編集長ブログ

頭を下げない知事

大阪 市役所前で寝そべっている大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」像が傷つけられた事件で、大阪府警は4月19日、45歳の男を器物損壊の疑いで書類送検した。▼被害が判明した3月13日、吉村知事は報道陣に「万博に対して反対の意見があったとしても、こういった暴力行為、犯罪行為は控えていただきたい」と述べ、犯人を万博反対派と決めつけた物言いだった。記者から「まだ反対した人がやったかわからない」と質されると、「強い意志がないと、なかなかあそこまでの傷を付ける行為はできない」「普通に考えたらミャクミャクは万博の象徴ですから、万博に対して良く思っていない人がやった可能性は高い」と持論を展開したという。▼書類送検された男は「終電を逃し、酔っぱらっていたことも相まって、イライラを発散させた」と供述。反対派ではなかったようだが、吉村知事からの謝罪はなし。「イソジン発言」の時もそう。大阪でコロナ死者数が全国最多になった時もお悔やみの言葉すらなかった。よほど、頭を下げるのが嫌なのだろう。▼一連の報道でもう一つ驚いたのはミャクミャク像の値段。設置費用を入れて623万円だとか。では、大阪の鉄道各社が走らせているミャクミャクラッピング列車はいくらかかっているのか。吉本興業の契約額は? 政府は、万博の宣伝など全国的な機運醸成にかかる費用を38億円から40億円にするとしたが、それではすむまい。大阪の放送局もおこぼれを狙っている。万博協会は公益社団法人ゆえ、財務諸表は出さねばならないが、情報公開請求に答える義務はない。意思決定過程の検証ができないため、闇の中になる可能性も……。  

【編集長のぼやき】志賀原発の廃炉なくして復興なし

「第二の人生は田舎で、時間に追われずにのんびりした生活がしたい」。退職後、夫婦で移り住んだ福島県の里山で田畑を耕し、自給自足生活を送っていた浅田さん夫妻。「天国のような生活」は原発事故によって奪い去られた。▼500㌔離れた金沢市で後ろ髪を引かれながらの避難生活は13年になる。避難指示は解除されたが、帰るたびに計測すると放射線量は依然として高く、「帰りたいが、帰れない」能登半島地震でトラブルが多発した志賀原発。被災地で「稼働してなくてよかった」との声をよく聞いた。北陸電力は「安全上の問題はない」というが、1999年に起こした臨界事故を8年間隠ぺいした過去がある▼北陸新幹線の延伸開業でにぎわう日に開かれた反原発集会。浅田さんの言葉が忘れられない。「自分の生業が一瞬でなくなることを想像してほしい」  

【編集長ブログ】万博2億円トイレより被災地に仮設トイレを

能登半島地震取材で被災地に入る際の必需品が紙おむつ。下水道被害でトイレが使えない地域が多い。町内には仮設トイレも設置されているが、外からやって来た者が使うのは申し訳ない。これまでの2回は金沢市を中心に動いたため、幸いにして紙おむつを使用することはなかったが、輪島市から金沢市内のホテルへ2次避難していた被災者と紙おむつの話になった。

北陸新幹線の延伸開業に伴い、2月末(後に3月15日に延長)までの退去を迫られているが、県外になるようなら自宅に帰り、再び地元の避難所に入るという。仮設トイレはあるものの数は足りず、以前は紙おむつで避難生活を送っていたというが、「また履くのは嫌やな」と嘆息をこぼした。そんな矢先、県が発表した2024年度予算案に大阪・関西万博の関連予算として1000万円を計上されたことが判明。日本維新の会の顧問でもある馳知事は、記者会見で「馬場代表をはじめ、松井さん、吉村知事、また橋下さんと古い友人です」と述べ、物議をかもしている。

被災者をもっと怒らせたのが、大阪・関西万博の2億円トイレ。会場の夢洲に40カ所のトイレが新設される計画だが、8カ所が若手建築家の設計による「デザイナーズトイレ」。うち3カ所が2億円のトイレ。江戸時代初期、大坂城再建のための石垣用に切り出されながら使われなかった「残念石」をトイレの柱に使うのだという。

仮設トイレは1基20万円ほどだから、2億円トイレを1カ所断念すれば被災地に1000基贈ることができる。しかもいずれ撤去される万博の上下水道整備費が128億円やて。もうやめにしませんか。

【編集長ブログ】棄民政治を許すな

1泊2日の駆け足取材ながら能登半島地震の被災地に入った。そこで耳にしたのは、初動の遅れを指摘する声だった。なかには「私たちは棄民扱いだ」と口にする被災者もいた。首相官邸のホームページで確認すると、首相をトップとする非常災害対策本部を設置したのは1日午後1040分。地震発生から6時間半後。死者273人を出した熊本地震では、発生から44分後に立ち上げている。しかも最初の会議が開かれたのは翌2日午前9時23分。発足して11時間近い空白がある

72時間の壁」と言われる4日、岸田首相は年頭記者会見を「地震関連の公務」を理由に43分で打ち切った。指名されなかった記者が「地震大国の日本で原発の再稼働は無理だと今回わかったのではありませんか」と叫んだが、首相は振り返ることなく退席。防災服から背広に着替え、午後8時からBSフジテレビの報道番組に生出演。翌5日は都内のホテルで3件の新年会に出席した。現地を見て、被災者の声を聞くことで血の通った対策が生まれると思うのだが、岸田首相が初めて被災地に入ったのは14日のこと

自衛隊派遣も小出しだった。発生から3日目に2000人。熊本地震では1万4000人。「能登半島北部への道路が寸断されている」ことを理由に初動の遅れを擁護する声もあるが、空や海もあるではないか。それとも、自衛隊は災害救助ではなく、「戦争する軍隊」に衣替えしているのだろうか。

岸田首相が今まさに決断すべきことは大阪・関西万博の中止。能登半島地震の復興支援に全力をあげることだ。「棄民政治」をもうこれ以上許してはいけない。

 

「路上のラジオ」で2023年を振り返る

2023年も残すところあと数日。この号がお手元に届くころには迎春準備に追われていることでしょう。振り返れば光陰矢の如し。いい1年でしたか。

先日、西谷文和さんが主宰するネットラジオ「路上のラジオ」にゲスト出演し、この1年の出来事を振り返りました。西谷さんがトークに選んだ出来事は以下の通り。「コロナ5類に引き下げ」「フランスで10万人デモ」「ウクライナ戦争から1年・岸田首相が電撃訪問」「日銀総裁に植田和男氏」「東日本大震災・福島原発事故から12年」「大阪、奈良で維新知事」「岸田翔太郎氏更迭」「首相演説会で爆発物」「G7広島サミット・ゼレンスキー大統領参加」「自衛隊で銃乱射事件」「LGBT理解促進法成立したが…」「デジタル庁に立ち入り検査」「ビッグモーター問題」「ジャニーズ問題」「ワグネルのブリゴジン氏墜落死」「第2次岸田改造内閣」「リビアで洪水」「阪神・オリックス優勝を万博利用」「ハマス奇襲攻撃」「政府三役が次々辞任」「自民党裏金疑惑」。すべて取り上げたわけではありませんが、おっさん2人が怒りと笑いのトークを繰り広げました。

さて、24年はどんな年になるのか。岸田政権はいつまで続くのか。解散総選挙はあるのか。ウクライナ戦争とガザ攻撃はどうなる? 南西諸島で進む要塞化、大阪万博・カジノを止められるか。新聞うずみ火には死活問題となる郵便料金の値上げも……

現場と読者の声を大事にして一号一号積み重ねていきます。小さな小さな新聞ですが、来年も応援してやってください。いい出会いと再会がありますように。良いお年をお迎えください。(矢)

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