東京大空襲訴訟 最高裁 審理なく棄却

1945年3月10日の東京大空襲の被災者や遺族ら77人が国に謝罪と1人当たり1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(横田尤孝裁判長)は5月8日付で原告側の上告を棄却した。これで原告の全面敗訴とした一審、二審の判決が確定した。(矢野)

最高裁が上告を棄却した理由として、「民事訴訟法の上告と上告受理の条項に当たらない」というもので、実質的な内容はなかった。事実上の門前払いである。

東京大空襲訴訟の原告団と弁護団はそろって抗議文を発表。今回の最高裁決定に対して、「原告らが裁判所に強く求めた被害者の被害と権利侵害に向き合い、人権侵害と被害回復を判断するという司法の本来の任務を放棄したものであり、基本的人権と平和主義を基調する憲法に反する不当決定であり、到底受け入れることは出来ない」と訴えた。

さらに、安倍内閣が5月7日、東京大空襲について「当時の国際法に違反したと言い切れないが、国際法の根底にある人道主義には合致しない」とする答弁書を閣議決定したことに触れ、「最高裁は内閣の新しい動向を無視して、閣議決定の翌日に本決定を出したのであり、この点でも極めて不当である」と抗議している。

国は52年4月に「戦傷病者戦没者遺族等援護法」を制定、翌年には「軍人恩給」を復活させるなど、旧軍人・軍属とその遺族にはこれまでに総額50兆円もの恩給や年金を支給している。

一方で、民間の空襲被害者については「戦争という国の存亡にかかわる非常事態のもとでは、国民は等しく耐えねばならない」という「戦争損害受忍論」を押しつけ、何の補償もしていない。戦前、戦中には戦災に遭った民間人を補償する「戦時災害保護法」があったというのに、である。

その後、広島や長崎の原爆被害者に対して医療特別手当などが支給されるようになり、中国残留孤児やシベリア抑留者にも援護の手が差しのべられたが、民間の空襲被害者だけが取り残されたままになっている。

東京大空襲訴訟に続いて、2008年12月に集団提訴した大阪空襲訴訟の原告たちも「戦争損害受忍論を空襲被害者だけに押しつけるのは、法の下の平等をうたった憲法14条に違反している」と訴えてきた。東京と同様、一審、二審とも訴えは棄却され、最高裁へ上告したばかりである。

大阪空襲訴訟原告団代表世話人の安野輝子さん(73)は、東京の最高裁決定の知らせを受けて、「参議院選挙が近いからなのか、あまりにも早い決定に驚きました。空襲被害者にも補償を、という署名を集めても国は受け取ってくれず、陳情もダメ。このまま黙っていてはいけないと、裁判に訴えましたが、やはり私たちの声を聞き入れてはもらえないのかと思うと、情けないですね」と語る。

東京や大阪の空襲被害者らは、国会での「空襲被害者援護法」(仮称)の制定を目指して運動を続けていく。「このままでは死ねない」という思いが国会の扉をこじ開けられるだろうか。残された時間は少ない。

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