新聞うずみ火 最新号

2023年4月号(NO.210)

  • 1面~4面 ルポ 石垣島に陸自駐屯地開設 島全体が「標的」懸念(うずみ火編集部)

     九州南から台湾へと至る琉球弧(南西諸島)への陸上自衛隊配備が加速している。中国を念頭に置く、いわゆる「南西シフト」。2016年に沖縄・与那国島に沿岸監視隊、19年には宮古島、奄美大島(鹿児島県)にミサイル部隊が配備された。そして3月16日には石垣島(石垣市)で駐屯地が開設され、ミサイル部隊が配備された。住民は標的になる不安を募らせるが、防衛省は「防衛の空白」の最後のピースが埋まったと位置づけ、さらなる強化を狙う。石垣島と与那国島で取材した。

    石垣島は面積約222平方㌔㍍、人口約4万8000人(2月末)の亜熱帯の島だ。ほぼ中央部に沖縄県最高峰の於茂登(おもと)岳がそびえ、山すそには島有数の農村地帯が広がる。
     3月17日、川原集落の具志堅正さん(61)を訪ねた。収穫を終えたサトウキビ畑では苗木が一面に植えられていた。その横にはパイナップル畑。青みがかった果実がたわわに実り、「あと1カ月くらいですね」と具志堅さんが目を細めた。手がける数種類のうち、収穫を待つのはスナックパインだ。
     パイナップルは収穫するまで2年半を要する。手塩にかけた作物の収穫を目前にするのは生産者にとって格別の喜び。「でも……。今年はうれしさも半減してしまうんです」。具志堅さんの視線の先には、山の翠を切り裂くようなクリーム色の建物群があった。
     前日、開所した石垣島駐屯地。敷地47㌶。地対艦ミサイル部隊と地対空ミサイル部隊、「有事」の初動を担う警備部隊あわせて約570人が配備された。家族含め800人超が移り住んだ。
     16日朝、駐屯地のゲート前で市民団体「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」が呼びかけた抗議行動。具志堅さんも加わった。隊員の手には小銃。建物の上からは、集まった住民たちにカメラを向ける隊員がいた。「この問題が持ち上がったときから反対してきましたが、この日を迎えてしまい、言葉にならないくらい悲しかったです。半永久的に残るミサイル基地を止められなかった。子どもたちに恐怖と不安を残してしまい、申し訳ないです」と具志堅さんは嘆く。
     防衛省が石垣市の中山義隆市長に配備受け入れを正式に要請したのは15年11月。候補地として平得大俣(ひらえおおまた)という地名が示された。周辺の於茂登、嵩田(たけだ)、開南(かいなん)、そして川原の四つの地区は沖縄本島や宮古島、与那国島、台湾などからの移民が血のにじむ努力で開拓した農村集落。一致団結して反対を貫いてきた。
     川原集落は1941年、沖縄県の移民計画によってできた集落で、具志堅さんの両親は戦後、沖縄本島の名護市から入植した。両親は沖縄戦を体験、豊見城市出身の母の背中には艦砲射撃による傷が残る。戦争体験を聞いて育った具志堅さんだが、特に最近、2人が戦争の記憶を語ることが多くなったという。
    ……

  • 5面 どう考える? 元徴用工問題の解決策(矢野宏)

     元徴用工の訴訟問題で、韓国政府が解決策を発表した。日本企業の賠償支払いを韓国の財団が肩代わりするという内容で、3月16日の日韓首脳会談でも合意が確認された。これで徴用工問題は解決したと言えるのか。そもそも対立の原因はどこにあったのか。

     元徴用工問題をめぐる日韓対立は韓国大法院(最高裁)が2018年、日本企業に被害者への賠償を命じたことがきっかけだ。植民地時代に日本企業などで労働を強いられた元徴用工らが日本製鉄(旧新日鉄住金)と三菱重工業を訴えた訴訟で、大法院が賠償を命じる確定判決を出した。
     だが、日本政府は「賠償問題は1965年の日韓請求権協定で決着済み」との立場を崩すことなく、韓国側が解決策を示すべきだと主張。日本企業も賠償に応じていない。
     解決策では、財団が賠償を肩代わりする原資は、請求権協定に基づく日本の経済援助で成長した韓国企業の出資などで賄う。日本政府に新たな謝罪は求めていないなど、基本的には日本側の主張、立場を踏まえた内容だった。
     約20年に及ぶ「日本製鉄元徴用工裁判」を支援してきた京都市の中田光信さん(67)は「日本企業が謝罪しないままでは、当事者は納得できないでしょう」と語る。
     日韓交渉は51年に始まり、植民地支配の責任を認めるか否かで締結まで14年かかった。韓国は併合が違法であり、植民地支配に対する賠償を求めた。一方、日本は合法ゆえ賠償問題は生じないと対立。冷戦下の米国の圧力もあり、結局、賠償ではなく、韓国へ有償無償5億㌦の経済援助を行うことで決着した。
    ……

  • 6面~7面 「大阪市長選公開討論会」 北野氏「カジノ住民投票で」(矢野宏)

     4月9日に迫った統一地方選。大阪では府知事と市長のダブル選に府議選、市議選を加えた「4重選」となる。中でも注目されるのが、松井一郎大阪市長の政界引退を受けて「ポスト松井」を争う市長選。新聞うずみ火は3月13日、西谷文和さんが主宰する「路上のラジオ」と共催で「大阪市長選公開討論会」を大阪市立淀川区民センターで開催した。討論会に先立ち、立候補を表明している大阪維新の会幹事長で大阪府議の横山英幸氏(41)と、政治団体「アップデートおおさか」が擁立した大阪市議の北野妙子氏(63)=自民党離党=に公開質問状を送付。最大の争点である夢洲カジノについて「予定通り開業させたい」とした横山氏に対し、北野氏は「市民の声を聞いて判断したい」と答えた。

     維新は2011年以降、大阪府市の首長と両議会の最大会派を占めてきた。その維新の創設者である松井市長が4月6日の任期満了をもって政界を引退する。
     維新は市長選の公認候補を決める予備選を実施。元キャスターの辛坊治郎氏やジャーナリストの須田慎一郎氏、政治学者の三浦瑠麗氏の加わった選考委員会で2人に絞り込んだ後、昨年12月の党員投票で横山氏が選ばれた。この予備選は、在阪メディアの注目を集めて候補者の顔と名前を売るのが狙いだった。
     一方、北野氏は、いわゆる「大阪都構想」をめぐる住民投票の際、反対の論陣を張るなど「非維新」勢力の中心として活躍。自民党を離党し無所属での立候補を決めた。
     市長選は3月26日に告示され、事実上の一騎打ちとなる見通しだ。
     新聞うずみ火と路上のラジオは2月14日、2人の予定候補者に出席依頼と公開質問状を郵送した。
     質問は三つ。まず、29年に開業が予定されている夢洲地区でのIR(カジノを含む統合リゾート)について尋ねた。①予定通り開業させたい②懸念事項があるので中止させたい③夢洲IRについて賛否を問う住民投票を行い、その結果に従いたいーーの三択で、横山氏は①を、北野氏は③を選択した。
     2問目は、25年開催が予定される大阪・関西万博について、①予定通り夢洲で開催したい②夢洲での開催は問題があるので、別の場所で開催したい③中止させたいで、2人とも①を選んだ。
    ……

  • 8面~9面 「袴田事件」再審決定 「証拠捏造」またも指摘(ジャーナリスト 粟野仁雄)

     気丈な女性の涙声を初めて聞いた。直前に雨が上がった3月13日午後2時過ぎ、2人の弁護士が飛び出し「再審開始決定」「検察の抗告棄却」と書かれた垂れ幕を掲げた。
     袴田巖さんの姉のひで子さん(90)と弁護団の小川秀世事務局長が大歓声の中を現れ、ひで子さんは「57年間待っておりました」と泣き顔で話し、小川弁護士は「これで絶対に終わらせる」と声を詰まらせた。
     1966年6月に静岡県清水市(現静岡市清水区)で味噌製造会社の専務一家4人が殺された事件で強盗殺人罪により死刑判決を受けた元プロボクサー袴田巖さん(87)が東京高裁に再審を求めた差し戻し審。大善文男裁判長は「元被告人を犯人と認定することはできない」として検察の抗告を棄却、再審開始を決定した。浜松市にいた巖さんは報道陣に「勝つ日だと思うね」と語ったという。
     この日、日本弁護士連合会での会見でひで子さんは「1980年の最高裁判決の時はみんなが敵に見えた。その気持ちが多くの人の支援で薄れていきました。抗告があるかもしれませんが頑張っていきます」と力強く語った。
     半世紀近く死刑執行におびえながらの拘置所生活で巖さんは拘禁症の影響が強く、発言も意味不明なことが多いが、ひで子さんは筆者の取材に「冤罪で人間がこんなことになることを世に示すのがせめてもの国へのリベンジですよ」と話している。
     大善決定は①犯行時の着衣の血痕の色調変化に関する弁護側の実験や鑑定書は信用できる②弁護側の衣類の味噌漬け実験の結果は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に該当し、元被告を犯人とした確定判決に合理的な疑いが生じる③犯行時の着衣は捜査機関が事実上、捏造した可能性が極めて高い④再審開始として死刑と拘置の執行を停止した静岡地裁決定を支持する。
    ……

  • 10面~11面 「福島・津島原発訴訟」国策に翻弄されて(ジャーナリスト 平舘英明)

    「貧乏性が身に染みついているからね。貧しいのは苦にならないよ」
     取材中、この言葉を何度聞いただろう。優しい実直な話しぶりに、東北人らしい人柄がうかがえる。
     志田昭治さん(71)は福島県大玉村に娘と2人で暮らしている。移住して9年。地元住民との交流も増え、生活にも慣れた。だが、志田さんの心は常に故郷津島にある。
     浪江町津島地区(約450世帯1400人)は、福島第1原発事故による放射能汚染で、全域が帰還困難区域になった。環境省の役人は津島の住民説明会で「100年は帰れない」と言った。その一言で、ざわついていた会場は一瞬で静まり返った。このままでは故郷が地図から消える。住民の危機感は高まった。津島地区の人々は2015年、国と東京電力に対し、原状回復と損害賠償を求めて提訴した(津島原発訴訟・原告約700人)。
     原告となった志田さんは、裁判の本人尋問で国側の弁護士から「仕事は探しているのか」と問われた。志田さんははっきりとこう答えた。
     「ハローワークに行っているが、除染の仕事しかない。放射能で故郷を追い出されているのに除染の仕事はしたくない。尻ぬぐいはイヤだ」
     どんなにきつい仕事でもいとわずに働いてきた自負がある。実直なだけではない。理不尽なことは許さない、そんな気骨の人でもある。
     東北地方の歴史は、中央政府から虐げられてきた歴史でもある。福島県では今なお、賊軍とされた戊辰戦争の傷あとが根深く残っている。「白河以北一山百文」は、東北地方が価値の低い辺境地であることを言いあらわしている。
    ……

  • 12面~13面 【うずみ火講座】岸田政権の原発回帰政策 再稼働、運転延長に執着(矢野宏)

     東京電力福島第一原発事故から12年。「うずみ火講座」が2月25日、大阪市北区のPLP会館で開講し、事故直後に福島県飯舘村に入って放射能汚染状況の調査を続けてきた京都大複合原子力科学研究所(旧京大原子炉実験所)研究員の今中哲二さん(72)が「あれから12年、福島の現状と原発回帰政策」と題して講演した。

     福島第一原発では、巨大地震と津波の影響で電源が喪失し、1~3号機の原子炉で核燃料が溶け落ちるメルトダウンが発生、大量の放射性物質が放出された。
     今中さんは「福島原発事故は、天災ではなく人災です」と切り出した。「この原発の津波対策は6㍍足らずでした。津波に弱いことは2000年代の初めから言われており、08年には東電の内部チームから『10㍍を超える津波に備えるため、防潮堤を造るべきだ』との声が上がったが、幹部がこの計画を握りつぶしたのです」
     検察審査会の議決によって東電の勝俣恒久元会長と元副社長2人ら旧経営陣が強制的に起訴されたが、東京高裁は無罪判決を出した。
     復興の前提は福島第一原発の廃炉を着実に進めること。最も難関が1~3号機の原子炉から溶け落ちた核燃料が構造物と混ざり合った「核燃料デブリ」の取り出しだ。強い放射線を出す上、どこにどのくらい存在するのかも詳しくはわからない。
     「水素爆発をまぬがれた2号機でロボットによる調査が進められていますが、現場検証も終わっていまぜん。当初の計画では21年中に取り出し作業を始める予定でしたが、10月以降になりそうです。それもロボットアームを使って数グラム程度取り出す計画です。廃炉ロードマップにある『40年で廃炉』などあり得ません」
     核燃料デブリの総量は、1~3号機あわせて880㌧。1、3号機は取り出し方法や時期も未定だという。
    ……

  • 14面~15面 関東大震災 香川の行商9人虐殺 「よそ者排除」爆発(栗原佳子)

     10万5000人の犠牲を出した関東大震災から100年。大地震による犠牲のみならず、流言飛語で多数の朝鮮人や中国人が虐殺された。大地震発生から6日後の1923(大正12)年9月6日には、千葉県北部の福田村(現・野田市)で香川県から薬の行商に来た一行15人が自警団に襲われ9人が殺された。「福田村事件」だ。なぜ虐殺は起きたのか。3月半ば、「福田村事件追悼慰霊碑保存会」の市川正廣会長に現地を案内してもらい事件の背景を聞いた。

     市川会長や生存者の手記などによると、事件の概要はこうだ。
     その日早朝、行商人の一行は木賃宿を出発、大八車を押して12㌔先の三つ掘の渡し場を目指した。利根川を挟んで対岸の茨城県側が次の目的地だった。リーダーの男性が最年長の29歳。家族も3組いて、最年少は1歳の赤ちゃんだった。
     渡し場手前でリーダー一家ら9人が茶屋、残る6人がに向かいの神社の鳥居のたもとに分かれて荷を下ろした。リーダーが渡し場で船頭と交渉していたところ、船頭が「言葉が変だ。朝鮮人ではないか」と疑い始めた。近くの寺の鐘が鳴らされ、福田村と隣の田中村(現在の柏市)の自警団らが竹やりやとび口、銃や刀などを手に駆け付けた。
     市川さんは「鐘が聞こえる範囲などたかが知れている。隣村からも来ているので、事前に、怪しい集団がいると連絡があったのでしょう。当時、渡し場を目指す一行を目撃した人は『わけわからん連中がぞろぞろと。異様な雰囲気だった』と振り返っています」と話す。
     1923年9月1日午前11時58分、相模湾北西部を震源とするM7・9の巨大地震が関東一円を襲った。東京、神奈川、千葉を中心に家屋の倒壊や地滑りのほか、津波や大規模な火災も発生、約10万5000人の死者を出した。
    ……

  • 16面~17面 ヤマケンのどないなっとんねん 放送介入もはや現実(フリーライター 山本健治)

     私が政治に関心を持ち、集会やデモに参加するようになったのは高校2年だった1960年の安保条約改定問題からである。以来、30人近い首相を見てきた。何もしないうちに女性スキャンダルで消えた首相もいたが、岸田首相は自己顕示欲は人一倍だが、最も優柔不断で実行しない、口先だけである。
     その岸田首相が昨夏の参院選で自らの顔写真の横に「決断と実行」というキャッチコピーを添えたポスターをつくり、全国に張り巡らせた。あのキャッチコピーはロッキード事件で逮捕・起訴され、有罪となった田中角栄元首相が72年年末の総選挙で掲げたものである。
     いまもなおあちこちに残ってわびしく、かつ虚しい風景となっているが、多くの国民にとっては公約違反の現物証拠であり、怒り心頭である。
     だが、こんな岸田首相のぬらりくらりとした答弁を野党は攻めきれず、旧統一教会問題は救済新法成立とともに過去のものとなり、防衛3文書、防衛費のGDP2%への引き上げのような、国の根幹、将来に関わる大問題について閣議決定ですまし、国会審議は形ばかりで時間だけ過ぎれば与党の多数の力によって採決し、予算案も年度内に成立し、統一地方選と補欠選挙へとなだれこんでいく。
     立憲と維新のような水と油みたいな政党が野党共闘を組んでもうまくいくわけないのは明らかだったが、案の定、まったく緊張感のない国会になってしまった。ダレにダレ切って当選以降一度も出席しないで、居眠りしている国会議員のおっさんを叩き起こしてやるなどと場外で吠えていた議員にすらバカにされる状態になった。除名という禁じ手でケリをつけたつもりでいるのだろうが、そもそもこういう人物が当選する日本の政治意識、低い投票率はこれまでの政治家、政党、また公約反故などに対する国民の批判の表れとして真剣に受け止め、根本から考え直さなければならないのではないか。
     こんな状態が続くと、国民は政治に無関心になって他に目を奪わ……

  • 18面~19面 フクシマ後の原子力 忘却にあらがう展示(和歌山信愛女子短大副学長 高橋宏)

     私が政治に関心を持ち、集会やデモに参加するようになったのは高校2年だった1960年の安保条約改定問題からである。以来、30人近い首相を見てきた。何もしないうちに女性スキャンダルで消えた首相もいたが、岸田首相は自己顕示欲は人一倍だが、最も優柔不断で実行しない、口先だけである。
     その岸田首相が昨夏の参院選で自らの顔写真の横に「決断と実行」というキャッチコピーを添えたポスターをつくり、全国に張り巡らせた。あのキャッチコピーはロッキード事件で逮捕・起訴され、有罪となった田中角栄元首相が72年年末の総選挙で掲げたものである。
     いまもなおあちこちに残ってわびしく、かつ虚しい風景となっているが、多くの国民にとっては公約違反の現物証拠であり、怒り心頭である。
     だが、こんな岸田首相のぬらりくらりとした答弁を野党は攻めきれず、旧統一教会問題は救済新法成立とともに過去のものとなり、防衛3文書、防衛費のGDP2%への引き上げのような、国の根幹、将来に関わる大問題について閣議決定ですまし、国会審議は形ばかりで時間だけ過ぎれば与党の多数の力によって採決し、予算案も年度内に成立し、統一地方選と補欠選挙へとなだれこんでいく。
     立憲と維新のような水と油みたいな政党が野党共闘を組んでもうまくいくわけないのは明らかだったが、案の定、まったく緊張感のない国会になってしまった。ダレにダレ切って当選以降一度も出席しないで、居眠りしている国会議員のおっさんを叩き起こしてやるなどと場外で吠えていた議員にすらバカにされる状態になった。除名という禁じ手でケリをつけたつもりでいるのだろうが、そもそもこういう人物が当選する日本の政治意識、低い投票率はこれまでの政治家、政党、また公約反故などに対する国民の批判の表れとして真剣に受け止め、根本から考え直さなければならないのではないか。
     こんな状態が続くと、国民は政治に無関心になって他に目を奪わ……

  • 20面~21面 世界で平和を考える ウクライナと原発(フリージャーナリスト 西谷文和)

     9年前の2014年3月にウクライナの首都キエフに入った。中央に独立広場があり、市民はそこで「マイダン革命」(マイダン=広場)を成功させた。訪れた時はまだたくさんの「革命防衛隊」がテントを張って泊まり込んでいた。
     ここでは、前年の11月末からヤヌコビッチ大統領(当時)の退陣とウクライナのEU加盟を求めた集会が行われていた。2月中旬、事態は急変する。治安警察(ベルクト)に向かって石を投げる人が出てきた。ベルクトが催涙ガスで応酬すると、火炎瓶を投げる「過激派」が現れた。ベルクトはデモ参加者を撃ち殺す。やがてデモ隊に「ネオナチグループ」が現れ、警官を撃ち始める。広場は戦場と化した。
     その後、ヤヌコビッチはヘリでウクライナ東部に逃げ、独裁政権が崩壊。広場は「革命」のシンボルとなった。私はこの革命に違和感を覚える。市民は本当に武力革命を望んでいたのか? 急に現れたネオナチはロシアが手配したのでは? 「ポロシェンコ新政権は極右に乗っ取られている」。ロシア系メディアが大宣伝。危機感をあおられたクリミアのロシア系住民がロシアへの併合を求める。プーチンは、キエフを失ったがクリミアを手に入れ、紛争が東部ドンバスに飛び火して泥沼化する。19年の選挙でゼレンスキーが大統領になり、22年2月、ロシアが一方的に侵略を始める。これが9年間のアウトラインである。
     ドニエプル川のほとりに立ち、キエフの街を俯瞰する。大通りには路面電車、背後には大聖堂がそびえている。あの大聖堂が東寺で、この川が鴨川だとしたら……昔の京都に似てなくもない。キエフと京都は姉妹都市で、キエフには「キョートストリート」まで存在する。そんなキエフの下町にチェルノブイリ博物館がひっそりと佇んでいる。
     博物館の手前には、事故直後に出動した消防車、パトカーが当時のままに陳列されている。受付の横に日本語で大きく「ふくしまとともに」。原発事故を伝える日本の新聞と誰もいなくなった双葉町で牛が国道をさまよう写真が壁に貼られている。天井にはキリル文字の看……

  • 22面 ドキュメンタリー映画「93歳のゲイ」(矢野宏)

    「TBSドキュメンタリー映画祭」が東京・大阪・名古屋・札幌で開催される。上映されるのはTBS系列の4社が制作した15作品。毎日放送は、89歳の時に初めて同性愛者であることを打ち明けた男性に訪れる「出会い」と「別れ」を追った「93歳のゲイ」(吉川元基監督)を3月24日からシネ・リーブル梅田で公開する。

    大阪・西成の炊き出しに並ぶ一人の老人。その部屋には新聞を切り抜いた中年男性の写真が飾ってある。「なんという人がわからへん。そやけど、この顔が一番好きやねん」。長谷忠さん(93)は照れ笑いを浮かべた。
     1929(昭和4)年生まれ。愛人の子として育ち、初恋は小学校の男性教員だった。
     太平洋戦争の最中、14歳で旧満州(中国東北部)に渡り、そのまま終戦を迎えた。帰国後は倉庫作業や清掃など仕事を転々とし、4年前に西成にやってきた。
    ……

  • 23面 経済ニュースの裏側 日銀の動向(評論家 羽世田鉱四郎)

    4月から新しい日銀総裁が登場します。本命候補が軒並み辞退したのでは、と憶測されていますが。いずれにせよ、後始末が大変です。
     日銀の金融政策 長短金利を低く抑制(YCC)しています。①短期金利 金融機関での貸し借りに適用。マイナス金利に(▲0・1%)②10年物など長期国債の金利を低位に固定。先進国では日本だけです。参考までにアベノミクス前の2012~13年当時は、短期金利0・1%、長期金利0・8%でした。リフレ派の「マネーが増えると、相対的に物やサービス活動などの対価が上がる」というインフレ誘導策が要因です。
     金利は経済活動を現す指標です。人為的な抑制は、きわめて不自然。今後はマイナス金利の解除と長期金利の上昇圧力を見定めて、金融市場の混乱を収束させる必要があります。
    ……

  • 24面 会えてよかった 島袋艶子さん(上田康平)

    地域にお店がなくて、買物に困っ
    ている高齢者らの買物支援をしよう
    と公民館での「えぐち商店」のアイ
    デアが生まれた。実は、このアイデ
    アを出したのは艶子さん。職員、ボ
    ランティアの方々に話して「いいん
    じゃない」となって、実行に移した
    という。
     「えぐち商店」の原点は、読谷村
    楚辺の実家で母がやっていたマチヤ
    グヮー(商店)。近所のおばあちゃ
    んが来て、店の前でゆんたく(おし
    ゃべり)。母がいないとき、店番も。
    それを見ていた。   
    ……

  • 25面 日本映画興亡史 大不況で壊滅状態に(ジャーナリスト 三谷俊之)

     「昭和初年、映画は敏感だった」と竹中労は発言している。来たる暗黒を予兆した伊藤大輔の『長恨』や『忠次旅日記』『下郎』。マキノ雅弘(当時は正博)監督による『首の座』などがそれだ。病床のマキノ省三が「おまえが撮れ」と、21歳の雅弘に命じ、省三の没後2カ月後、封切りされた。
     それまでの時代劇は講談本や歌舞伎からとった英雄豪傑を主人公に、チャンバラが軸だった。そこに、武士道とか忠義、孝行など封建的忠誠心を主題にした。幕府や主君への忠誠心に変わって、昭和に入り、天皇と国家への忠誠という近代ナショナリズムに置き換えられた。
     しかし、伊藤や雅弘の映画はアナーキーな国家への反逆であり、ニヒリズムがみなぎっていた。『首の座』は前年の『浪人街 第一話 美しき獲物』と同じく、山上伊太郎脚本、三木稔撮影による。作品は評論家やインテリからは高い評価を受け、前年に続いてキネマ旬報ベストワンを獲得した。残念ながら、これらのフィルムは失われている。当時はプリント数も少なく破損し、フィルム自体も可燃性で、多くは撮影所の火事や戦争で失われた。戦前の日本映画で現存しているフィルムは1割に満たない。
    ……

  • 26面 フリーアナウンサー坂崎優子がつぶやく「カセットコンロ大丈夫? 」

     前から気になっていたカセットボンベ式のヒーターを買いました。小型なので災害時にどこまで役に立つかは怪しいですが、持ち運びが簡単で、寒いトイレや脱衣所に置いて必要な時だけつけるなど、日常使いもできます。買ってよかったと思います。
     ガスボンベを使う機器は、使用上の注意点が案外知られていません。例えばカセットコンロ。今あるものはいつ買ったかわかりますか?カセットボンベにも使用期限があることをご存じですか?
     2020年9月に一般社団法人 日本ガス石油機器工業会が「カセットコンロ使用実態調査」を実施しました。対象は20~70代のユーザー1000名。驚きだったのが「製造年を確認したことがあるか」の問いに対し、「はい」と答えたのがわずか5%だったことです。
    カセットコンロの使用期限は10年とされていますが、調査では「10年以上経過しているコンロの所持率」が5人に1人でした。そもそも10年が目安ということを知っていた人が……

  • 27面~30面 読者からのお手紙&メール(文責・矢野宏)

    マイナンバー急ぎ
    あめとむちの政府

      熊本県八代市 横林政美
     訪問リハビリに来られた理学療法士が開口一番、「市役所の市民課の窓口は人だかりでした。マイナンバーカードの申請が2月末までだったからでしょう」と言われました。「カード申請には顔写真などが必要で、面倒だから申請しません」と答えると、「写真はその場(役所)で撮ってくれるそうです。申請者には合計で2万円分のマイナポイントがもらえるそうですよ」と話していました。
     政府が2万円分のポイントを出してまでマイナンバーカードを取得させるのは、「馬の鼻先にニンジンをぶら下げる」ことと同じではないでしょうか。
     加藤厚労相は、健康保険証と一体化……

  • 28面 車イスから思う事(アテネパラ銀メダリスト 佐藤京子)

     久しぶりに電車を乗り継いで1時間ほどの船橋駅まで行ってきた。乗車位置は最後部の車掌さんの前と決めている。相棒のイムア君を車掌室の壁と車イスの間に伏せさせるのは、乗客に踏まれないようにするためだ。JRは急行に乗ったためかひどく揺れた。車イスのブレーキをしていても揺れるたびに少しずつ場所がずれていく。
     待ち合わせ時間の3分前に到着。日曜日の昼ということもあり、駅は混雑していた。この日の外出はイムア君をシャンプーしてもらうため。2時間ぐらいかかる。さて、終わるまでどう過ごそうか。土地勘がない場所で時間を過ごすことはなかなか難しい。それに、イムア君と離れると、何とも心もとない。一緒に暮らすようになって、まだ1カ月ほどだが不安になる。
     混雑する駅ビルの中を車イスで行き来するのは疲れるので、喫茶店に入った。しばらくは大丈夫だろうと思ったが、入店待ちの人が増えてきた。このまま居座るのも気がとがめるので店を出た。エレベーターを待っていても混雑しているため、なかなか乗り込めない。よう……

  • 29面 絵本の扉「おもいのたけ」(元小学校教諭 遠田博美)

     この絵本を書いた木村裕一さんは、『あらしのよるに』の作者として知られています。『おもいのたけ』は、『あらしのよるに』から5年後の作品です。
     一匹のタヌキが洞窟の前で、「オンドロロン、オンドロロン」という奇妙な音に足を止める。中に入ると、奥の岩に小さなキノコが生え出して、音の正体はてっぺんから垂れた水だった。タヌキは、そのキノコが憎いキツネの顔に見え、思わず「得意顔のあんたが嫌いだ」という。思いを告げた後、キノコたちは少し大きくなった。タヌキが出て行った後、しずくの音に誘われて、今度はリスが洞窟に入ると、キノコはリスが不満を持っている母親に見え、タヌキと同じようにキノコに思いをぶつける。その後、ウサギ・サル・ブタ・キツネ・クマ・ヤマネコたちが次々に思いを告げたい者が気持ちをぶつけていく。キノコはとうとう洞窟の天井まで膨れ上がる。そしてお祭りの日、集まった動物たちはキノコに思いを吐き出せたので後ろめたさはありながらも気持ちは落ち着いている。
    ……

  • 30面 うずみ火掲示板「ピースおおさか寄贈 証言DVDに感謝状(矢野宏)

    新聞うずみ火が制作した証言DVD「語り継ぐ大阪大空襲Ⅱ」を大阪市中央区の戦争博物館「大阪国際平和センター」(ピースおおさか)に寄贈したところ、片山靖隆館長から感謝状が贈られました。
     完成した証言DVDは38分で、昨年に続いて2作目。クラウドファンディングに挑戦して制作費50万円を集め、空襲時6歳から13歳までの4人の証言を収録しています。
     空襲体験者の「記憶」を「記録」に残すため、今年も証言DVDを制作しようと思っています。

  • 30面 潮平正道さん画文集 再販プロジェクト開始(栗原佳子)

     一昨年88歳で亡くなった石垣島の画家、潮平正道さんの画文集「絵が語る八重山の戦争」(南山舎)。絶版になった作品の再販を目指すプロジェクトチームが動き出した。
     潮平さんは鉄血勤皇隊や戦争マラリアなど八重山での戦争体験を語り継いできた。自身や島の人たちの体験をわかりやすく子どもたちに伝えるため、多数のスケッチ画を描き続けた。八重山の戦争を伝える写真は残されておらず、住民の目線で描かれた貴重な証言記録になっている。
     ミサイル基地反対を訴える島の人たちに寄せ書きを届けたグループが現地で画文集に接し、再販を発案した。版元の協力で300部の予約が集まると再販が決まるという。
     Email:623yaeyama@gmail.com(プロジェクトチームの木村さん)。名前、住所、電話、希望冊数を明記する。1冊税込み2500円。

  • 30面 編集後記(矢野宏)

    「維新のどこが嫌いですか」。前堺市議の野村友昭さんに尋ねたことがある。開口一番、野村さんはこう答えた。「嘘をつくところ」。だから議論にならないのだという。3月10日に淀川区内のホテルで開かれた維新のタウンミーティングでもそうだった。吉村知事は支持者に向かって、「維新の行財政改革で財政破たん寸前だった大阪は救われた」と得意げに語っていた。ほんまかいな。▼関西学院大の冨田宏冶教授は共著「日本維新の会をどう見るか」(学習の友社)の中でこう書いている。「橋下氏、松井氏と2代続いた維新府政は、府民に直結した医療、福祉、子育て、中小企業支援などの財政支出を次々と削除した。その額は、2008年からの7年間で1551億円」。ところが、府の財政は一層危機を深刻化させ、府の借金残高は5848億円増加。この結果、12年度から18年度まで府債の発行に総務相の許可が必要とされる起債許可団体へと転落したという。▼さらに、吉村氏は「大阪市立小・中学校給食の無償化、私立高校の無償化も実現した」とアピールしていたが、これも嘘。いずれも国からの交付金などで実施されている。極めつけは夢洲カジノだろう。「大阪経済を成長させて収入を増やす将来への投資」と語っていたが、それこそが「負けることが見えた」バクチだ。土壌改良費だけで788億円。ここに地盤沈下対策費が加われば「大阪は破たんする」と立命館大の森裕之教授も指摘している。▼4月9日に迫った統一地方選。大阪は府知事と市長、府議選と市議選の「4重選」だが、維新の独占を許すと、4年後までに大阪市は消滅するのではないか……。「都構想」の住民投票でみせた市民力が今こそ問われている。これ以上だまされたらあかん。 

  • 31面 うもれ火日誌(矢野宏)

    2月12日(日)
     矢野 午後、大阪市北区のPLP会館で開かれた「ふぇみん婦人民主クラブ(ふぇみん)・大阪」の新年会で「維新政治で大阪が沈む」と題して講演。打ち上げも盛り上がり、気がつけば三次会。
    2月13日(月)
     西谷文和さんと「大阪市長選公開討論会」を共催することになり、夕方、大阪市中央区の大阪中央法律事務所で「大阪市・市民連合」代表の梅田章二さん、共同代表の藤永のぶよさん、「どないする大阪の未来ネット」の馬場徳夫さんらと打ち合わせ。
    2月14日(火)
     栗原 夕方、大阪市淀川区のシアターセブンで、ドキュメンタリー映画「ただいま、つなかん」の風間研一監督にインタビュー。
    2月16日(木)
     矢野 午後、大阪市が進める街路樹・公園樹1万本伐採計画に抗議している「大阪市の街路樹撤去を考える会」代表の渡辺美里さんに話を聞く。
    2月17日(金)
    ……

  • 32面 4月8日(土)お花見集い(矢野宏)

    お花見集いは4月8日(土)正午~大阪城公園で開きます。新型コロナに伴う制限が4年ぶりに解除されたため、場所を西の丸庭園に変更します。庭園に入って左手斜め奥の桜並木の下です。
     大阪では観測以来最も早い開花となり、当日は花びらが散る中で、お弁当を食べ、お酒を飲んで交流を深めましょう。
     この時期の入園料は350円。なお、最寄り駅は地下鉄谷町線「谷町4丁目駅」で、徒歩10分ほどです。

  • 32面 4月15日(土)大阪城探訪(矢野宏)

    4月15日(土)には、在日朝鮮人研究家の塚崎昌之さんを囲んでの学習会「塚崎塾」のフィールドワークを大阪城公園内で行います。
     大阪城公園の東側には、当時東洋一の軍需工場と言われた「大阪砲兵工廠」がありましたが、大空襲で破壊されました。現存する建物もあり、塚崎さんに解説していただきます。
     午前10時、JR環状線「大阪城公園駅」改札に集合。参加費は1000円です。

  • 32面 7月29日(土)黒田さんを偲ぶ会(矢野宏)

     まもなく黒田清さんが亡くなって23年目の夏を迎えます。今年も黒田さんが好きだったコント集団「ザ・ニュースペーパー」結成時のメンバー、松崎菊也さんと石倉直樹さんを招いての「黒田さんを偲び、平和を考えるライブ」を、7月29日(土)午後2時半~開催します。
     会場は、次号でご紹介しますので、今から予定に入れておいてください。
     今年で9回連続の出演となるお二人からメッセージが届きました。  「黒田さんのご恩を笑いでお返しする。それが大阪でお会いする皆さんとの合言葉」(松崎さん)
     「♪夏が来れば呼ばれます 集まろおぜ大阪に うずみ火の中に浮かびくる 優しい影黒田さん 客席の皆んなが笑ってる マスクも外して平和な証 終われば酒を交わし合う さあ飲もおぜあの人と」(「夏の思い出」石倉さん)
     なお、当日会場でお配りするパンフレットに掲載する「一声広告」(1マス3000円~)を募集しています。ご協力いただけると幸いです。

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