編集長ブログ

【編集長ブログ】万博2億円トイレより被災地に仮設トイレを

能登半島地震取材で被災地に入る際の必需品が紙おむつ。下水道被害でトイレが使えない地域が多い。町内には仮設トイレも設置されているが、外からやって来た者が使うのは申し訳ない。これまでの2回は金沢市を中心に動いたため、幸いにして紙おむつを使用することはなかったが、輪島市から金沢市内のホテルへ2次避難していた被災者と紙おむつの話になった。

北陸新幹線の延伸開業に伴い、2月末(後に3月15日に延長)までの退去を迫られているが、県外になるようなら自宅に帰り、再び地元の避難所に入るという。仮設トイレはあるものの数は足りず、以前は紙おむつで避難生活を送っていたというが、「また履くのは嫌やな」と嘆息をこぼした。そんな矢先、県が発表した2024年度予算案に大阪・関西万博の関連予算として1000万円を計上されたことが判明。日本維新の会の顧問でもある馳知事は、記者会見で「馬場代表をはじめ、松井さん、吉村知事、また橋下さんと古い友人です」と述べ、物議をかもしている。

被災者をもっと怒らせたのが、大阪・関西万博の2億円トイレ。会場の夢洲に40カ所のトイレが新設される計画だが、8カ所が若手建築家の設計による「デザイナーズトイレ」。うち3カ所が2億円のトイレ。江戸時代初期、大坂城再建のための石垣用に切り出されながら使われなかった「残念石」をトイレの柱に使うのだという。

仮設トイレは1基20万円ほどだから、2億円トイレを1カ所断念すれば被災地に1000基贈ることができる。しかもいずれ撤去される万博の上下水道整備費が128億円やて。もうやめにしませんか。

【編集長ブログ】棄民政治を許すな

1泊2日の駆け足取材ながら能登半島地震の被災地に入った。そこで耳にしたのは、初動の遅れを指摘する声だった。なかには「私たちは棄民扱いだ」と口にする被災者もいた。首相官邸のホームページで確認すると、首相をトップとする非常災害対策本部を設置したのは1日午後1040分。地震発生から6時間半後。死者273人を出した熊本地震では、発生から44分後に立ち上げている。しかも最初の会議が開かれたのは翌2日午前9時23分。発足して11時間近い空白がある

72時間の壁」と言われる4日、岸田首相は年頭記者会見を「地震関連の公務」を理由に43分で打ち切った。指名されなかった記者が「地震大国の日本で原発の再稼働は無理だと今回わかったのではありませんか」と叫んだが、首相は振り返ることなく退席。防災服から背広に着替え、午後8時からBSフジテレビの報道番組に生出演。翌5日は都内のホテルで3件の新年会に出席した。現地を見て、被災者の声を聞くことで血の通った対策が生まれると思うのだが、岸田首相が初めて被災地に入ったのは14日のこと

自衛隊派遣も小出しだった。発生から3日目に2000人。熊本地震では1万4000人。「能登半島北部への道路が寸断されている」ことを理由に初動の遅れを擁護する声もあるが、空や海もあるではないか。それとも、自衛隊は災害救助ではなく、「戦争する軍隊」に衣替えしているのだろうか。

岸田首相が今まさに決断すべきことは大阪・関西万博の中止。能登半島地震の復興支援に全力をあげることだ。「棄民政治」をもうこれ以上許してはいけない。

 

「路上のラジオ」で2023年を振り返る

2023年も残すところあと数日。この号がお手元に届くころには迎春準備に追われていることでしょう。振り返れば光陰矢の如し。いい1年でしたか。

先日、西谷文和さんが主宰するネットラジオ「路上のラジオ」にゲスト出演し、この1年の出来事を振り返りました。西谷さんがトークに選んだ出来事は以下の通り。「コロナ5類に引き下げ」「フランスで10万人デモ」「ウクライナ戦争から1年・岸田首相が電撃訪問」「日銀総裁に植田和男氏」「東日本大震災・福島原発事故から12年」「大阪、奈良で維新知事」「岸田翔太郎氏更迭」「首相演説会で爆発物」「G7広島サミット・ゼレンスキー大統領参加」「自衛隊で銃乱射事件」「LGBT理解促進法成立したが…」「デジタル庁に立ち入り検査」「ビッグモーター問題」「ジャニーズ問題」「ワグネルのブリゴジン氏墜落死」「第2次岸田改造内閣」「リビアで洪水」「阪神・オリックス優勝を万博利用」「ハマス奇襲攻撃」「政府三役が次々辞任」「自民党裏金疑惑」。すべて取り上げたわけではありませんが、おっさん2人が怒りと笑いのトークを繰り広げました。

さて、24年はどんな年になるのか。岸田政権はいつまで続くのか。解散総選挙はあるのか。ウクライナ戦争とガザ攻撃はどうなる? 南西諸島で進む要塞化、大阪万博・カジノを止められるか。新聞うずみ火には死活問題となる郵便料金の値上げも……

現場と読者の声を大事にして一号一号積み重ねていきます。小さな小さな新聞ですが、来年も応援してやってください。いい出会いと再会がありますように。良いお年をお迎えください。(矢)

優勝パレードを政治利用するな

野球が大好きだった黒田清さんは、セリーグは阪神タイガース、パリーグでは阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)の熱烈なファンだった。阪神が18年ぶりのリーグ優勝、オリックスがリーグ3連覇を達成し、今年の日本シリーズは59年ぶりの関西決戦としても盛り上がった。黒田さんが生きていたら、仕事に手がつかなかっただろう。

この号がお手元に届く頃には大阪と神戸で優勝パレードも終わっているだろうが、姫路の谷野勉さんもお怒りのように、運営費を賄うクラウドファンディングも低調だ。21日時点で1万1600人以上から約9000万円が集まったが、目標額5億円の2割に満たない。

低迷の理由は、パレードに絡めて大阪万博をPRするような姿勢が批判を招いたからだ。大阪府の吉村知事は、パレード開催を発表した記者会見で、万博のキャラクターとともに登場し、「万博を一緒に盛り上げたい」と強調。府が開催費用を集めるため、府教委を通じて教職員にクラウドファンディングの周知を要請したことも「寄付の強制だ」と反発を招いた。

府市がパレード来場者の誘導などをする要員として職員計3000人にボランティアを募り、スタッフジャンパーを支給するのみ。一方、兵庫県と神戸市は休日勤務扱いとなることから、待遇差に不満が漏れる事態を招いている。

府関係職員労働組合の小松康則委員長は「知事のトップダウンで職員の多くが長時間労働を強いられている。府には絶対評価で毎年約15%の職員を下位評価にする人事制度があり、ボランティア要請に『強制』と感じる職員は少なくない」と語っていた。ある川柳を思い出した。「黒田記者 存命ならば 何と書く」

大阪カジノを止めるために

開幕が危ぶまれている大阪万博の会場と同じ、大阪湾の人工島・夢洲に計画されている大阪IR・カジノで、大阪府・市が、事業者の大阪IR株式会社と実施協定を結んだ。カジノ開業までの工程などを定めたもので、従来、2029年秋~冬の開業を目指していたが、30年秋ごろに先延ばしとなった。「国の整備計画認定が半年ほど遅れたから」との説明だが、夢洲の地盤対策などで、さらに1~2年遅れる可能性もあるという。何と甘い見通しか。

最大の問題が、事業者側が違約金なしで一方的に事業から撤退できる「解除権」を3年間延長して26年9月まで認めたこと。10月8日に生野区民センターで開かれた「夢洲IR・カジノ公聴会」で桜田照雄・阪南大教授が説明していたが、事業者はいつでも逃げ出せるのだという。事業者はMGMとオリックス連合だけなので、府・市にすれば逃げられては困る。土壌汚染などの対策費に788億円を公費投入したように、何とか引きとめるために最大限の優遇措置を取ることになるだろうと。

大阪カジノは当初、世界の金持ちをターゲットにしていたが、中国国内の賭博規制強化で中国の富裕層は消えた。狙うは国内客。開業は7年後だから、今、携帯でゲームに熱中している児童・生徒たちだ。夢洲には6400台のスロットマシンが並び、パチンコや賭けゲームになじんだ日本のギャンブラーを呼び込むための賭博場となる。市民が泣き、笑うのは事業者とゼネコン、推進した維新か。あかんものはあかんと声を上げ続けるしかない。 

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