◆2025年4月号(No.234)の目次
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1面~5面 陸自駐屯地 季節10年目 与那国島で進む基地化(栗原佳子)
九州の南から台湾に至る琉球弧(南西諸島)の陸上自衛隊配備が加速している。その皮切りが2016年3月、陸自沿岸監視部隊が配備された日本最西端の沖縄・与那国島だった。「台湾有事」が喧伝される中、さらなる防衛力強化が打ち出され、住民をおきざりにしたまま有事を前提とした全島避難計画も進む。3月半ば、駐屯地開設10年目を迎える与那国島を歩いた。
石垣島からプロペラ機で30分。い大海原に、断崖に縁取られた緑の島があらわれる。かつて「渡難(どぅなん))と呼ばれた与那国島(与那国町)だ。面積約29平方㌔・㍍、周囲約27・5㌔㍍。日本最西端に位置する国境の島からは、年に数回、西の水平線に、山脈を連ねた台湾の島影が浮かび上がる。
その距離からも、与那国島の歴史は台湾と不可分の関係にあり、1982年には台湾東海岸の花蓮市と姉妹都市宣言をした。直線距離で111㌔。子どもたちのホームステイなど、交流は続いている。
国境に位置する独自性を生かし、与那国町は2005年3月、台湾との特区構想などを盛り込んだ「与那国・自立へのビジョン~自立・自治・共生~アジアと結ぶ国境の島YONAGUNI」(自立ビジョン)を策定した。
小泉政権時代の「三位一体改革」による地方交付税の大幅カットで、町も大きな打撃を受けた。「平成の大合併」が進められる中、石垣市、竹富町との合併が検討された。
前年の04年10月、与那国町で合併の是非を問う住民…… -
6面~7面 過大目標掲げ公共投資 桜田照雄・阪南大教授が講演(栗原佳子、矢野宏)
開幕が迫る大阪・関西万博。パビリオン建設遅れ、チケット販売不振に加え、大屋根リング直下の護岸崩壊も発覚した。3月8日、大阪市北区で開いた「うずみ火講座」で、阪南大経営学部教授で「カジノ問題を考える大阪ネットワーク」代表の桜田照雄さんに「危険だらけの夢洲カジノ万博」と題し講演してもらった。要旨をお届けする。
万博は数多くの参加国と半年という開催期間があり、オリンピックに匹敵するメガ・イベントとして位置づけられる。なぜ万博をするか。それは万博が都市を改造・再開発させる絶好の口実になるからだ。2012年の夏季五輪ロンドン大会はイースト・ロンドン地区の再開発の一環として開催された。その結果、低所得の地域が高級化され、富裕層が貧困層を追い出す現象(ジェントリフィケーション)という現象が起きた。
大阪でも1995年12月に就任した磯村隆文市長時代、五輪誘致に手を挙げた。「テクノポート大阪」「大阪湾パネルベイ構想」など大阪湾岸開発は失敗に次ぐ失敗で、その間に大阪五輪をやりたいという話も出た。2008年夏季五輪。6票しか獲得できず落選した。
ではなぜ万博か。北浜の寿司屋で堺屋太一氏が松井一郎氏(府知事)と橋下徹氏(大阪市長)に「もう1回万博をやろう」と提案したとされる。ただ、その前に松井氏は、大阪の都市規模では五輪は担えないが、「万博なら」というアドバイスを経済産業省などから受けていたとも言われる。
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8面~9面 公立校離れに拍車 高校授業料無償化が拡充(矢野宏)
国会では少数与党が日本維新の会の合意を取りつけ、年度内の予算成立に目途をつけた。予算の修正案に盛り込まれたのが、高校授業料の無償化だ。家庭の経済状況にかかわらず、進学先を選べるのであれば評価できる。だが、私立を含む実質無償化を独自に先行実施している大阪府では公立離れが進む。無償化の影響で起こり得る課題について、府立高等学校教職員組合の志摩毅委員長に話を聞いた。
民主党政権だった2010年4月に「高等学校等就学支援金制度」が創設され、公立高校の授業料が無償化された。現在、国は世帯年収910万円未満のすべての高校生に対し、公立の年間授業料に相当する最大11万8800円を支給。年収590万円未満の場合は私立を対象に年間39万6000円を上限に加算している。23年度は全国の7割にあたる239万人が対象となった。
東京都などでは国の就学支援金に上乗せし、公立・私立の授業料を実質無償化している。大阪府も国に先行する形で24年度から私立高校の所得制限を段階的に撤廃し、最大63万円まで公費で賄うことにした。
3党合意によると、高校の授業料無償化を2段階で実現させることになる。まず、4月から年収910万円の所得制限を撤廃し、公立を実質的に無償化する。26年4月には私立で590万円の制限をなくし、支給上限を私立の全国平均授業料45万7000円に引き上げる見通しだ。
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10面~11面 兵庫県議会が百条委報告書採択 黒幕は片山元副知事か(粟野仁雄)
斎藤元彦知事のパワハラなどの真偽や文書告発した元西播磨県民局長(享年60)への懲戒処分の是非を9カ月間審理した百条委員会が3月4日に終わった。
「故・竹内(英明)元県議におかれましては、調査途中での議員辞職。さぞかし無念だったと思います。我々はこの日をともに迎えたかった」。奥谷謙一委員長(自民)はこう語ると言葉に詰まった。最後まで竹内氏を励ましていた丸尾牧委員(無所属)も目を赤くして「竹内さん、ありがとうございました」と語った。 竹内元県議(享年50)は百条委の委員だったが、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首の演説やSNSに呼応した人たちの脅しや中傷で、1月に亡くなった。
百条委はこの日、「全体を通して客観性・公平性を欠き、行政機関が行う対応としては、大きな問題があったと断ぜざるを得ない」と結論付けた報告書を浜田知昭議長に提出した。
業務時間外のチャットでの指示や、出張先で車が建物前まで入れなかった時に知事が叱責したことなどを事実と認定。「パワハラ行為と言っても過言ではない不適切なもの」とした。
告発者を特定し、処分した知事の初動も「県民局長の職を解き通報者を公表したことは、告発者つぶしととらえられかねない」とし、公益通報者保護法上の違法性を指摘した。
最大のパワハラは知事告発文書を公益通報として扱わず、記者会見で「公務員にあるまじき行為」とし、停職3カ月の懲戒処分としたことだ。これでは「批判的な告発をすればこうなるのか」と、職員は委縮するばかりだ。
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12面 兵庫県第三者委が報告書 還流疑惑「片山氏が原因」(矢野宏)
兵庫県の斎藤元彦知事が内部告発された問題をめぐり、知事が設置を決めた第三者委員会(藤本久俊委員長)が3月19日、調査報告書を公表した。弁護士で元裁判官の藤本委員長らが県庁で記者会見し、知事による職員への叱責など10件の言動をパワハラと認め、告発文書をめぐる県の対応が公益通報者保護法に違反していると認定した。
第三者委は昨年9月から、県弁護士会から推薦を受けた弁護士6人が告発文書に記載された7項目の疑惑について関係者ら60人に面談、90時間に及ぶヒアリングを行った。
藤本委員長が調査報告書の内容を説明する中で、丁寧に時間をかけたのが「阪神・オリックスの優勝パレードをめぐる補助金の還流疑惑」。2023年11月に行われたパレードへの協賛金の見返りに、金融機関への補助金を増額して県に損害を与えたとして、斎藤知事と片山安孝前副知事が背任罪で告発されている。
県は22年から中小企業経営改善・成長力強化支援事業を実施、金融機関に補助金を交付している。23年11月9日、担当部署である産業労働部の1億円の予算要求に対し、14日に片山氏が財務部に4億円程度とするよう指示。16日に産業労働部が4億円を予算要求し、部長査定で3億7000万円になったが、21日の知事査定で4億円となった。
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13面 石川一雄さんの死を悼む 「無念…再審法の改正を」(上杉聰) ※全文紹介
埼玉県狭山市で1963年に女子高校生が殺害された「狭山事件」で無期懲役が確定し、再審を求めてきた石川一雄さんが3月11日に亡くなった。再審が認められる前での無念の死。部落史研究家の上杉聰さん(77)に寄稿してもらった。
1963年に埼玉県狭山市で起こった誘拐殺人事件の犯人と疑われ、冤罪の犠牲者になり、翌年には死刑判決を受け、77年に無期懲役が確定した後も、再審請求を続けてこられた石川一雄さんが3月11日の夜、お亡くなりになりました。86歳でした。昨年末から骨折や肺炎を発症されてはいましたが、石川さんの忍耐力と生へのエネルギーを信じてきた者にとって、「誤えん性肺炎」という突発性の病が過酷なものとなりました。
13日以降に、毎日新聞や朝日新聞、地方紙などがご逝去を小さく報じましたが、テレビ局はほとんど動かず、情報の中心をSNSが担う事態が今も進んでいます。19日、20日にはお通夜と葬儀が家族葬で営まれました。また4月16日には、部落解放同盟主催の「お別れ会」が東京神保町の日本教育会館で開かれます。さらには5月23日に日比谷野外音楽堂で狭山集会が以前から予定されていますので、そこが次へ向けた大きな結集の場となると推測されています。
狭山事件は、部落差別がからむ誘拐殺人の冤罪事件として知られています。同事件の1カ月ほど前には4歳の吉展(よしのぶ)ちゃんが誘拐され、身代金を要求した犯人を警察がとり逃がす大失態を起こしています。続くこの事件でも、当時16歳の善枝さんの誘拐犯を警察が40人体制の中でとり逃し、被害者は遺体で発見され、警察は厳しい批判を浴びました。
部落差別が関係する事件と言われるのは、疑われた石川さんが貧しさゆえに学校にろくに行けず、文字や法律にうとく、警察にだまされて嘘の自白を一時したことからだけではありません。
捜査によると、犯人は被害者の生活圏から遠く離れてはいないことが当初想定され、全社会が現地を注視する中、周辺住民は集団的防衛心から警察の聞き取りに対し固く口を閉ざし、捜査は困難を極めました。伝統的な部落差別に基づく「あの地域の者だったらやりかねない」という排外的偏見も口々に唱えられ、追い詰められた警察は、犯人を近くの部落からなら仕立てやすいと考え、逮捕の環境づくりと証拠のねつ造がなされたことを指しています。
今後の石川さんの再審は、妻の早智子さんが引き継ぎ、第4次再審請求を開始することが予定されています。ただ、石川さんが無罪であることは、これまでの弁護団の活動により、もはや明白すぎるほどの段階に至っています。今回の石川さんの死は、逮捕以来、合計61年たっても無実の結論を出せなかった裁判所と再審法の怠慢と不備がもたらしたものです。
今後の再審が無駄な歳月を更に浪費させるものとならないためにも、再審法そのものを大きく改正する動きが、石川さんの無念の死を克服するものとなるでしょう。
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14面~15面 ヤマケンのどないなっとんねん 国民感覚とずれた政治(山本健治)
ロシアがプーチン大統領の命令でウクライナ侵略を開始して以降、3年間、毎月24日、同国大阪総領事館前で直ちに侵略を止めて撤退するよう叫んできた。最近になってウクライナの資源を狙う火事場泥棒ならぬ侵略場泥棒のトランプ・アメリカ大統領が侵略張本人のプーチン大統領に持ちかけて休戦交渉と称する山分け談合をしようとしていることなど絶対に許してはならない。プーチン大統領が侵略を謝罪し、即時停戦撤退すべきだが、2人は電話会談しただけで終わった。ホラ吹きトランプより狡猾プーチンが一枚上手、メディアはトランプ大統領がもちかけた30日間停戦は実現しなかったが、エネルギー施設攻撃は停止することになったと報じたが、ロシアは以前からザポリージャ原発を実質占領しており、一時停戦の話が出て以降も一段と攻撃を強め、電力、エネルギー、生活インフラを破壊し、ウクライナの人々を苦しめている。 プーチン大統領が時間稼ぎしていることは明白で、トランプ大統領が甘いだけの話である。我々は改めてロシアとプーチン大統領に対し直ちに侵略を止め、ウクライナから完全撤退するよう求めていく。
東日本大震災・福島原発事故から14年が経過したが、放射能汚染がなくなって安心して住めるようになったわけでもないのに、最高裁が10㍍を超える津波で事故が起きるとは予測できなかったとして東京電力の当時の幹部2人に無罪を言い渡した結果、腹立た
しいことに14年たったその日に2人の無罪が確定した。何が「最高」裁か、「最低」裁ではないか、ふざけるなと叫ばないわけにはいかない。
この判決を含め、原発にブレーキをかけるものが被災住民、反原発市民運動以外になくなり、政府・自民党は地球温暖化を口実に原発推進に動き、それをいいことに電力各社、原発関連企業ら「ゲンパツ一家」が改めてうごめいているが、黙って見ているわけにはいかない。浜岡原発は廃炉に動き出したが、関西電力の老朽若狭原発群は廃炉どころか、40年たとうが、50年たとうが、さらに動かそうとしている。こんなことで動かして事故が起きても最高裁は予測できなかったと無罪にするだろう。しかもこれを政府も、また地元自治体も追認しているが、許してはならないことは言うまでもない。
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16面~17面 世界で平和を考える 弱肉強食教職路線のトランプ政権(西谷文和)
前号でなぜトランプがプーチンに肩入れするのか、について触れた。かいつまんでおさらいすると、2016年の米大統領選挙で、ロシアの不当なアシストがなければ、ヒラリーが勝ち、トランプは大統領になれていない。トランプは4回破産していて、その都度、ロシアの新興富豪たち(オリガルヒ)が、財政援助をして助けてきた。プーチンはオリガルヒの頂点に君臨している。ヒラリーはウクライナをEUに入れて、NATOに加盟させる勢力の代表で、ロシアとしては何としてもヒラリーを勝たせるわけにはいかなかった。トランプは女性スキャンダルをいっぱい抱え込んだ隙だらけの人物なので、ロシアにとっては利用しやすい人物だ。だからプーチンは「ロシアゲート事件」起こしてまでも、トランプを勝たせたかったのだ。ということは今後、トランプは「一方的にロシアに有利な停戦案」を出してくるだろう。
そんな原稿を書き上げた直後の2月28日、なんとホワイトハウスでゼレンスキーとトランプが大口論、互いに罵り合う事態になり、その様子が世界に発信されてしまった。ウクライナにとってこのケンカの代償は極めて大きかった。アメリカからの軍事援助が一時凍結、とりわけ情報を遮断されたのが痛く、ロシアがクルクス州などで大攻勢をかけて、さらに領土を奪っていくという「プーチンだけが喜ぶ事態」になってしまった。今号ではなぜこの大口論が起こってしまったのか、について私なりの分析を述べてみたい。
まず、ホワイトハウス前で出迎えたトランプがトレーナー姿のゼレンスキーに「今日はドレスアップしてるね」とジャブを放ち、ゼレンスキーを侮辱した。みなさんもご存知の通り、3年前の侵略戦争が始まってからゼレンスキーは、いわゆる「防災服姿」で、背広を封印している。それを百も承知で、からかうトランプにはなんらかの意図があったとしか思えない。
最初の40分ほどを耐えていたゼレンスキーだったが、ここで御用メディアの記者が質問。「なぜ背広ではないのか、ネクタイもせず失礼ではないか」。そしてラスト10分の口火を切ったのが副大統領のバンス。「アメリカへの感謝がない、無礼だ」。ここでついにゼレンスキーが切れてしまう。プーチンが何をしてきたのか、ウクライナこそが犠牲者で侵略戦争に耐えてきたこと、和平交渉の場でもプーチンは全く誠意を示さないこと、などを副大統領にまくし立ててしまった。そこにトランプが参戦する。「アメリカへの感謝も、交渉での切り札もないゼレンスキー、お前は第3次世界大戦に導くつもりなのか」。
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18面~19面 フクシマ後の原子力 笑わば笑え「ウソつき少年」(高橋宏)
東日本大地震・大津波から14回目の「3・11」が巡ってきた。関連死を含む2万2325人の死者・行方不明者を出した未曽有の大災害は、福島第一原発事故を伴う「原発震災」だった。震災避難者は公的に把握されているだけでも2万8603人に上る。そのうち、事故のために故郷を奪われ、避難生活を続ける福島県民が2万5606人を占めている。
巨額の費用をかけた除染によって国は避難指示を解除してきたが、帰還した住民は震災前の17%に過ぎない。一方で、14年目を伝えるメディアの報道は復興を強調するものがほとんどで、原発事故をめぐる情報は年々減る一方だ。 原子力緊急事態宣言はいまだに継続中で、事故の収束の目途は全く立っていない。にもかかわらず、14年前に私たちを震撼させた事故の記憶は、風化の一途をたどっている。
記憶の風化だけではない。3月7日、事故をめぐり業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力の旧経営陣に対して、最高裁が無罪判決を出した。国については既に2022年6月、最高裁が法的責任を認めない判決を出している。これで、原発事故の責任は誰も問われないことになってしまった。
2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、原発推進に大転換する内容で、この国の為政者たちに事故の教訓など残っていない。被災者の胸の内を考えると、やりきれない気持ちでいっぱいになる。
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20面 大阪大空襲80年 朝鮮人犠牲者を追悼(矢野宏) ※全文紹介
太平洋戦争末期、米軍による大阪への空襲は50回を超え、約1万5000人が命を奪われた。うち朝鮮半島出身者は1200人以上と言われており、第1次大阪大空襲から80年を迎えた3月13日、犠牲者を追悼する集会が大阪市中央区の大阪国際平和センター(ピースおおさか)で開かれた。
元教師や弁護士らによる実行委員会が主催。2021年から毎年3月に開かれ5回目。今年は「在日本大韓民国民団」(民団)と「在日本朝鮮人総連合会」(朝鮮総連)がそろって参加した。
1944年7月、米軍はサイパン島を攻略。テニアン、グアム島も占領し、B29爆撃機専用の飛行場を整備した。日本本土まで約2400㌔。航続距離5230㌔のB29が往復可能な攻撃圏内に入った。
大阪への空襲は、同年12月19日に三宅村(現松原市)と瓜破村(現大阪市平野区)への爆弾投下に始まり、終戦前日の45年8月14日まで計50回を超えている。うち100機以上のB29による攻撃を大空襲と言い、8回を数えた。同年10月の大阪府警察局の調べで、死者は1万2620人、行方不明者2173人、重軽傷者3万1088人、約122万人が罹災した。
特に、最初の大空襲は3月13日深夜から翌14日未明にかけて、274機のB29が来襲。当時の大阪市の中心部である浪速区や西区、南区、東区などが焼夷弾で空爆され、約4000人が犠牲になった。
実行委は、当時の人口比率(府全体の8・19%)から朝鮮半島出身者の犠牲を1200人以上と推計。2019年から実態解明に乗り出したが、朝鮮人犠牲者の多くが「創氏改名」で日本名を強いられていたため、本名の判明は困難を極めた。実行委の一人で在日朝鮮人研究家の塚﨑昌之さん(23年9月に死去、享年67)らが行政や寺が保管する名簿や慰霊碑などを調査し、文献と照合するなどして167人を朝鮮半島出身者と判断した。
ピースおおさか前で行われた追悼集会には約80人が参加。前回から「大阪中国人強制連行受難者追悼実行委員会」と「大阪空襲連合国捕虜犠牲者を記憶する会」も協力団体として参加しており、この日も大阪大空襲で犠牲になった中国人8人、捕虜のアメリカ兵3人も一緒に追悼した。
実行委の一人、元高校教師の横山篤夫さん(83)が「日本が始めた戦争で、米軍の無差別爆撃により多数の大阪市民が亡くなっただけでなく、多くの朝鮮人、強制連行された中国人、さらには連合国軍の捕虜も犠牲になったことを次世代に伝え、戦争のない社会を共につくる一歩にしていきたい」と訴えた。
このあと、参加者はピースおおさかの中庭に移動。大阪空襲の犠牲者の名前が刻印された「刻(とき)の庭」前で黙とうをささげ、あわせて178人の犠牲者の名前を一人ひとり読み上げた。
第1次大空襲の3日後に生まれたという武市常雄さん(79)=城東区=は「日本は加害の歴史を教えないからアメリカに負けたことだけしか伝えられていないが、加害責任を教えないと、この国は再び戦争をすることになるのではないか」と危惧していた。 -
21面 映画「そして、アイヌ」 多様な人々つなぐ場所(栗原佳子) ※全文紹介
東京・大久保にあるアイヌ料理店「ハルコㇿ」は多様なルーツを持つ人々が集い、つながる場所。全国公開されたドキュメンタリー映画「そして、アイヌ」(大宮浩一監督)は、店主でアイヌ文化アドバイザーの宇佐照代さんの活動を追いながら、文化の継承、アイデンティティー、植民地主義、人権などの問いに向き合った。
『ただいま それぞれの居場所』(2010年)、『季節、めぐりそれぞれの居場所』(12年)などの作品で知られる大宮監督。2022年1月、多摩市で開かれた講座で宇佐照代さんの体験を聞き、口琴「ムックリ」の弾き方を学んだ。講座のタイトルは「東京で共に生きるアイヌ」。話に引き込まれ、宇佐さんの人柄に魅せられた。
「自分が知っていく過程を映画にすることで学びや経験を観てもらえればと思った。自分にとっての『アイヌの練習問題』です」と大宮監督。
宇佐さんは釧路出身で、小学生の頃、東京に移り住んだ。アイヌ文化アドバイザーとして全国で舞踊や楽器演奏などの伝承活動も行っている。11年に開店した「ハルコㇿ」は関東のアイヌの居場所づくりに奔走した祖母ハツエさん、のタミエさんの志を受け継ぐ。店名はアイヌの言葉で「食べ物(穀物)・持つ」の意味。「食べ物に困らないように」という願いを込めた。
宇佐さんが「北海道に2万5千人以上、本州には5千人以上がいると言われているけれど、これは手を挙げた人数。名乗り出ない人たちのことを考えると、その何倍もいるのではないか」と語る場面がある。差別や偏見が残っているため公にしたくない者、する必要もないと考える者。自身がアイヌだと知らされていない者も少なくないという。
アイヌを先住民と明記した法律ができたのは6年前。宇佐さんは帝国大学の学者に盗掘された先祖の遺骨返還を求める活動にも力を入れる。「家族の骨を返してほしい」と泣きながら亡くなっていったフチ(お婆さん)やエカシ(お爺さん)たち。「その痛みに時効はない」と宇佐さん。
ある時、北海道で貴重な「アイヌ歌謡集」のレコードが見つかった。1974年に曽祖母タマさんらが吹き込んだ。大宮監督は、タマさんから宇佐さんの娘ルイノさんまで5代にわたる家族を描くとともに、宇佐さんと深く交流する人たちの声に耳を傾けた。
評論家の太田昌国さん、写真家の宇井眞紀子さん。美術作家の奈良美智さん。在日コリアンのミュージシャン黄秀彦さん、アイヌの文化に精通する縄文造形作家の平田篤史さんら。「アイヌと出会った人びと」の個人史は「アイヌを知る」道しるべ。多様なルーツを持つ人びとが共に紡ぐ未来への手がかりでもある。
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22面 読者近況(矢野宏) ※全文紹介
東京空襲を日英詩集に
【東京】2011年に出版された浅見洋子さんの詩集「独りぽっちの人生(せいかつ)ー東京大空襲により心をこわされた子たち」が英語に翻訳され、日英詩集としてコールサック社から刊行された。
B29爆撃機による東京への空襲は1944年11月24日から45年8月15日まで計100回を超え、特に3月10日の「下町大空襲」は木造家屋の密集地に大量の焼夷弾が投下され、折からの強風で大火災となり、一夜にして約10万人が亡くなったとされる。
浅見さんは、当時6歳で両親を亡くした石川智恵子さんからその後の生活を聞き、「彼女に戦後は来ていない。不安と孤独はあの日のまま。ねじ曲げられた人生に、貧しさと差別という社会の非情が追い打ちをかけていた」ことを知った。智恵子さんの人生を伝えるために一気に書き上げたのが詩「独りぽっちの人生」だったという。
日英詩集は対訳になっており、読みやすいと好評だ。「この詩集を通して東京大空襲の戦災孤児たちの経験が世界の人たちの心に伝わってほしい」と話している。
ヒロさんソロライブ
【東京】松元ヒロさんのソロライブ「ひとり立ち」が4月24~27日、新宿区の紀伊国屋ホールで開かれる。
ヒロさんは、コント集団「ザ・ニュースペーパー」結成時のメンバーで、ピン芸人となってからは、時の政権の風刺を語り、日本国憲法の化身として9条の大切さを訴える「憲法くん」などを演じてきた。「テレビで会えない芸人」として知られるが、松本幸四郎さん主演の「鬼平犯科帳 血闘」で軍鶏鍋屋の亭主を演じている。
【公演日程】4月24日(木)午後7時~、25日・26日・27日は午後3時~
【前売・当日】3700円(全席指定)
【問い合わせ】サンライズプロモーション東京(0570・
00・3337)まで。
万博のツケ払うのは?
【大阪】大阪・関西万博を取材・研究しているジャーナリストや財政学者、建築士によるトークセッション「万博のツケは誰が払う!」が開幕前日の4月12日(土)午後2時~、大阪市都島区の大阪私学会館で開かれる。
昨年8月にちくま新書から刊行された「大阪・関西万博『失敗』の本質」で、政治・建築・メディア・経済・都市の視点から検証し、問題点を浮き彫りにした5人の執筆者が一堂に集まる。万博の課題の「現在地」をあらためて洗い出し、万博後の跡地開発やその後に控えるカジノ問題に警鐘を鳴らす。
一般1500円、チラシ持参の方は1200円。
私学会館はJR東西線「大阪城北詰駅」③出口から西へ徒歩2分。
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23面 会えてよかった 比嘉博さん④(上田康平) ※全文紹介
沖縄戦を体験した大田昌秀さん
大田さんは沖縄戦当時、学徒隊の一員だった。第32軍(沖縄守備軍)の方針などを住民などに伝える情報宣伝部隊である千早隊に所属しており、実際に司令部壕に出入りして軍の動向をつぶさに見ていた。(2020年8月12日NHKニュース)
比嘉さんにお聞きすると−−−−
大田さんは鉄血勤皇隊で軍の伝令や情報宣伝活動を手伝っていたが、戦場でのうその情報伝達を目のあたりにして、正しい情報の大事さを知った。その後、米国の大学に留学、マスコミを学ぶ。琉球大学教官になってからはマスコミ学を次世代に。平和学も定着させた。
大田知事からは、平和を行政に位置付けるように言われたという。
以下、県内出身戦没者名簿の整備まで、共著をもとにまとめると−−−−
大田知事は1990年11月に当選、91年2月議会で「沖縄戦で犠牲となった人々の氏名を記載した永久に保存するための塔の建立などについて綿 密に検討する」と表明。
建設事業は91年度か らスタートし、92年に は「平和の礎」と名称 も決まった。「平和の礎」の建設は大田知事が戦後、沖縄戦の研究を続ける中で温めてきた大きな課題であり、 恒久平和を祈念し、世界へ平和を発信する記念碑の創設であった。
事業の課題としては、基本理念の策定、刻銘範囲の確定、戦没者名簿(刻銘名簿)の整備、建設場所の選定、デザインの決め方、建設費の捻出などであった。
基本理念は次のように決定−−−−
1、戦没者の追悼と平和祈念。
2、戦争体験の教訓の継承。
3、安らぎと学びの場。
刻銘範囲の確定−−−−
刻銘対象者は、〈国籍を問わず沖縄戦で亡くなったすべての人々。この場合、沖縄戦の期間は、米軍が上陸した45年3月26日から降伏文書に調印した同年9月7日までとする。ただし、本県出身者については満州事変に始まる15年戦争の期間に県内外において戦争が原因で死亡したものを含む〉とし、刻銘方法としては、〈戦没者の母国語で、国別、県別に刻銘する。沖縄県は市町村別、字別とする〉とした。
沖縄県内出身戦没者名簿の整備
「平和の礎」の建設完了の目標は95年6月23日の沖縄戦終結50周年の慰霊の日。名簿作成、整理から刻銘までの期間が3年以内と短期間で、当初、既存の戦没者名簿の活用が考えられていた。
ところが沖縄国際大学の石原昌家教授から、それでは不十分で、沖縄県内全戦没者調査(全数調査)による戦没者名簿を作成すべきとの強い要請があり、知事、公室長も同意した。沖縄戦は想像を絶する地上戦だったことから、記録に残らない多くの県民がいたのである。
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24面 日本映画興亡史 没落早めた「五社協定」(三谷俊之) ※全文紹介
死語に近いが「ミーハー」という言葉がある。広辞苑によれば「女子の名前が『み』と『は』から始まるものが多いから」とあり、別の辞書では「みつ豆とはやし(林)長二郎大好き人間の略」とある。みつ豆と、林長二郎(長谷川一夫)の両方を好むような若い女性を指す流行語となった。 長二郎は先斗町のお茶屋の養女で芸妓の豆千代と男女の仲になっていた。そこに永田雅一が登場する。お座敷遊びにはまった彼は、豆千代に惚れた。松竹の白井信太郎に懇願して、2人の間を裂いた。豆千代は永田の3人目の妻として、終生添い遂げる。長二郎の松竹から東宝への移籍で、白井は窮地に立たされた。永田は白井への恩に報いんとして顔切り事件が起きたともいわれる。
日中戦争が始まり、国家総動員が宣布され、挙国一致が叫ばれた時代。内務省検閲当局が「映画界がこうした引き抜きに憂き身をやつすとは、他の産業方面からますます軽蔑される原因になるだろう」と新聞に談話を出すほどだった。映画の国家統制が一層強化される。
事件後、長二郎は離婚した。妻は関西歌舞伎界の大物、初代中村鴈治郎の娘だ。師匠であり芸名の名付け親でもある。その芸名を返上し、本名の長谷川一夫に戻った。
思えば、二枚目俳優の命といえる顔を切られた被害者の長谷川と、加害側である永田とは、終生、奇妙な縁があった。戦後すぐはGHQの時代劇映画の禁止で、多くのスターは劇団活動を続けた。主宰する劇団で、長谷川は多額の借財を背負った。永田は肩代わりを申し出る。大映への出演はもちろん重役として遇するというのだ。以降、長谷川は大映の象徴として支えることになる。
永田は愛する豆千代を奪ったのみならず、顔切り事件の黒幕でもある。忘れることなどできないはずだ。こんなこともあった。
ある時、永田はアメリカ映画界視察として長谷川夫妻を誘った。出発直前に会社で問題が起き、永田は視察に行けなくなり、永田夫人と長谷川夫妻が一緒に渡米した。いうまでもなく永田夫人は恋人であった豆千代である。長谷川との交際は世に知られていた。長谷川の妻ももちろん承知のこと。「奇妙な縁」というよりない。
戦後すぐ、満映の残党を抱えて、東横映画に入ったマキノ光男を救うため永田は大映撮影所を貸した。その東横が東映になり、やがて興業首位の座を奪われた。
1953(昭和28)年、永田の主導で、俳優などの引き抜きを封じるための「5社協定」(後に日活が加わり3年間は6社協定)ができた。東宝の藤本真澄からは「ケチくさいセクショナリズム」と批判されたが、これが映画界を縛り、没落を早めた。大作主義が不振を招き、映画最盛期の頃、大映は下降線をたどり、71(昭和46)年に倒産。負債は56億円だった。徳間グループ、KADOKAWAに転々と買収され、大映の名は消え、今は太秦に「大映通り」の名のみが残っている。
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25面 坂崎優子がつぶやく データ示し医療費対策 ※全文紹介
「高額療養費制度」の限度額が今年から3段階で引き上げられる案は、2026年、27年の凍結に続き、今年の夏の引き上げもいったん見直しとなりました。患者団体を中心に反対の声が高まったからです。
年齢や年収に応じて、医療費の自己負担の上限額を月単位で設ける「高額療養費制度」。救われた方も多いと思います。それを大幅に上げようとしたのが今回の案です。この夏には、例えば平均的な年収区分370万円~770万円で、月8000円余りが引き上げられ、最終27年には年収650万円の人で例えると、月6万円近くも上がるというものでした。
高額療養費制度はありがたい制度ですが、がん治療のように長期にわたる場合は、制度があっても家計を圧迫します。私の知人も抗がん剤治療が続き、働き方を見直しました。働く時間を増やして夫の扶養から外れ、自身が社会保険に加入することにしたのです。限度額の上限を減額する目的です。治療でしんどいのに、働く時間を増やす選択をせざるを得ないのです。
また子どもにお稽古を我慢させたり、家族での娯楽を諦めたりなど、子育て中の親ががんになると、病気で辛い上、家族に我慢をさせているという負い目にも苦しみます。引き上げに患者団体が声を上げるのは当然です。
反対運動には当初、全く反応がなかったといいます。これまでの経緯は、全国がん患者団体連合理事長の天野慎介さんがSNSで明らかにしています。昨年12月に、大臣宛てに要望書を提出した時は、メディアは全く関心を持たず、それどころか記者たちに「もう決まっていること」「政府に逆らうのか」とまで言われたそうです。取り上げたのはNHKのみ。
その後、患者やその家族にアンケートを実施したり、政治家に働きかけたり、署名を集めたりと動き、ようやく深刻さに気づく議員が出てきたそうです。この時点で引き上げに伴う影響をデータで示す必要を感じ、付き合いのある研究者に協力を求めます。このデータによって医療者の声も高まっていきました。
とはいえ増加する医療費対策は必要です。これに対しては、医師で医療政策学者でもある津川友介さんが『国民の健康を犠牲にすることなく、2・3兆~7・3兆円の医療費削減が実現可能な「5つの医療改革」』と題して「note」に書かれています。例えば「70歳以上の窓口自己負担割合を一律3割とする」「薬局やドラッグストアなどで購入できる医薬品は保険から外す」「健康上のメリットがない医療を保険から外す」などです。
70歳以上の3割負担は反発しそうになりますが、データによれば3割程度まで引き上げても、過剰な受診が減るだけで健康への悪影響はほぼないことが示されているのだとか。津川さんのそれぞれの提言が納得できるのは、データの裏付けがあるからです。
医療費対策は「国民に痛みが少ない方法をデータから考える」。今の日本に決定的に欠けている視点です。医療政策の専門家提言をもとに、政府はゼロベースで再考すべきです。
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26面~30面 読者からのお手紙&メール(文責 矢野宏)
6年の介護
父を看取る
千葉県松戸市 白井政幸
2月25日に家族葬で父を見送りました。8日に85歳の誕生日を迎えて約1週間後の16日の早朝に容態が悪化して、最後は穏やかに静かに逝きました。
新年を迎えてから嚥下の機能が悪くなったらしく、食欲も言葉を発することもなくなってしまい、1月末には呼吸困難で緊急入院。その頃から誤嚥性肺炎になったらしく、「2時間おきの痰の吸引が必要」「点滴と抗生物質の投与がなければ延命はできない」と市立総合医療センターの主治医から宣告されました。もう自宅での介護ができないということで、療養期病棟のある病院か特養ホームかを探さなければと、姉と母が奔走するも受け入れ先が見つからず、「どうする?」と途方に暮れたときに、病院から深夜に連絡がかかったのです。
土曜日だったので家族全員が家にいたことが救いでした。おそらく父も残される私たちに迷惑をかけたくないという思いもあったのかもしれません。
介護は6年間に及びましたが、長かったのか短かったのかは今もわからないままです。これから先は家族同士が体も心も互いに無理をせずにいたわりあって生きていこうと思います。
リハビリテーション病院の件では同じ読者の方からアドバイスをいただいたことを今でも家族全員で感謝しています。また春のお花見にお会いしましょう。
(これまで一緒に暮らしていた家族との別れはいくつになってもつらいもの。少しは落ち着きましたか。お疲れが出ませんように。あらためてお悔やみ申し上げます)
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27面 車イスから思う事 詐欺メールにヒヤリ(佐藤京子) ※全文紹介
街中で歩く人を見ていると、やや前かがみで行き来する人が多い。手にはスマートフォン。歩きながらも手放せないのか、熱心に画面を注視している。耳にイヤフォンをしてスマホを見ている若者は厄介だ。急いでいるので道を開けてほしい時に声をかけても一人の世界に没頭しているのか、声は届かない。
電車の中の風景も一変した。昔は新聞を小さく畳んで読んでいる人がいたものだが。スマホがここまで日常生活の中に入り込んでくるとは、20年前には思いもよらなかった。一人で何台も持っている人も増え、今のターゲットは子どもと高齢者だとか。
携帯電話からスマホにシフトしたことで、何かとトラブルは起こっている。メールによる詐欺被害もその一つ。電話での「オレオレ詐欺」は手口が知れ渡ってきたが、「銀行口座の引き落としができなくなる」とのメールを見て、ドキッとしませんか。「ポイントが貯まったので特典をご案内いたします」とのメールに、思わず返信しそうになったことはありませんか。一日に100~500通もの迷惑メールが入って来ると、だいたい怪しいダイレクトメールはわかるようになるが、相手もあの手この手でパスワードを聞き出そうとする。
実は、うっかり引っかかりそうになったことがある。大手通販会社のポイントをプレゼントするとのメールが入り、喜び勇んで指定されたフォーマットへメールアドレスと暗証番号を入力しようとした瞬間、「ダメじゃん」と一人つぶやいて踏みとどまった。最後のOKを押す、まさに直前のこと。タダで物をくれるとの甘言に乗せられ、個人情報を盗まれるところだった。
少しずつ個人情報が漏れ、それが集められるのは怖い。今年に入って、知人の口座に2回ほど振り込んだら、1週間くらいして知人の口座のある銀行をかたった詐欺メールが届いた。一体どこから情報が抜き取られているのか。知らない発信者の場合は、よくよく納得ができないものは削除するしかない。
(アテネパラリンピック銀メダリスト 佐藤京子)
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28面 絵本の扉 「かめ(甕)」(遠田博美) ※全文紹介
私が絵本を選ぶきっかけは表紙の印象です。今回紹介する絵本も表紙のインパクトの強さからでした。ちょんまげ頭の男が大きなかめの中に首まですっぽり入っています。そのかめには縫い目のようなものが……。「これは何? どうして?」と表紙をめくる前から想像力がかきたてられます。
昔、ある村で菜種大尽と呼ばれる油問屋どんごろうえもんの屋敷に大きな甕が運ばれてきます。今年は菜種が大豊作。しぼった油を入れるため、特別に作らせたのです。「これにたっぷりあぶらをいれて たっぷりおおもうけじゃ ふっふっふっ」。翌日お披露目するため、式台の上に甕を鎮座させました。
ところが、その夜のこと。ページをめくると夜空に満月。そして一言「ぱかっ」。読み手には「えっ!なにが起こったの?」と思わせます。次に見るのは、夜が明けてぱかっと真っ二つに割れた大甕と驚いた顔のどんごろうえもんらの姿……。
なぜ、割れたのかはまったくわからないまま話は進みます。そこに呼ばれたのが、特製のにかわ糊を使って甕を直す名人のとんじろうです。読み手は表紙の男だとここでわかります。
とんじろうは得意の腕を振るい始めますが、どんごろうえもんは「甕の中側からしっかり直せ」と文句を言います。腕を信用されなかったとんじろうは怒って帰ろうとします。押し問答の中、それならと彼は、甕の中に入って修繕しますが、中から出られなくなります。甕の真上から彼の顔をとらえた描き方が非常に面白いショットになっています。
その後のどんごろうえもんととんじろうの押し問答は、まるで落語の会話のやり取りのよう。ここからは怒とうの展開になります。甕の中から出られなくなったとんじろうはどうなっていくのか? 読み手はぐんぐんと話に引き込まれて行きます。ラスト4ページで「え~っ」となり、驚きのエンディングを迎えます。
作者の飯野和好さんは、時代物を描かせたら天下一品。絵だけでなく、文字も彼の手書きで大変趣きがあります。
原作者は、イタリアのノーベル文学賞受賞作家ルイジ・ピランデッロ。1985年に制作されたオムニバス映画「カオス・シチリア物語」の一編「かめー甕」を見た飯野さんが絵本にしたいと思い、舞台を日本に置き替えた作品だそうです。(元小学校教諭 遠田博美)
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30面 うずみ火掲示板(矢野宏) ※全文紹介
新聞うずみ火では、平和学習を支えるため、証言DVD「模擬原爆」を制作中です。
ご支援頂ける方は、ゆうちょ銀行口座への振り込み、郵便振替をお願いします。
支援コースとそれぞれ返礼は次の通り。
▽3000円(お礼状、憲法ファイル)
▽5000円(お礼状、憲法ファイル、視聴券または上映会参加券)
▽1万円(お礼状、上映会参加券、DVD進呈)
①ゆうちょ銀行
店名(店番)四〇八
普通 記号14030
番号 22963181
②郵便振替口座
00920・9・173051
加入者はいずれも「平和学習を支える会」です。
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30面 編集後記(矢野宏) ※全文紹介
▼まさに現代の大岡裁き、胸のすくような報告内容だった。兵庫県知事の告発文書をめぐり、県議会特別調査委員会(百条委員会)に続いて、県が設置した第三者委員会が公表した調査報告書。「告発文書は公益通報」「知事の告発者探し『違法』」などと斎藤知事への厳しい評価が並ぶ。だが、第三者委の藤本久俊委員長は記者会見で「厳しい批判ではない。これがスタンダードだ」と語った。さて、どう出る斎藤知事。議会が閉会する3月26日以降、何らかの発表をする見込みだというが、「これも一つの見解」などと開き直るようなら、議会はもう一度、不信任案を出すべきだろう。 (矢)
▼そうこうしているうちに春4月。夢洲での大阪・関西万博の開幕が迫る。大阪府は小中高の児童・生徒を学校単位で紹介する事業を進めているが、保護者や学校関係者から不安の声が高まっている。万博会場に含まれる1区にはダイオキシンやPCB、下水汚泥などの有害物質が埋められ、メタンガスなどがいたるところから発生。緊急時の避難経路も限られている。豊中市の「万博校外学習を心配する親の会」は中止を求める署名2万5100筆を市長に提出する。私も強制反対! (野)
▼郵便局からの通知にうずみ火事務所に衝撃が走った。印刷代に続き、ゆうメールの値上げ。昨年秋の郵便料金の値上げで多少の覚悟はしていたが、1通につき96円だったのが、4月から129円と33円もアップする。創刊20年目を迎え、最大の危機かも。いい知恵があれば教えてください。(宏)
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31面 うもれ火日誌(矢野宏) ※全文紹介
2月13日(木)
矢野 栗原 夜、兵庫県尼崎市で開かれた「デマと脅迫から民主主義を守る」集いを取材。県議会百条委員会の庄本悦子さん、丸尾牧さん、北上哲仁さんら3県議に話を聞く。
2月14日(金)
矢野 夕方、翌日の「部落解放研究第32回滋賀県集会」での講演を控え、米原市へ。実行委員長の小林正典さんらと打ち合わせ。記念講演を行うルポライターの鎌田慧さんと再会。「新聞うずみ火、毎月隅々まで読んでいるよ。毎月は無理だけど、不定期でよければ書かせてもらうよ」とうれしい一言。
2月15日(土)
矢野 午後、第5分科会「平和と人権」で「置き去りにされた民間の空襲被害者」と題して講演。夜、帰阪。
2月19日(水)
新聞発行予定の23日の前週の水曜日と金曜日は新聞折り込みチラシのセット作業日。午後、金順玉(キム・スノク)さんと竹腰英樹さんがお手伝いに。ありがたい。
2月22日(土)
矢野 午前、京都へ向かう新快速が高槻駅の手前で緊急停車。踏切の遮断機が折れているとのこと。大阪から通常30分なのに80分立ちっぱなしで京都へ。特急「はしだて・まいづる」に乗り換えて綾部駅に向かうも3連休で満席。午後、「第26回9条連近畿北部連絡会」の学習会で「戦後80年 戦争する国に突き進む日本」と題して講演。
2月26日(水)
この日が新聞発送日となり、茶話会は中止。午後、柳田充啓さん、長谷川伸治さん、金川正明さん、大村和子さんが残りのチラシセット作業。夕方、新聞うずみ火3月号が届き、澤田和也さん、康乗真一さん、多田一夫さんも加わって発送作業。郵便局の回収に何とか間に合う。
栗原 発送作業の途中で十三のシアターセブン。「そして、アイヌ」の大宮浩一監督にインタビュー。
2月27日(木)
夜、MBSディレクターの亘佐和子さん、うずみ火の最年少読者?の馬場玲妃さんが来社。「無事、就職が決まりました」とうれしい報告。
2月28日(金)
夜、弁護士の定岡由紀子さんを囲んで憲法を学ぶ「憲法BAR」。前回の「憲法を変えるとしたらどこ?」を受け、辻知幸さんが取り上げた26条「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」について議論。
栗原 日帰りで東京へ。「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」の政府交渉を取材。
3月2日(日)
栗原 夜、北区兎我野町のライブハウスへ。大阪民主新報編集長でシンガーソングライターのケイシュガーさんのライブに酔いしれる。
3月3日(月)
矢野 午後、来社した「住吉・住之江同和教育推進協議会」事務局長の友永健吾さん、住之江中学教諭の坂本佳奈さんと6月の講演打ち合わせ。
3月7日(金)
矢野、昨年6月に講演した大阪暁光高校から「看護専攻科の非常勤講師として社会学を教えてほしい」との依頼があり、午後、同校で看護専攻科統括官の中川明恵さんらと打ち合わせ。履歴書を書くのは何十年ぶりやろ。講義は4月10日から計10回。
3月8日(土)
午後、PLP会館でうずみ火講座。「カジノ問題を考える大阪ネットワーク」代表で阪南大教授の桜田照雄さんが「危険だらけの夢洲カジノ万博~止めよう維新政治の暴走」と題して講演。
3月9日(日)
「新聞うずみ火」のフェイスブックが乗っ取られていると水田隆三さんから連絡。早朝から栗原が対応に追われる。水田さんのアドバイスを受けつつも打つ手がなくなり、10日午後に削除。
3月10日(月)
矢野 午後、難波別院で真宗大谷派大阪教区教化委員会主催「戦争展実行委員会公開講座」。桂花団治さんの伝戦落語「じぃじの桜」のあと、「大阪大空襲の実像」と題して講演。翌11日付朝日新聞大阪版で紹介される。
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32面 うずみ火講座・イベントご案内(矢野宏) ※全文紹介
●7月26日(土)黒田清さんを偲ぶライブ
反戦・反差別を訴えたジャーナリストの黒田清さんが亡くなって四半世紀。この夏もコント集団「ザ・ニュースペーパー」結成時のメンバー松崎菊也さん、石倉直樹さんを招いての偲ぶ会を、7月26日(土)に大阪府豊中市の「すてっぷホール」で開催します。
【日時】7月26日午後2時開場、2時半開演
【会場】豊中市立とよなか男女共同参画推進センター「すてっぷホール」
【交通】阪急宝塚線「豊中駅」南口改札出て右手、エトレ豊中5階
【資料代】2200円(読者2000円)
なお、今年も当日会場でお配りするパンフレットの「一言広告」(1マス3000円~)、カンパを募集します。お力添えをよろしくお願いします。
●お花見集い
うずみ火恒例のお花見集いは4月5日(土)正午~大阪城公園の教育塔の東側で開催します。お弁当や飲み物は各自ご持参ください。シートの上に長時間座っていると足に負担がかかるので、折りたたみの椅子などがあればご用意ください。
最寄り駅は地下鉄谷町線「谷町4丁目駅」で、徒歩10分ほどです。
満開の桜の下で大いに飲んで食べて語って心もお腹も一杯にしましょう。初めて参加される方も大歓迎です。
●大阪城内戦跡巡り
在日朝鮮人研究家の塚﨑昌之さんが亡くなってまもなく2年。学習会「塚﨑塾」最後のフィールドワークだった大阪城公園探訪を5月10日(土)に行います。
大阪城公園や大阪ビジネスパーク、UR森之宮団地、地下鉄森ノ宮車庫にはかつて200近い巨大な兵器工場が建ち並ぶ大阪砲兵工廠でした。東洋一の軍需工場と言われ、1945年8月14日の第8次大阪大空襲で壊滅しました。塚﨑さんの教えをもとに矢野が解説します。午後1時、JR環状線「京橋駅」南口に集合してください。資料代500円
●沖縄フィールドワーク
沖縄戦から80年を迎える6月22日(日)、戦跡をめぐるフィールドワークを行います。案内役は沖縄戦・戦後史研究者で琉球大准教授の謝花直美さん。現地集合・現地解散ですので、早目に飛行機を押さえてください。

【うずみ火花見集い】4月5日(土)正午~大阪城公園・教育塔付近
恒例のお花見集いは4月5日(土)正午~です。場所は大阪城公園の教育塔の東側を予定しています。お弁当や飲み物は各…

【うずみ火戦跡巡り】大阪城編は5月10日(土)午後1時~
在日朝鮮人研究家の塚﨑昌之さんが亡くなってまもなく2年。学習会「塚﨑塾」最後のフィールドワークだった大阪城公園…

【酒話会】3月28日(金)午後6時半~うずみ火事務所で
「酒話会」は3月28日(金)午後6時半~うずみ火事務所で開催します。定岡由紀子弁護士を囲んで憲法のイロハについ…

【茶話会】4月30日(水)午後2時半~うずみ火事務所で
次回の「茶話会」は4月26日(水)午後2時半~うずみ火事務所で開催します。新聞うずみ火の取材の裏話のあと、参加…

【編集長のなげき】郵便局からの非情な通知
▼まさに現代の大岡裁き、胸のすくような報告内容だった。兵庫県知事の告発文書をめぐり、県議会特別調査委員会(百条…

4月12日(土)午後2時~トークセッション「万博のツケは誰が払うの?」
大阪・関西万博を取材・研究しているジャーナリストや財政学者、建築士によるトークセッション「万博のツケは誰が払う…