新聞うずみ火 最新号

2021年9月号(NO.192)

  • 1面~3面 目の敵にされる酒 「京や酒店」と「唎き酒家」(矢野宏、栗原佳子)

    新型コロナウイルスの感染「第5波」で、酒類を提供する飲食店に休業要請する4度目の緊急事態宣言が首都圏や関西圏などで延長された。繰り返される時短営業と酒類提供の禁止に飲食店は翻弄され、店に卸す酒店も大きな打撃を受けている。「なぜ、お酒だけが目の敵にされるのか」。現場からは怒りと嘆きの声がもれ聞こえる。コロナ禍で、地酒にこだわる2人の店主に話を聞いた。

    (リードのみ)

  • 4面~5面 貧困生むコロナは災害 東京で支援活動 稲葉剛さん(矢野宏)

    長引くコロナ禍で、この国の貧困が加速している。長年、生活困窮者支援に取り組んでいる一般社団法人「つくろい東京ファンド」代表理事の稲葉剛さん(52)は「これほどまでに多く、多様な人が困窮している状況は過去に見たことがない」と語る。私がパーソナリティを務めるMBSラジオ「ニュースなラヂオ」に電話出演していただき、支援の状況について語ってもらった。 

    (リードのみ)

  • 6面~7面 「学校を委縮させない」 久保校長「自分への怒り」(矢野宏、栗原佳子)

    大阪市立木川南小学校の久保敬校長(59)が松井一郎市長に送った教育行政への提言書に共感の輪が広がっていることを、本紙7月号で紹介した。松井市長は処分の可能性に言及、市教委は8月20日、久保校長を文書訓告にした。「学校現場が混乱した」などと指摘したことが教育方針への批判と受け止められたからだ。後日、同校を訪ねると、久保校長は笑顔で迎えてくれた。「言いたいことを言うと処分されるのではと、教育現場が委縮しないよう、これからもおかしいことはおかしいと訴えていきます」。その言葉は力強かった。   

    (リードのみ)

  • 8面~9面 「皆タリバンを恐れている」 アフガン女性支援 西垣さんに聞く(粟野仁雄)

    「もう、びっくりです。脱出した韓国の大使館員は戻って現地の人の脱出の手助けをしました。日本の大使館員は英国機でドバイに逃げたままでした。現地人スタッフや家族のことなど念頭にない。どうして新聞やテレビは批判しないのか」と怒るのは、アフガニスタンに通い続け、現地の人たちを支援してきた「宝塚・アフガニスタン友好協会」の西垣敬子代表(85)だ。
     
    確かに、日本のメディアは批判もせず、「一人の日本人を救出できてよかった」と語る菅首相の会見を垂れ流す。逃げた岡田隆・駐アフガニスタン大使の名前もほとんど出さない。外務省や官邸サイドに忖度する記者たち。カブール制圧の直後に「デイリー新潮」で配信した西垣氏のインタビューを要約する。

    (略)

  • 10面~11面 世界で平和を考える「中村哲さんの言葉」(西谷文和)

    911事件から20年が経過した。アメリカは「テロとの戦い」に約8兆㌦(880兆円)を費やし、約90万人の尊い命を奪った上で、アフガニスタンについて言えば、一方的で拙速な米軍の撤退によって「元のタリバン政権」に戻してしまったのである。
     
    「テロとの戦い」は完全に破綻した。テロという暴力を空爆や銃撃戦という暴力で押さえ込むことは無理なのだ。ではどうすればよかったのだろうか?
     
    2010年1月、私はアフガニスタン東部の町ジャララバードで、中村哲さんと邂逅した。広大なガンベリー砂漠に一本の用水路が掘り進められている。「この水路で15万人の命が救われる。ここはすぐに緑の森になりますよ」。中村さんの説明をにわかには信じられなかった。そんな奇跡が本当に起きるのだろうか?半信半疑の私の前でスコップを片手に水路を掘り進む労働者たちは、ついこの間までパキスタンに逃げていた難民たちだった。

    (略)

  • 12面~13面 ヤマケンのどないなっとんねん「安倍氏にスガリ『保守』連呼(山本健治)

    最初に、前号で「岸」防衛大臣と書くべきところを「安倍」防衛大臣と誤記したことについてお詫びし訂正させていただく。岸大臣は安倍晋三前首相の実弟だが、岸家の養子になっていたことから私の頭の中でごっちゃになっていたためである。
     
    さて、自民党総裁選は9月17日告示、29日投開票で実施される。自民党は、いつも我が党は国家・国民に責任を持つ政党だと言っているのだから、駆け引きによる足し算引き算ではなく、政策を提起しあい、①みんなの命と健康を守るためのコロナ感染対策、新たな波を食い止め、収束させる策②日本経済は回復したなどと言ってきたがそんなものウソ、衰退に歯止めをかけ、地方にも将来の可能性を明確にする再建策③コロナ不況で一段と深刻化になっている貧困に対する実効性ある施策の実行④近年顕著な地球温暖化と異常気象に対応する災害対策⑤「デジタル社会」や空疎な「カーボンニュートラル」より、身近な生活課題に取り組み、何よりも⑥安倍一強体制のもとで進行した政治の私物化と腐敗、官僚たちの使命と責任を忘れての忖度と綱紀弛緩にメスを入れ、信頼を取り戻すことだ。

    (略)

  • 14面~15面 フクシマ後の原子力「避難実態見せぬ国・福島県」(高橋宏)

    2000年から毎年、この時期に開催される「じんけんSCHOLA」という市民のための人権大学院がある。ここで私は、福島第一原発事故の翌年から「原発と人権」という講座を担当している。9月18日、第12期の1回目「10年目を迎えた福島第一原発事故・避難者にとっての『復興』とは」を開講した。
     
    講座は基本的に私が講師を務めているが、これまでに多くのゲストスピーカーに支えていただいた。12年の初回では、「熊取6人衆」の小林圭二さん、海老澤徹さん、川野眞治さんが協力してくださった。森松明希子さんをはじめ原発事故の自力避難者の方にもお話ししてもらっている。福島第一原発事故から10年、そして「復興五輪」と銘打った東京五輪が開催された今年、ジャーナリストの青木美希さんがオンライン参加してくださった。
     
    近年は、被災地を訪れることができていないばかりか、被災者に接する機会も少なくなっている私には、避難者の実情を語る術がない。そこで、常に被災地と被災者に寄り添いながら、数々の記事や『地図から消される街』『いないことにされる私たち』などの著書で「今」を伝え続けている青木さんに協力を仰いだところ、快く引き受けてくださった。

    (略)

  • 16面 ピースおおさか開館30年 空襲追悼銘板に101人(矢野宏)

    大阪市中央区の大阪空襲を語り継ぐ平和ミュージアム「大阪国際平和センター(ピースおおさか)」で9月12日、開館30周年を記念する式典があった。大阪空襲死没者を追悼する「刻(とき)の庭」に新たに判明した101人の名前を記した銘板が公開された。  

    (リードのみ)

  • 17面 2025大阪万博・IRカジノ 環境、財政悪化の懸念大(栗原佳子)

    東京五輪に続く国挙げての国際イベントは2025年に大阪で予定される国際万国博覧会だ。大阪府の吉村洋文知事は近く、1年遅れで開催されるドバイに飛び、大阪をPRするという。大阪の会場は大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)。大阪府・市はIR・カジノの誘致も目指し、埋め立て工事が急ピッチで進む。しかし、南海トラフなどの災害や環境汚染、財政負担増なども指摘されており、9月7日には市民団体「夢洲の都市計画変更を考える市民懇談会(夢洲懇談会)」が大阪府庁で記者会見、懸念を表明した。 

    (リードのみ)

  • 18面 基地建設に激戦地土砂 使用「NO」全国議会に(栗原佳子)

    名護市辺野古の新基地建設をめぐり、沖縄戦の激戦地南部の土砂を埋め立てに使用する計画が波紋を呼んでいる。全国の地方議会でも、沖縄戦戦没者の遺骨が混じる土砂を基地建設に充てることは「人道上許されない」として使用中止を求める意見書の採択が相次ぐ。9月15日には大阪市議会が全会一致で意見書を可決した。政令指定都市として初めてのケースとなった。   

    (リードのみ)

  • 19面 映画「くじらびと」 自然との共生問いかけ(栗原佳子)

    インドネシアに銛(もり)一本で巨大なマッコウクジラに対峙する伝統のクジラ漁を続ける村がある。ドキュメンタリー映画「世界でいちばん美しい村」(2017年)でネパール大震災後を生きる人々を描いた石川梵監督が、自然と共にあり、命に感謝し、祈りを捧げる「くじらびと」の姿を追いかけた。   

    (リードのみ)

  • 20面 読者近況 下地毅さん、西田敦さん

    ■ルポ「東尋坊」出版
     
    日本海に切り立つ断崖は国内有数の景勝地。そして「自殺の名所」とも称される。福井県の東尋坊で自殺防止活動を続ける「NGO月光仮面」に密着した長編ルポを新聞記者の下地毅さんが出版した。
     
    断崖をパトロールし、自殺を図りそうな人を見つけるや体を張って止めに入る。住む場所と日々の食事を用意し、さらに行政窓口に同行して生活保護申請の援助に力を尽くす。東尋坊を最終地点として訪れる人は命以外の全てを失っている人がほとんど。「月光仮面」が手掛かりとするのは憲法と生活保護法。命をつないだ人たちが援助者に見守られ、仲間と助け合い生き直す。自立への紆余曲折が描かれる。
     
    コロナ禍が長期化する中、生活困窮者が急増。自殺者数も増加の一途をたどっているという。しかし実は生活保護受給者は増えていない。与党議員による生活保護バッシング、最近ではメンタリストDaigoの生活保護者ヘイト発言が問題になった。そもそも行政自体が様々な理由をつけて申請を拒絶しているのが現実だ。下地さんはそんな行政と「月光仮面」との丁々発止を目の当たりにしてきた。
     
    副題は「生活保護で自殺をとめる」。膨大な実践から導き出された命の記録だ。(緑風出版 2640円 )(栗)

  • 21面 経済ニュースの裏側「情報化の功罪」(羽世田鉱四郎)

    デジタル弱者の筆者。電車やバスに乗った時、ICOCA(Suika)を使い、銀行のキャッシュカードが使える程度で、それ以外はお手上げ。スマホにも不慣れで、健康保険証がデジタル化されたら、とゾッとしています。
     
    新技術 主なものは以下の通り。AR(拡張現実)実在する風景に、バーチャルの視覚情報を重ねて表示します。ポケモンGOがわかりやすいでしょう。GPSを利用したカーナビ案内や観光情報、倉庫の作業などに活用。中国では、AR眼鏡が開発され、機械のメンテナンス、検査工程のチェック、航空機のメンテナンスにも生かされています。また顔を認識するサングラスが、犯罪捜査にも重宝されて……

    (略)

  • 22面 会えてよかった 辻央さん②(上田康平)

    高校進学のあり方に疑問を持って
    いた辻さんに、お父さんが基督教独
    立学園を勧めてくれた。同校は内村
    鑑三の弟子が山形県に開校した学校
    で、問い合わせると島根県江津市に
    ある姉妹校、愛真高校を紹介された。
     
    愛真高校は浅利富士と呼ばれる小
    高い山の麓にある全日制普通科の高
    校。全学年でも100名以下で全寮
    制。信者でなくてもいい。受験勉強
    はしない。自分たちのことは自分た
    ちでと食事作り、菜園、養鶏などの
    労働もする。見学した際、みんな仲
    がよくて、印象が良かった。両親は
    ……

    (略)

  • 23面 落語でラララ 川島雄三(さとう裕)

    今は昔の話。1974(昭和49)年、藤本義一が『鬼の詩』で直木賞を受賞した。主人公は数々の奇矯と珍芸で名をはせた落語家、桂馬喬。翌年、村野鐵太郎監督で映画化される。薄幸で不遇をかこった馬喬は、ひたすら己の芸を探し、高みを目指してもがき苦しむ。その馬喬を、時に飄々と時に鬼気迫る演技で演じたのが、若き日の桂福団治師。脚本を担当したのは、なんと藤本義一。作家が自分の小説のシナリオを担当するのは珍しい。

    (略)

  • 24面 極私的 日本映画興亡史 マキノ省三伝(三谷俊之)

    京都市上京区千本通りは、平安時代には千本通りは朱雀大路と呼ばれ、この国の首都の中心街路であった。平安京が廃れて荒れた地となった。応仁の乱後、戦火から避難していた職人たちが西陣に集まり、明などの新技術も加え、京織物を再興。明治・大正・昭和には西陣京極と呼ばれ、繁栄を極めた。昭和前期には映画館、芝居小屋が軒を連ね、京都有数の大歓楽街だった。ここに「千本座」という小さな芝居小屋があった。明治34(1901)年、母・牧野弥奈から、企画から役者の出演交渉、構成、演出、振り付けまで全てを任されたのが牧野省三だった。後にマキノ省三と称し、「日本映画の父」と呼ばれた。

    (略)

  • 25面 坂崎優子がつぶやく「ネット上の著作権に注意を」

    9月に発足したデジタル庁の事務方トップ、デジタル監に石倉洋子さんが就任しましたが、早々に自身のサイトで使ってはいけない画像を利用していることが発覚しました。サムネイルと呼ばれる記事につけた画像が、写真やイラストなどの画像を販売する「PIXTA」のサンプル画像だったのです。PIXTAの伊藤遼さんがツイッター上で、本人に違反であることを告げる返信をしたことで、広く知られるようになりました。

    (略)

  • 26面~29面 読者からの手紙&メール(文責・矢野宏)

    6年前亡くなった夫
    「軍隊の夢を見てた」

       東大阪市 丸尾幸登代
     来春、あと半年で米寿になります。
     敗戦時に小学6年で旧満州から引き揚げ、その後も生活に追われて学校にも行けませんでした。60歳を過ぎて夜間中学に通いました。
     夫はダイハツに就職し、まもなく召集されて敗戦で帰国。その後はすぐにレッドパージに、息つく間のない苦難の末に1台の古い旋盤機を土台に働き、33歳で結婚へ踏み切りました。私は23歳でした。神武景気、岩戸景気、なべ底不況、所得倍増……いろいろと潜り抜けて、夫は6年前、93歳で亡くなりました。がんの床で目を覚まして蚊の鳴くような小声で、独り言のように「軍隊の夢を見てた……」と言ったのでした。
     楽しい夢を見てほしかったのに、何でこんなにやつれた人にむごい戦争の夢を……。善良な一般市民に重い戦争の苦渋を背負わせ、私の学ぶ権利を奪った国家権力。今もこのことを文にしたためながら涙があふれ出ます。
     コロナ禍の社会、年金暮らしは恵まれていると言われますが、削減される年金におびえるばかりです。毎月5000円を超える新聞代はこたえるようになりましたが、月300円ならばいけそうと思って購読を決めましたので、よろしくお願いします。
     (「大阪民主新報」の佐藤圭子編集長からインタビューを受けた記事が大きく掲載され、それを見ましたと事務所に電話をいただきました。うれしい出会いに感謝です。丸尾さん、これからもお手紙を書いてくださいね)

  • 28面 車いすから思う事「聖火リレーに参加した」(佐藤京子)

    コロナ禍で賛否両論あった東京五輪・パラリンピックが9月5日、閉幕した。パラリンピック開幕前日の8月23日、聖火リレーに参加した。開催には反対だったので、自薦での聖火リレーへのエントリーはしなかった。しかし、パラリンピアンの選手会であるPAJ協会から推薦があり、参加することにした。

    (略)

  • 30面 うもれ火日誌(文責・矢野宏)

    8月7日(土)
     矢野 夜、元教諭の足立須賀さんが大阪市立生野区民センターで主宰する「猪飼野おとな塾」受講。講師は大阪市長に提言書を送った市立木川南小学校の久保敬校長。

  • 31面 9月25日(土)空襲証言DVD試写会 久保校長がうずみ火講座で講演

    ■空襲証言DVD試写会

    空襲体験者の証言DVD「語り継ぐ大阪大空襲」が完成、試写会を9月25日(土)午後6時半から大阪市天王寺区上汐のクレオ大阪中央・研修室で開きます。
     
    当日は、大阪大空襲について説明した後、完成したDVDを上映(30分間)します。空襲体験を語ってくれたのは、生まれて2時間後に左足に大やけどを負った藤原まり子さんら3人。撮影・編集は「ABCリブラ」ディレクターの尾川浩二さんが担当してくれました。
     
    緊急事態宣言下のため、先着30人。資料代1000円。オンラインでの視聴をご希望の方は500円。左のQRコードで読み取るか、インターネットで「うずみ火商店」と検索し、そこから申し込んでください。


    ■久保校長がうずみ火講座で講演

    コロナ禍で中断していた「うずみ火講座」を11月6日(土)に再開します。
     
    講師は大阪市立木川南小学校の久保敬校長で、タイトルは「今、教育を問い直す~『生き合う』社会をめざして」です。
     
    7月号に続き、今月号でインタビュー記事を掲載しましたが、久保校長は大阪市長に提言書を送ったことで、市教委から訓告処分を受けました。
     
    久保校長がどんな思いで提言書を出したのか。今の大阪市の教育に対してどのように考えているのか。理想とする学校教育とは、などについて語っていただきます。参加者からの質問にもお答えいただきます。
     
    当日はコロナ感染防止のため、先着50人。参加希望者はうずみ火事務所にお申し込みください。オンライン視聴も行う予定です。

    【日時】11月6日(土)午後2時~
    【会場】大阪市北区天神橋3丁目のPLP会館4階(JR天満駅から徒歩5分、地下鉄扇町駅から徒歩4分)
    【資料代】1000円、学生・障害者700円、オンライン500円(予定)

  • 32面 落合恵子さん寄稿「雨の中の炎」

    敬愛する経済評論家の内橋克人さんが、9月1日に亡くなった。もう少し、「ここ」に居ていただきたかった。わたしたちと一緒に。
     
    内橋さんが最後に見つめた社会や経済やむろん政治が、こんなにも醜悪で、こんなにも偏ったそれであったことが、なんとも無念であり、悔しく申し訳なくてしかたがない。

    (略)

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