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「大事なもの」問い直そう

記者:高橋 宏

「新聞うずみ火」では、福島第一原発事故後、「いまさら聞けない原発の話」と題した連続講座を開催しています。これまでに4回開催してきましたが、今月は京都大学原子炉実験所で「熊取6人衆」と言われ、原子力開発・利用に警鐘を鳴らし続けてきた小林圭二さん(11月26日開催)と今中哲二さん(12月3日開催)の講演から、ぜひ皆さんに知っておいていただきたい内容をお伝えしたいと思います。

お二人とも、過密な講演スケジュール等で大変お忙しい中、そしてお疲れのところを、それぞれ2時間近く講演してくださり、さらに90分近く参加者の質問に一つひとつ丁寧に答えてくださいました。

まず、小林さんには福井県敦賀市の高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」の問題を中心に語っていただきました。小林さんは天然ウランの中には核分裂反応を起こす燃えるウラン(ウラン235)がわずかしか含まれておらず、エネルギー資源としては限りがあることを説明し、燃えないウラン(ウラン238)をプルトニウム239という燃料に変えることで資源を増やそうというのが高速増殖炉の考え方であることを明らかにしました。「世界が原子力発電に着手した際、現在の主力である軽水炉はなく高速増殖炉がスタートだった」そうです。そして、放っておけばウラン資源が枯渇し原発は減っていくわけで、国が原発を段階的に減らすというのは、続けるということに等しいと指摘。今すぐに危険な原発は止めるべきだと訴えました。

「もんじゅ」の危険性(詳細は10月号参照)について詳しく説明した上で、小林さんが特に強調したことは核兵器との関連です。1960年代に、国は極秘のうちに核兵器保有について検討していたことが昨年、明らかになりましたが、「そこで必要なものとして高速増殖炉が明記されている。その後で、動燃(動力炉・核燃料開発事業団)が組織され、それまで原研(原子力研究所)がやっていたことから切り離されて、高速増殖炉と再処理技術の開発に着手した。全部つながっているんです」と小林さん。

「もんじゅ」の炉心から取り出されたブランケットはプルトニウム239が98%含まれており、「超核兵器級のプルトニウム」(核兵器では93%以上の純度が必要)が容易に作れるそうです。また、純度が高ければ再処理もしやすい上、核兵器の小型化にもつながるとのことです。

さらに、小林さんは①「もんじゅ」には既に明らかになっているだけで1兆3300億円という莫大な国費が投じられており、とても発電で採算が取れるものではないこと②燃やした燃料以上の燃料が得られるということは、実際には幻想に等しいこと③ナトリウム漏れ事故(95年)や装置落下事故(2010年)などお粗末なトラブルが多すぎること等を挙げ、「危険な『もんじゅ』は直ちに廃炉にしなければならない」とし、「高速増殖炉と再処理工場とは一体であるという認識で反対していく必要がある」と訴えました。

一方、今中さんはまず、福島第一原発事故で国の原子力政策で責任のある人々が、誰もきちんとした判断をしてリーダーシップを発揮できなかったことを厳しく批判しました。「東京電力、原子力安全・保安院、原子力委員会もバラバラで、いったい誰が全体を見て対応しているのか分からなかった」「当初、彼らやマスメディアが言うのは希望的観測ばかりだった。私が感じたのは、彼らは非常事態というものに対する備えが全くなかったということ。常に最悪の事態を想定し、それに備えていくのが原子力のはずだったはず」とし、結果的にそれが汚染や被ばくの被害を拡大してしまったことを明らかにしました。

今中さんは3月28、29日と福島県の飯舘村に入りましたが、その際に1時間当たり30μシーベルトの放射線を検知したことを紹介。「原子炉実験所の原子炉などで20μシーベルトを超える場所は高放射線量区域としてみだりに立ち入れない場所」と、汚染の深刻さを説明しました。そして、結果的に警告も何もされないまま、多くの人々が放射能汚染の中に放置されてしまったのでした。さらに今中さんは「原発事故で短期的に一番怖い放射能はヨウ素」であり、それは特に子どもの甲状腺ガンの発生に深刻な影響を与えることを、チェルノブイリ原発事故後の調査結果などを示しながら解説。何よりもまず、子どもたちの被ばくを最小限にとどめる必要があったにもかかわらず、それが福島ではなされなかったことを指摘しました。

チェルノブイリにずっと取り組んできた感想として、今中さんは「原発事故の持っている凄さは、事故が起きると村や町、地域社会が丸ごとなくなってしまうこと」を挙げました。そして、「福島に何度も行って感じたが、やっぱり日本ではチェルノブイリは他人事だったということだ」と付け加えています。チェルノブイリと同様に、福島も原発事故の前後で時代が変わってしまい、放射能汚染と向き合っていかざるを得なくなってしまったことを、今中さんは改めて強調しました。

今中さんはまた、国が「事故は起こらない」と言い続けながら、カネと力で地方にむりやりに原発を押し付けてきた経緯を説明した上で、原発をなくす方法として①原子力損害賠償法の廃止②電源三法の廃止③電気事業法を改め、電力会社の地域独占と総括原価方式を廃止することを挙げました。最後に今中さんは、日本のエネルギー需要の変遷を示し「私は50年に生まれ、広島の下町で育ったが、子ども時代は今の子どもたちよりも豊かな暮らしをしていた気がする。70年代から日本はエネルギーが足りないというより、使い過ぎになっていったが、何が本当に大事なのかをもう一度考えていただきたい」と訴えました。

新聞うずみ火は、今後も全ての原発や原子力関連施設を止めることを求めていきます。同時に、読者の皆さんと一緒に「何が本当に大事なのか」という今中さんの問いかけに答えていきたいと考えています。