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今月の核 高橋 宏 「原発と人権」講座①

講演するアイリーンさん

講演するアイリーンさん

「反原発運動は無駄ではない」

11月末、市民のための人権大学院「じんけんSCHOLA(すこら)」の今年度講座が全て終了しました。この講座は、私たちの人権が、「民意」の名のもとに後退させられているような危機的状況に対して、一人ひとりが自分自身と向き合い、より広い視野と思想を養うことを目的に、3年前から始まったものです。「JR大阪駅前で『人権知』を学ぶ」をキャッチコピーに、大学コンソーシアム大阪を会場にして、「医療と人権」「都市大阪の階層構造」「いま学びなおす新しい部落史」など、多彩な講座を開いてきました。有志で作った運営協議会が主催し、大阪市立大学人権問題研究センターや関西大学人権問題研究室、大阪市や大阪市教育委員会などの後援で運営されています。私も昨年度から、「原発と人権」という講座を担当し、講師やコーディネーターを務める形で関わってきました。

昨年度は「科学者からの問い」というサブタイトルで、「熊取6人組」のメンバーである小林圭二さん、海老澤徹さん、川野眞治さんに様々な問題提起をしていただきました。そして今年度は、私と共に立命館大学教授の木野茂さん、グリーンアクション代表のアイリーン・美緒子・スミスさんが講師を務めてくださいました。原発問題は今の日本社会の縮図と考えられるぐらい、実に多様な問題点をはらんでいます。私自身も、まだまだ知らないこと、気づかないことがたくさんありますが、お二人から多くの重要な視点を提供していただけたので、今回はそれを皆さんと共有したいと思います。

「共に生きること」

まず、木野さんは「いらないのは原発? それとも障害者?」というタイトルで、原発に反対する理由として放射線障害の怖さが強調されることによって、被災者への差別が心配される現実について問題提起をされました。木野さんが1976年、「反公害住民ひろば」という大阪での集いに、支援していたマンガン中毒の労災被害者と一緒に参加していた時のこと。分科会で労災被害者が「健康を返せ」「元の身体に戻せ」と訴えたところ、障害者解放運動に取り組む脳性まひの方から「それこそ障害者差別と違うか!」「原発や合成洗剤をはじめ、反公害で障害が問題になるたびに、僕たちがどんな思いをしていると思う?」という発言があり、木野さんは反公害に潜む差別意識に気づかされたそうです。
チェルノブイリ原発事故後、日本でも反原発運動が急速に広まりましたが、その際にも放射能の怖さを示すものとして「生まれた赤ちゃんが重い障害をもちます」という主張が説得力を持っていました。木野さんは「原発止めて!命が大事!」という主張に、結局はどのような命を守るのか、守りたい命と守りたくない命があるのではないか、という疑問を抱きます。チェルノブイリ原発事故の後に、放射能の影響を心配して、ヨーロッパでは中絶を求める妊婦が殺到するという事実がありました。そうした動きに対し、障害者の側からは「そんなことをしても、障害児が生まれないようにしているだけで、放射能や公害をなくすことにはならないと思う」という主張がありました。実際に福島第一原発事故以降、「福島産の食品はごめん」「福島ナンバーの車はお断り」などという動きがあった(今も続いている)ことを踏まえ、木野さんは「私たちはいつでも差別する側に回る危険がある」と警鐘を鳴らします。そして、「今大事なことは共に生きること。そして、汚染の実態把握や基準の明確化、情報公開をきちんとする必要がある」と訴えました。

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