時のソ連政府が発表した事故による死者は33人でしたが、事故処理に当たった人々が後に放射線障害で次々と亡くなっており、長期的な死者は数十万人にのぼっていると言われています。

正確な死者数は把握されていませんが、原発事故の被害は長い時間をかけてじわじわと現れてくることは確かです。しかし、国や電力会社は今でも事故を過少評価し続けています。死者についても、また子どもたちの甲状腺がん増加などの被害についても、基本的に原発事故との因果関係を認めようとはしていません。

事故から27年たった今でも、チェルノブイリでは原発から半径30㌔圏内は居住禁止区域に指定されています。よく話題になるセシウム137の半減期(放射線を出す力が半分になる時間)は約30年ですから、まだ放射能は半分にもなっていないわけです。

子どもたちが心配

チェルノブイリでももちろん「除染」は行われてきました。しかし、森林などは技術的に作業が不可能なため、結果的に完全な除染はできず(風雨によって森林から放射能が飛散すれば新たな汚染が繰り返されるため)、事実上は「減染」にとどまって今日に至っています。ちなみに、チェルノブイリの居住禁止区域の基準は「年間5㍉シーベルト」です。

しかし、福島第一原発事故の際に採用された基準は「年間20㍉シーベルト」でした。これは国際放射線防護委員会(ICRP)が原発事故後の「復旧期」に許容できるとした数値の上限です。チェルノブイリ原発の労働者たちが住んでいたプリピャチ市(原発から約4㌔)は、無人の街となっていますが、ここの空間放射線量は1時間あたり3~4マイクロ・シーベルトです。一方、福島市が学校を通常通りに開校して子どもたちを遊ばせてよいと定めた基準値は1時間あたり3・8マイクロ・シーベルトでした。

つまり、福島市の子どもたちはプリピャチ市内で遊んでいることに等しいわけです。いたずらに危険をあおる気持ちはさらさらありません。因果関係が立証されていない(と国や電力会社は主張します)とはいえ、チェルノブイリ原発事故後の汚染地帯で子どもたちの健康被害が報告されているという事実に基づけば、より厳しい基準を適用するべきではないでしょうか。

教訓を生かすこと

チェルノブイリ原発事故の汚染区域を抱えるベラルーシでは、「強制避難ゾーン」「第1次移住ゾーン」「第2次移住ゾーン」「移住権利ゾーン」「定期的放射能管理ゾーン」に分け、移住関連のゾーンに住む人々には、住み続ける場合でも移住する場合でも特典や補償が保障されているとのことです。

日本の場合は、そうなってはいません。例えば、今回の福島第一原発事故によって、東京都、茨城県、千葉県、神奈川県などには、チェルノブイリの居住禁止区域を上回る汚染地帯が存在しています。しかし、国はそうした地域に何ら制限もしていません。そして、いわゆる「自主避難」をした人々に対しては一切、援助や補償をしていないのです。

チェルノブイリ原発事故が示した教訓を真摯に受け止めるならば、将来のリスクを想定して人々を、特に子どもたちを守るための施策を行う必要があると思うのですが……。

現在、福島第一原発で作業にあたっている人々のことも心配です。チェルノブイリ原発事故当時と比べれば、ロボットや遠隔操作の技術が進歩しているとはいえ、高い放射線量の下で人間が作業しなければなりません。チェルノブイリ原発事故の処理に従事した「リクビダートル」と呼ばれる人々は、その後次々と命を落としました。

チェルノブイリよりもはるかに複雑な状況を抱える福島第一原発では、多くの人手が今後も何十年にわたって必要なわけで、大量の被ばく者を生み出さざるを得ないのです。そうした人々の健康管理、被害が出た場合の補償(労働者の追跡調査が必須です)に、国や電力会社が万全を期しているとは思えないのです。

チェルノブイリ原発事故から学ぶべき教訓は、まだまだたくさんあります。事故の原因や状況、原発の炉型などは確かに異なりますが、事故後の放射能汚染という現実はチェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故は全く同様なのです。

「事故後の悲劇」を繰り返さないためにも、私たちは改めてチェルノブイリ原発事故を見直さなければなりません。そして、今度こそきちんと教訓を生かさなければならないのです。

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