原発「自主避難」 「子ども守る」得られぬ支援

5月11日の第11回うずみ火講座は「福島からの母子避難を考える」というタイトルで、本紙90号に登場した森松明希子さんが講師を務めてくださいました。

森松さんは福島県郡山市から2011年5月、福島第一原発事故による放射能汚染から逃れるために、子どもさん2人を連れて大阪市内に避難してきた方です。仕事を抱える夫は郡山市から動くことはできず、現在も二重生活が続いています。このような母子避難をせざるを得なかった人々が、関西圏には多数おられるのです。

苦しい二重生活

森松さんはまず、震災直後から避難に至るまでの経緯について話されました(詳細は90号の「原発自主避難、先見えず」の記事を参照)。そして母子避難の現状について、2世帯分の家賃や光熱費だけではなく、夫が子どもたちに会いに来るための交通費など、経済的に厳しい状況に置かれることに加え、「避難当初は『そのうちに帰れる』と思っていたのがどんどん絶望的になっていく」ストレス、子どもたちを放射能から守れたとしても精神状態のケアができるかどうかという不安など、多くの苦悩を抱えて避難生活を送っていることを報告しました。特に夫婦が離れて生活することについて「夫は仕事を終えてから、子どもたちに会うわずかな時間のために郡山から数百㌔の道のりを運転してきます。夫は一番可愛い、成長がとても早い時期に子どもたちの姿を傍で見ていることができないのです」と、涙で声を詰まらせながら訴えました。

森松さんはまた「2年も経つと、二重生活を維持することができなくなって、危険と分かっていても福島に帰らざるを得なくなった人も多いです。福島県から出て行く人よりも戻ってくる人の方が多くなったというデータがあるそうですが、決して放射能の危険がなくなったわけでもなく、可能ならば避難したいと思っている人が県内にはたくさんいるはずです」と、今後も避難者を支える施策を継続する必要があると指摘。さらに、「一般的な単身赴任と違って期限が見えないため、避難先では事実上の母子家庭となっているにもかかわらず、行政からは相応のサービスを受けることができません」と問題提起をしました。

この4月から復興庁はようやく、「原発事故による母子避難者等に対する高速道路の無料措置」を福島県内の29市町村などを対象に実施していますが、十分な支援とは程遠い状況が続いています。

「夫の転勤で」

復興庁の調べでは、東日本大震災による全国の避難者数は約30万9千人(4月4日現在)。大阪府では、把握されているだけで1179人が今も避難生活を送っているとされます。

森松さんによると、特に原発事故による「自主避難」(国が定めた避難区域以外からの避難)者はカウントされていない場合が多く、大阪府内に3千~4千人、あるいはもっと多数の人がいるはずだそうです。

ご存じのように、自主避難しているのは福島県の人ばかりではありません。原発事故による広範な汚染で、茨城県や埼玉県、東京都なども福島県内に匹敵する(場所によってはそれ以上)の放射線が確認されており、それらの地域からの避難者も大勢います。 森松さんは「関東から自主避難されている方々は避難の正しさが理解されないために、まるで『隠れキリシタン』のように『夫の転勤で』というように言って関西で生活されている方もいらっしゃいます」と声を震わせました。

母子避難(自主避難)をしている人々に今、何が必要かという問いに対して、森松さんは「私は何とか職を得ることができましたが、それでも子育てをはじめ日々の生活を維持するのが精いっぱいです。避難者自身が声を上げねばならないのは分かっているので、できるだけ皆さんにお話にいくように頑張っていますが、多くの避難者は交流会や集会などに出て行くことは難しいのです。移動のための交通費だけでもばかになりませんから。必要なことを訴えるために、避難者同士で連絡を取り合うことも容易ではないのです」と、厳しい現実を訴えました。

基本法どまり

ところで皆さんは「子ども・被災者生活支援法」という法律をご存じですか? 正式名称は「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」で、2012年6月に当時の国会で全党派一致で可決された議員立法です。しかし、いまだに「基本法」のままにとどまって具体的施策に向けた審議は進んでいません。原発事故から2年以上が経過したというのに、国による避難者の支援は放置されたままなのです。汚染された地域の除染も十分に進まない現状からすれば、避難生活はこの先も長く続けなければならないでしょう。

原発震災による被害の深刻さを改めて実感すると共に、一刻も早く具体的な施策が実施されるように働きかけていかねばなりません。そして、現在避難をされている人々の支援はもちろんですが、避難したくてもできず汚染地域にとどまっている人々のことも忘れてはならないでしょう。

特に、今もなお危険にさらされている汚染地域の子どもたちを、いかに守っていくかが重要です。国による原発事故の被災者支援はまだ始まってすらいません。私たちには被災者、そして避難者の実態について、今まで以上に関心を払うことが求められています。

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