在日元政治犯らが上映会 拷問、でっち上げの軍事独裁

軍事独裁政権下の韓国で民主化運動家らを過酷な拷問で弾圧した事実を描いた映画『南営洞(ナミョンドン)1985』の日本初の上映会が7月6日に大阪、7日に東京で開かれる。

『南営洞1985』は、『ホワイトバッジ』『折れた矢』など社会派の作品で知られるベテラン・鄭智泳(チョン・ジヨン)監督の新作。昨年秋、韓国内で封切られ大きな反響を呼んだ。原作は元国会議員の故金槿泰(キム・グンテ)氏の手記『南営洞』。全斗煥(チョン・ドファン)政権下の1985年9月、民主化運動のリーダーだった金氏が22日間拷問を受けた実話がベースだ。「南営洞」は「恐怖の代名詞」と呼ばれたソウル市南営洞の「治安本部対共分室」を意味する。映画では、残忍な拷問、事件が捏造されていく過程が克明に描かれる。

上映会に取り組むのは、母国留学中などに事件をでっち上げられ、獄中生活を強いられた在日の元政治犯ら。映画で描写される拷問を自らに重ねる人たちだ。大阪では関西在住の元政治犯でつくる「在日韓国良心囚同友会」が中心になっている。

メンバーの一人、李宗樹(イ・ジョンス)さん(54)=京都市=は82年、高麗大2年の時、突然下宿に来た男に同行を求められ、軍保安司令部に連行された。殴打、水責め、電気拷問。何度も気を失い、ついには虚偽の自白に追い込まれた。身に覚えのない罪で懲役10年の判決。5年8カ月獄中にあった。「独房での眠れない夜、拷問した相手をどうやったら完全犯罪で殺せるか、そればかり考えていた」と振り返る。

『南営洞』の原作者、金槿泰氏は一昨年他界したが、死因は拷問による後遺症ともいわれている。李さんも若くして難聴になった。いまも拷問や獄中の夢を見、トラウマに苦しめられる。

李さんは盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の06年、「真実と和解・過去史真相究明委員会」に調査を申請。委員会が再審を勧告、在日元政治犯として初めて再審無罪を勝ち取った。その後、5月末までに13人が再審無罪。さらに数人が再審決定を受け公判開始を待っている。政治犯とされた在日は100人超。名誉回復の動きは緒に着いたばかりだ。

一方、韓国ではいま、脱北者らが摘発される事例が相次いでいるという。「かつての僕たちのように韓国内に身寄りがないなど共通点があります。しかも僕たちと違って令状があるなど巧妙になっている。韓国も日本も物質的に豊かで、一見平和でも、国家の暴力は存在している。この映画を通し、『大変な時代があった』ではなく、現実の問題として捕らえてほしい」

大阪は6日午後6時から「エルおおさか」。東京は7日午後6時から「なかのZERO」。大阪は監督、出演俳優と元政治犯の徐勝(ソ・スン)立命大教授が対談する。(栗原)

 

 

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