101歳で亡くなるまで反戦を訴え続けた不屈のジャーナリスト、むのたけじさんの精神を受け継ぐため創設された「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」の第3回大賞に、新聞うずみ火が選ばれた。2月17日、埼玉県庁で受賞作品発表が行われ、共同代表の一人でルポライターの鎌田慧さんが「むのさんと黒田清さんの精神を受け継ぎ、地方から中央の権力を監視し、批判する新聞うずみ火の存在をうれしく思う」と評価した。

 

むのたけじ(本名・武野武治)さんは戦時中、朝日新聞の従軍記者として中国戦線などを取材した。1945年8月の終戦を期に、戦争の実態を伝えてこなかったことに責任を感じて退社。48年から出身の秋田県横手市で週刊新聞「たいまつ」を創刊し、78年に第780号をもって休刊するまでの30年間、健筆をふるった。

晩年は埼玉県さいたま市に住む次男の武野大策さん宅に拠点を移し、2016年8月に101歳で亡くなるまで文筆活動や講演などを通して反戦を訴え続けた。

むのたけじ賞は、むのさんの精神を受け継ぎ、地域に根差し、民衆の声を伝える個人や団体を表彰するため、親交のあったルポライターの鎌田さんらが呼びかけ人になって一昨年から始まった。

 

【選考理由】

大阪都構想問題、大阪市立十三市民病院のコロナ専門病院化などの地域問題ばかりでなく、日本学術会議任命問題、徴用工問題など、地域を越えた問題も独自の視点で扱っている。1面から数ページは2人の記者がその時に注目されていることを取材して書いて、新聞の立場を明らかにしている。この地域的土着性と政治的全国性を持ち、2人の記者の専門的取材能力が卓越していることが評価された。

応募された地域紙の中で、内容も、分量もずば抜けて多いことも特筆される。

また、「読者からのお手紙やメール」にコメントをつけている点もユニーク。新聞にできるだけ読者との双方向性を持たせようとしているのだと思うが、他にも「茶話会」「うずみ火講座」「うずみ火寄席」などの取り組みもよく、地域紙だけでない何か新しいことに向かっていることも期待が持てる。