新聞うずみ火 最新号

2023年11月号(NO.217)

  • 1面~3面 水俣病第二次近畿訴訟 国が訴訟 全面解決 またも遠のく(栗原佳子)

    水俣病が公式確認されて今年で67年。未認定患者128人が、国と熊本県、原因企業のチッソに損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁が9月27日、全員を水俣病と認定、約3億5000万円の賠償を命じた。原告は関西などに暮らす熊本、鹿児島両県出身者。居住地域などの線引きによって救済されなかった人たちだ。判決は国の救済策に根本的な見直しを迫ったが、国、熊本県、チッソは控訴。全ての被害者の救済を求める原告の願いは打ち砕かれ、全面解決の道はまたも遠のいた。
     
    「私たちが死ぬのを待っているのでしょうか」。原告の一人、前田芳枝さん(74)=大阪府島本町=は控訴への怒りをにじませた。
    水俣病被害者救済法(特措法)で救済を受けられなかったのは違法などとして大阪、熊本、東京、新潟で係争中の「ノーモア・ミナマタ第2次訴訟」の最初の判決だ。 前田さんは鹿児島県阿久根市出身。物心ついた頃から食卓の主役は魚で、おやつ代わりでもあった。
     
    10歳くらいから手がしびれ、手が震えて字がうまく書けなくなった。中学卒業後、「金の卵」として島本町の金属加工会社に就職したが、まっすぐ歩けなくなり、道で側溝に落ちたり、側壁にぶつかったりした。
     病院をいくつも回り、精神科で脳の検査も受けた。原因はわからず、やっとついた病名は「自律神経失調症」。ビタミン剤と睡眠導入剤が処方された。
     
    20歳で地元の男性と見合い結婚。2人の子どもを授かった。一方、症状はさらに悪化。30代の頃にはほとんど寝たきりになった。
    ……

  • 4面~5面 関東大震災虐殺100年 埼玉・熊谷 自警団ら暴走(栗原佳子)

    1923年9月の関東大震災時、多数の朝鮮人、中国人がデマにより軍や警察、自警団などに殺された。避難者が流入した近県にも流言飛語が広がり、埼玉県北部の熊谷では、暴徒化した自警団らが県外移送中の朝鮮人を襲撃。子どもを含む60人あまりの命を奪った。100年前、犠牲者たちが歩いた街道を、フィールドワークでたどった。
     
    熊谷市郊外の久下(くげ)地区。荒川の土手にアスファルトの一本道が長く延びている。かつては中山道だった。「久下の長土手」と呼ばれたこの道を、大地震3日後の9月4日、約200人の朝鮮人が歩かされていた。大八車を引く人、小さな子どもやお腹の大きな女性もいたという。
     
    「一人の男性が逃げ、あのあたりで荒川に飛び込んだそうです」
     
    案内の「東アジアの平和を考える市民の会」副会長の鈴木正志さんがいう。自警団に追いかけられた朝鮮人男性は、川の中で頭をつるはしで打たれた。
     
    大地震から2日後の9月3日、警察は東京からの避難者や県南の鋳物工場で働く朝鮮人を県外に移送しようとした。ここに差し掛かった人々は前日、蕨を出発し、中山道をひたすら歩かされた。直線距離で50㌔近い。警官もいるにはいたが、護送を委ねられた村々の自警団が、駅伝方式で監視の目を光らせた。
     
    土手から久下村(現熊谷市久下)の集落へ。4、5人の男性が逃げようとして久下神社の境内に追い詰められ、大きな石を投げつけられた。神社近くの医王寺に葬られたが、「日射病で亡くなったことにされた」(鈴木さん)という。

    久下の古刹、東竹院に犠牲者をまつった「関東大震災横死者諸精霊」供養塔があることが、100年目の今年、明らかになったばかりだ。
     
    久下村、佐谷田村(現・同市佐谷田)、熊谷町柳原(現・同市曙町)と自警団は入れ替わるが、朝鮮人は歩きづめ。佐谷田でも1人が殺された。
     
    警察は久下の手前の吹上(現・鴻巣市吹上)で高崎線に乗車させようとしたという。しかし乗客が騒ぎ断念。代わりに小型トラックを手配した。やっと到着した数台に分乗したが、乗れなかった人々は再び歩いた。疲れきった姿を見かねて、柳原の自警団は農家の庭で水や食べ物を提供した。それが最初で最後の休憩らしい休憩だった。
     
    すでに夕刻。自警団は、夜が明けてからの移動を進言したが、警察側は続行を主張した。熊谷町中心部の自警団と交代する境界はその先だった。
     
    JR上越新幹線、高崎線、秩父鉄道の秩父本線が乗り入れる熊谷駅周辺は公的機関も集中する市中心部で、宿場町として栄えた面影が残る。ここが、殺りくの舞台となった。
     
    現在、駅ビルに隣接して踏切がある。100年前、その手前でしばしの休息をした人々を待ち構えていたのが自警団をはじめ、1万人近い群衆だった。日本刀、やり、とび口などの凶器を携え殺気だった人たち。一方は、逃亡を防ぐという理由で数珠つなぎにされ、抵抗すらできない。ここで約30人が殺された。
    ……

  • 6面 群馬の森「朝鮮人追悼碑」 維持求め県を再び提訴(栗原佳子)

    群馬県高崎市の県立公園「群馬の森」にある朝鮮人労働者追悼碑の存続が、再び司法の場で争われることになった。碑を設置した市民団体「『記憶・反省そして友好』の追悼碑を守る会(守る会)」が10月11日、県の撤去命令の取り消しなどを求め、前橋地裁に提訴した。設置更新を不許可とした県との訴訟は昨年、最高裁が上告を棄却、県側勝訴の高裁判決が確定している。

    守る会の前身は「朝鮮人・韓国人強制連行犠牲者追悼碑を建てる会」。県内で強制連行・強制労働の実態を調査した市民らが1998年、追悼碑建立を県議会に請願し、2001年、全会一致で趣旨採択された。04年、当時の小寺弘之知事が都市公園法5条に基づき設置を許可し、「群馬の森」に建立。会は「『記憶 反省 そして友好』の追悼碑を守る会」に改称し、碑を維持管理してきた。
     
    設置は10年ごとに県の更新許可を受ける取り決めで、守る会は14年の期限を前に申請。しかし不許可となり、撤去を通告された。12年4月、碑の前で開いた追悼集会で、参加者が「強制連行」などの文言を用いたことが、許可条件の「政治的行事を行わない」に違反したとされた。
    ……

  • 7面~9面 コソボ紛争後のセルビア 繰り返された他国侵略(粟野仁雄)

    バルカン半島中部のセルビア共和国は旧ユーゴスラビアの一部である。首都はベオグラード。日本での有名人はサッカー全日本代表監督だったイビチャ・オシム監督と、名古屋グランパスで活躍し、監督にもなったドラガン・ストイコビッチだろう。オシム氏は筆者が通信社の記者だった1990年頃、ストイコビッチがいた欧州の強豪レッドスター・ベオグラードを率いて来日した際、ユーゴスラビア大使館で取材したことがある。マルタ・アルゲリッチが絶賛したピアニストのイーヴォ・ポゴレリッチはベオグラード出身のクロアチア人だ。
     
    この地を9月に訪れた。14日、ベオグラードでまず訪れたのが聖サヴォア大聖堂。セルビア正教会の「総本山」で東方正教会の教会として世界一の大きさを誇るが、歴史は浅く1935年建立。高い天井のキリストの絵を見ていると首が痛い。下調べ不足で黄金がちりばめられた地下の礼拝堂は見過ごした。
     
    次に向かったのがコソボ紛争で99年のNATO軍による空爆の跡だ。大きく破壊された二つのビルがメイン通りのクズネ・ミロシュ通りの交差点にそびえる。セルビア南部のコソボ自治区はイスラム系のアルバニア人が多く住み、共和国からの独立を主張しているが、セルビア政府は承認しない。ここが民族発祥の重要な地と考えているからだ。
     
    90年代にコソボで民族紛争が頂点に達し、セルビアのミロシェビッチ政権によるアルバニア人虐殺を問題視した米国のクリントン政権は99年、「人権」を大義名分に、国連の承認なしにNATO軍でセルビアを空爆、ドイツも参加した。
     
    現場には大きな落書きがあった。警備中の若い男性が「いつ、お前たちの軍隊はコソボに帰るのかという意味だ」と教えてくれたが、「私はこれについてコメントすることはできないんです」と慎重だ。
     
    「もっとコソボ戦争の歴史が知りたかったらあっちに行くといいよ」と紹介されたセルビア博物館へ向かう。豪壮な建物は国会議事堂のすぐ横にあり、正午に開くと書かれているが、待てど暮らせど開かずあきらめる。
    ……

  • 10面~11面 岡・早稲田大教授「ガザとはなにか」 「建国」に追われた難民たち(矢野宏)

    パレスチナ・ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが10月7日、イスラエルを奇襲攻撃した。イスラエル側はガザへの報復空爆を強め、地上侵攻によるハマス壊滅を明言している。ハマスはテロリストなのか。現代アラブ文学やパレスチナ問題が専門でガザ地区への渡航経験がある早稲田大の岡真理教授(63)が10月20日、京都大で開かれた緊急学習会「ガザとはなにか」でパレスチナ問題を解説した。           
     
    今ガザで起きていることはすでにジェノサイド(虐殺)です。一人でも多くの人が声を上げることがイスラエルの地上侵攻を止める圧力になる。
     
    日本の主要メディアは、イスラエルとパレスチナの問題を「暴力の連鎖」と伝え、「どっちもどっちだ」と距離を置く。ジェノサイドの「共犯者」になっている。
     
    10月7日以降、急に報道が増えたが、ガザはこれまでにイスラエルから何度も攻撃され、数千人が亡くなっている。今回の奇襲攻撃を理解するには、そこに至る歴史を正確に見なければならない。
     
    イスラエルは「入植型植民地国家」であり、アパルトヘイト(人種隔離と差別の制度)国家だ。
     
    19世紀末、ユダヤ人は反ユダヤ主義にさらされていた。その国に同化しても血の問題にすり替えられて迫害されてきた。解放されるにはユダヤ人の国家を作らねばならないと考え、パレスチナへの入植活動を始める。「パレスチナは神がユダヤ人に与えた約束の土地である」と。
     
    入植とは、もともと暮らしていたパレスチナ人の土地を奪うこと。欧州の植民地主義であり、アラブ人への人種差別が根底にある。アフリカのウガンダでの建国案もあったが、各国のユダヤ人の支持を集めるため、ユダヤ教の聖地エルサレムがあるパレスチナでの建国を目指した。
     
    ナチス・ドイツのホロコーストで600万人が犠牲になったが、生き延びたユダヤ人難民が欧州に25万人いた。1947年に国連総会でパレスチナ分割決議が可決され、翌48年にイスラエル建国が宣言。第1次中東戦争で圧倒し、分割決議を超える領土を手にする。多くのパレスチナ人が暴力的に故郷を追われた。その場にいると殺される。だから逃げた。国境を超え、難民となって帰れなくなっている。
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  • 12面~13面 再びウクライナへ・ポーランド編 放浪のユダヤ人の悲劇(西谷文和)

    10月2日、関空からドイツ・ミュンヘンへ飛ぶ。飛行機はまず伊豆半島上空へ、そこから北上し北極圏からグリーンランド、ヘルシンキを経てドイツ。なぜ? それはウクライナ戦争が始まり、全ての飛行機がロシア上空を飛べなくなったから。つまり日本からのヨーロッパ便はかなりの大回り、2時間くらい「余分な時間」をかけて到着する。

    ミュンヘンで入国審査をすませ、ポーランド・ワルシャワ。ワルシャワ・ショパン空港に着けば「シェンゲン協定」窓口からすんなりと外へ。そう、ポーランドもEUの一員なので、いったんEUのどこかに入国すると、「国内旅行」扱いになって、自由に移動できるのだ。ちなみにショパンはワルシャワ生まれだ。
     
    ワルシャワの地下鉄で「ヘトマン・ホテル」にチェックイン。ちなみに地下鉄は20分乗車券、45分乗車券など時間制で、その間はバスや路面電車も含めて乗り放題。20分が4ズロチ=約160円。例えば尼崎から梅田にJRで出て、地下鉄御堂筋線で難波、20分以内に南海に乗り換えることができれば、関空まで行ける。そんな感じ。宿泊したホテルは「ヘトマン」を名乗っている。ポーランドでは軍の司令官という意味で、ウクライナではコサック部隊の長に当たる。今回のウクライナ反転攻勢、その最激戦地は原発のあるザポリージャで、歴史的には「ザポリージャ・コサック」がこの町を支配していた。古くはモンゴルから攻めてきた騎馬民族、中・近世では侵攻するロシア帝国軍などから村を守ってきたコサック軍の発祥地が、現在も戦火にまみれているのだ。
     
    時差ボケながらワルシャワ旧市街の「ポーリー博物館」へ。流浪の民ユダヤがパレスチナ、エジプトの地を出て、迫害の末に流れ着いたのはポーランド。「ポーリー」とはユダヤの言葉で「ここで休みなさい」という意味。博物館には左にポーランド、右にリトアニア公国のタペストリーが飾ってある。この地は16、17世紀にかけて「ポーランド・リトアニア大公国」としてヨーロッパ最大の国家だった。
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  • 14面~15面 ヤマケンのどないなっとんねん バクチと虚栄で大阪終焉(山本健治)

    国鉄民営化に伴ってそれまでの累積赤字を減らすためとして売却された大阪駅北側の旧梅田貨物駅跡地再開発事業、いわゆる「うめきた再開発」が進められて目を引くようなビルや施設の完成のたびにメディア発表され、在阪メディアがこれでもかと言わんばかりに取り上げてきた。
     
    この再開発事業は1980年代半ば、当時の中曽根康弘首相が財界のリーダー土光敏夫・東芝会長を引きずり出して進めた行政改革と称する国鉄解体・民営化の後処理の一つである。民間の発想で改革が進むと強行されてきたが、改悪の連続、いまその最終段階として各地で路線廃止が進められようとしていて、住民から反対の声が上がっていることは知られている通りである。その東芝がいまや解体寸前にあるのだから皮肉なもの。
     
    このうめきた再開発は大阪の「新知的創造拠点」「新産業創出拠点」をつくるということで、オフィスビルや商業ビル、高層マンションが建設されてきた。1期がほぼ終わって「グランフロント大阪」「うめきた広場」などがつくられた。そのすぐそばの「うずみ火」編集室のあるビルの一角は昭和の香りを残して異彩を放っているが、辺りは確かに一変した。
     
    その変貌を喜ぶメディアは大阪経済の復活と今後の発展の可能性の象徴のように報道するが、どんな新たな知的なものが産み出されているというのか、どんな新しい産業が創り出されているというのか。

    大阪の経済・産業・企業が日々に衰退している現実を知る者にとっては、現状からかけ離れた虚栄の大阪バブルの象徴にしかみえない。大阪駅から「うめきたフロント」に向かうと入口にパナソニックのショールームがあるが、かつてのようにこれでもかというくらいに並べられていた電気製品はない。そのパナソニックの門真の本社北側に本社工場があったが、いまはコストコである。
     
    私は子どもの頃、守口に住んでいたから、門真の松下電器産業、守口の三洋電機は郷土の誇りとされ、同級生の何人もが就職したが、三洋は消え、本社ビルは守口市役所になり、松下=パナソニックはかつての輝きを失っている。松下、三洋と並んで大阪を代表する企業だったシャープは周知の通り。大阪は製薬の中心だったが、武田は大阪から離れ、クスリの町=道修町も昔ほどではない。吉村知事が得意顔で宣伝した大阪ワクチンはどうなった。イソジンはお笑い。悲しいが、いま東大阪も八尾も廃業が増えている。製造業の空洞化と高齢化が原因である。いま大切なことは現実を見つめ、地道に大阪の復活策を進めることだ。
     
    ところが、この現実からかけ離れて、30年前のバブルと同じことが繰り返されている。いま「うめきた再開発」2期工事が進められて、また超高層ビルが建設されているのだが、そのうちの46階建て超高層マンションを手がけた積水ハウスが最上階の分譲価格を発表した。広さ305平方㍍で25億円、1平方㍍約820万円、「次代の王宮」とのことで、大阪で売り出された中で最高価格だ。
    ……

  • 16面~17面 フクシマ後の原子力 核のごみが招く住民分断(高橋宏)

    原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定をめぐって、第1段階である文献調査の受け入れ促進の請願を長崎県対馬市議会が採択したことに対し、比田勝尚喜(ひたかつ・なおき)市長は9月27日、「市民の合意形成が不十分だ」として調査に応募しない意向を表明した。対馬市では今年に入り、地元の建設業界や商工会などが「地域振興の切り札」として受け入れの動きを本格化させていた。
     
    対馬市は、1960年に約7万人だった人口が現在は約2万8000人。基幹産業である漁業や観光業を取り巻く状況も厳しさを増している。9月議会には、「調査受け入れ」や「受け入れ検討」を求める請願が2件、「受け入れ反対」などの請願が6件出されていた。議長を除く全市議18人で採決した結果、賛成10、反対8で受け入れを求める請願を採択し、反対の請願は全て不採択とした。
     
    文献調査を受け入れれば、国から最大20億円が交付される。調査受け入れを求める人々は、交付金をはじめ国が様々な要望をかなえてくれることを期待してのことだった。
     
    実は、核のごみと対馬市とのかかわりは長い。80年代、動力炉・核燃料開発事業団(当時)が行った地質調査で、市の一部が「処分地として良好」と評価された。そして2006年頃から、最終処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)が説明会を複数回開いていた。そのような動きを受けて市議会は07年、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場誘致に反対する決議」を賛成多数で可決した。ところが、この16年間で進んだ過疎化などによって、少なくとも市議会は方針転換をしたことになる。
    ……

  • 18面 大阪市「木の切る改革」あいまいな選定基準(矢野宏)

    大阪市の「木を切る改革」が止まらない。市は「公園樹・街路樹の安全対策事業」で2023年度には2661本の伐採・撤去を計画している。「大阪市の街路樹撤去を考える会」(渡辺美里代表)が樹木医に鑑定を依頼したところ、健全な樹木が多数含まれていることがわかった。渡辺さんらは事業の見直しを求め、オンライン署名を募っている。              
     
    市は約55億円をかけて、市民の安全・安心に影響を与えると判断した公園樹・街路樹1万9000本を伐採・撤去する事業を進めている(18年度~24年度)。だが、伐採基準があいまいで住民説明会も開かれないため、渡辺さんらは、一般社団法人「地域緑花技術普及協会」代表理事で樹木医、農学博士の細野哲央さんに鑑定を依頼した。
     
    調査は9月15日に実施され、対象は市が伐採を決めた樹木の中から無作為に抽出した。
     
    市が伐採する公園樹を選定する基準は「健全度」「樹種」「植栽環境等」の3点。細野さんが扇町公園(北区)23本、毛馬桜之宮公園(都島区)4本、北大江公園(中央区)5本、西宮原南北線(淀川区)4本の計36本を調べた結果、撤去すべきと判断したのは6本だった。
     
    他の樹木は「現在・将来とも市民の安全・安心に支障をきたすとは考えられず、維持管理上の課題もとくに見当たらず撤去する理由が全く不明」と市の事業に厳しい意見をつけた。
     
    さらに、ヒマラヤスギは根が浅く、倒木の危険性があるからすべて伐採するという市の方針については、「健全な樹木を撤去するのは国内外に例がない。科学的合理性を欠くものであり、都市の緑に多様性が求められる世界的潮流にも逆行するものである」と指摘した。
     
    扇町公園(7万3000平方㍍)では、ケヤキやサルスベリなど56本が伐採されることになっている。。細野さんが調査した23本のうち「撤去妥当」は2本だけ。それ以外は「せん定などすれば伐採の必要なし」と判断した。
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  • 19面 琉球遺骨返還訴訟 棄却も「故郷に返すべき」(栗原佳子)

    戦前、旧京都帝国大(現京都大)医学部の人類学者が琉球諸島の墓から多数の遺骨を持ち出し、子孫らが京大に遺骨の返還を求めた訴訟で、原告の請求を棄却した9月22日の大阪高裁判決が確定した。高裁判決が「持ち出された先住民の遺骨はふるさとに帰すべき」と付言したことなどを踏まえ、解決へ道を開くものとして、原告側が上告を見送った。

    遺骨は金関武夫氏(1987~1933)、三宅宗悦氏(1905~1944)が研究目的で、沖縄県今帰仁村のの「百按司墓(むむじゃなばか)」などから持ち出した。百按司墓には統一王朝をたてた「第一尚氏」時代の貴族らが葬られている。
     
    原告団長で龍谷大学教授の松島泰勝さんは2017年、琉球新報の報道で遺骨が京大に保管されていると知った。遺骨の有無や保管状況を京大に何度も尋ねたが、誠意ある対応はなかった。18年、第一尚氏の子孫ら5人で、京大が保管する26体の遺骨返還を求め提訴した。
     
    京大側は、当時の沖縄県庁や県警察部長を通して「正当な手続きを経て『人骨』を収集した」と主張、原告側は「警察を含む行政、教育関係の上層部の大半を日本人が占め、日本人と琉球人の不平等な関係を利用して盗骨した」と反論した。
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  • 20面 釜ヶ崎フィールドワーク 今も変わらぬ情の街(矢野宏)

    日雇い労働者の街として知られる大阪市西成区の「あいりん地区」(通称・釜ヶ崎)。かつて日本経済を支える労働力の供給地だったが、高齢化で激減。労働者向け簡易宿泊所(ドヤ)も生活保護受給者を受け入れるアパートなどに転換している。長年、日雇い労働者として暮らしてきた水野阿修羅さんが案内するフィールドワークが10月14日に行われ、25人が釜ヶ崎の歴史を学びつつ現地を歩いた。
            
    JR新今宮駅の北側に白亜の巨大ホテルがそびえ立つ。2022年4月に開業した星野リゾートの「OMO7」と対照的に、線路を挟んで南側に広がる釜ヶ崎を象徴するのが「あいりん総合センター」(13階)。1970年に開設され、職業安定所や病院、市営住宅を併設。ピーク時には日雇い労働者2万人が利用したという。「1階が通称「寄せ場」で、日雇い労働者は早朝5時台に集まり、業者から仕事をあっせんしてもらって建設現場などに出向いていく。最近では労働者の数が足りず業者の方が困っています」
    ……

  • 21面 読者近況(矢野宏)

    「夜間中学はいま」冊子に

    【大阪】関西の優れた報道活動に贈られる「第27回坂田記念ジャーナリズム賞」を受賞した「夜間中学はいま」が、関西の夜間中学校を紹介した続編を含めて冊子になった。
     
    産経新聞大阪本社「夜間中学取材班」が2019年3月から連載。戦争や貧困などで学ぶ機会を奪われた人たちのために設けられた夜間中学は外国籍生徒が大半を占める中で、急増している生徒層があるという。不登校などで教育を十分に受けられないまま中学校を形式的に卒業した人たちだ。背景にあるのは不登校の小中学生の急増。連載を担当した伐栗恵子記者はこう書いている。

    〈誰もが学齢期に義務教育を受けることができれば、夜間中学は必要ないが、現実はそうではない。本来「あってはならない学校」だが、「なくてはならない学校」なのだ〉
     
    A4判オールカラー140ページ。1800円(税込み、送料別途200円)。
     
    夜間中学を必要とする人にも読んでもらいたいと、漢字すべてにふりがなをつけた。
     
    申し込みはファックス(06・6633・2709)で「夜間中学はいま」係へ。

    「差別犯罪」を問う

    【大阪】毎日新聞大阪本社記者の鵜塚健さんが後輩記者の後藤由耶さんと共著で「ヘイトクライムとは何か~連鎖する民族差別犯罪」(角川新書・1034円)を出版した。
     
    ヘイトクライムは特定の属性の人たちへの差別意識を動機にした犯罪のこと。
     
    取材の原点は2013年に大阪・鶴橋で起きたヘイトデモ。10年後、ウトロ放火事件やコリア国際学園事件が相次ぎ、鵜塚さんは「メディアが伝えてこなかった不作為も差別の悪化に加担しているのではないか」と考え、現場取材を始めた。
     
    関東大震災から100年。朝鮮人らを標的にした大量虐殺の事実から目を背ける政府や東京都知事の姿勢が、過激化するヘイトクライムの背景の一つと指摘している。

    「ヒロポンと特攻」

    【大阪】特攻隊員が最後に食べる覚醒剤入りチョコレートを包装していたという女学生の戦争体験を聞いた元教員の相可文代さんが「ヒロポンと特攻~太平洋戦争の日本軍」を論創社から出版した。定価2200円。
     
    相可さんは、学徒動員で覚醒剤入りチョコレートを包んだという女学生の体験と、ヒロポンや特攻に関する資料をまとめて冊子にした。調査を進める中で、特攻兵にヒロポンを打った元海軍軍医、出撃前に打たれた元特攻兵の貴重な証言をつかむ。
     
    特攻で犠牲になった若者は約6400人。相可さんは「特攻は効果的な戦いではなく、『玉砕』することで国民を鼓舞し、戦争を継続するための手段でしかなかった」と看破する。なぜ、特攻のような残酷なことをさせたのか、若者にそんなことを強いた日本とはどんな国だったのか、近現代史の暗部に斬り込んだ一冊だ。     

  • 22面 経済ニュースの裏側 教育統制(羽世田鉱四郎)

    義務教育では、すでに国の意向が浸透しています。その象徴は職員会議。教育の実践者である教員の意見は反映されず、上意下達の場になっています。大学も同様で、その背景と現実を探っていきます。
     
    国立大学の法人化 2004年から国立大学の法人化が始まりました。01年4月に小泉政権が発足。国政に市場原理主義を取り入れ、大失敗した英国サッチャー政権を真似て、大胆な行財政改革に取り組みました。国立大学の主な収支構造は、人件費も含めた「運営交付金」と「研究資金」です。その運営交付金を毎年1%削減し、11年から12年間で計12%カット。その結果、非正規の教員(特任教員、給与は専任の半額程度、期末手当なし、3~5年の有期など)が増加。研究資金も外部(国や企業)への依存度が高まり、産学協同や軍事研究などの比重が増えました。競争や成果主義、実用性などが重視され、科学技術以外の分野や、基礎学問の系統は、冷遇されたままです。
     
    博士課程への進学率も減少傾向にあり、研究のための時間や予算の確保など、環境も悪化しています。直近の博士課程の在学者は、米国(9・2万人)、中国(6・6万人)、ドイツ(2・6万人)に比べ、1・5万人と大きく見劣りしています。
     
    大学自治の崩壊 学長に独裁的な権力を持たせ、教授会の権限を大幅に縮小し、実質的には学部制度まで解体に。その象徴が学長の選考。教員など構成員の意思を無視した結果、全国の大学でトラブルが多発しています。また文科省から、多くの人材が幹部になるなど常態化しており、極端な例では、文科省の事務次官が山形大学の学長に強引に居座った例もあります。悪しき傾向は蔓延し、私立大学における経営者の私物化にも拍車をかけました。国家権力の介入は、大学だけに留まりません。日本学術会議での新規会員の任命拒否、理科学研究所での雇い止め(有期雇用10年超えで12・1%が雇い止め)など様々な問題が起きました。
    ……

  • 23面 会えてよかった 久高政治さん⑥ 石川・宮森630会会長に(上田康平)

    ジェット機事件の原稿、あらすじ
    を久高さんが書いて、浦添の劇団指
    導者に脚本をつくってもらう。当初、
    劇団は浦添から応援を受け、機材を
    持ち込んでもらい、年2回、公演。
    学校の平和学習でも上演している。
     
    最近創った劇はジェット機事件で
    からだの50%に火傷を負い、後遺症
    で亡くなった新垣晃さんの劇。劇団
    の子どもたちを晃さんのお母さん、
    ハルさんのところにも連れていった。
     
    キッズシアター発足10年になる2
    022年7月の石川会館での公演で
    は講師不在の中、高校生メンバーが
    脚本、演出、ダンス振付を行い、舞
    台創りに挑戦したという。
     
    11年6月、630会結成後、初め
    ての慰霊祭を630会主催で行った。
     
    元々の遺族会が33年忌で解散して
    いたためであるが、その後、慰霊祭
    は遺族会じゃないかなと遺族会を立
    ち上げ、5、6名の遺
    族が参加。懇談会を開
    いて慰霊祭の打ち合わ
    せをし、両者の共催で
    行うようになった。

    NPO法人化を実現さ
    せた。NPO法人は知
    事の認可を受けるもの
    で、社会的信頼を獲得
    するとともに、一方、責任を果たす
    という表明。財政的に得するという
    ことはないが、社会的評価のために
    取組んだという。
    ……

  • 24面 日本映画興亡史 第4章千本組異聞 京の街に「ガリコ」登場(三谷俊之)

    米騒動が終わり、第1次世界大戦も終結した大正7(1918)年夏。大正デモクラシーが花開く。米騒動は、民衆が自らの力で商人や資産家を震撼させ、寺内正毅内閣を退陣に追い込んだ。社会は工業の発展と都市への人口集中が進み、生活の洋風化が弾んだ。服装が和服から洋服へと転換され、背広を制服とするサラリーマンが登場。女性が職を持って働くことは、女らしくないとされたが、ようやく「家制度」の桎梏から抜け出てきた。わが国で最初の女性による女性のための文芸誌『青鞜』の平塚雷鳥の下には野上弥生子や与謝野晶子が集い、続いて神近市子や伊藤野枝も加わる。
     
    そんな時代、京の街に「ガリコ」と呼ばれる存在があった。不良少年の俗語で、カフェや映画館を脅し、用心棒代と称して小銭を巻き上げるという輩を指した。時代のファッションのようなもので、そのガリコ仲間に、10代のマキノ雅弘(当時は正博)や後年、大映社長となる永田雅一。役者や映画製作をし、テレビ創生期に日本電波映画を設立し「琴姫七変化」「柔」などをヒットさせた松本常保もいた。
    ……

  • 25面 坂崎優子がつぶやく 内向き・安易で失う力

    「フェアトレード」という言葉を知っていますか。その意味はわかるでしょうか。
     
    電通が毎年調査している「SDGsに関する生活者調査」の第6回が、今年5月に公開されました。それによると「フェアトレード」の認知度は64・4%と今は3人に1人が言葉を知っています。一方、理解度はというと、13・0%とまだ低いままです。
     
    フェアトレードとは公平な貿易のこと。チョコレートやコーヒーなど、その原料になる農作物は開発途上国で作られていることが多く、価格を抑えるために、立場の弱い生産者の労働環境や生活水準が二の次になっている現状があります。そうした状況を正すため、原料や製品を適正な価格で継続的に購入し、途上国の生産者の自立を目指す仕組みがフェアトレードです。フェアトレード・ジャパンはそれを推進する団体で、設定した基準を守る製品を認証し、フェアトレードを広める活動も行っています。
     
    先日、フェアトレード・ジャパン30周年特別セミナーに参加しました。「気候変動・人権問題で大きく動く世界の最新動向・消費者とフェアトレードの未来」と題して、一般社団法人エシカル協会代表理事の末吉里花さんと、オウルズコンサルティンググループ代表取締役CEOの羽生田慶介さんによるパネルディスカッションがありました。
     
    その中で最も印象的だったのは、羽生田さんの日本の企業と人権意識の話でした。羽生田さんは企業のアドバイザーとしても活動されていますが、日本企業は人権感覚がすこぶる鈍いそうです。そもそも何がダメなのかもわかっていないのだとか。
    ……

  • 26面~29面 読者からのお手紙&メール(文責・矢野宏)

    「核のゴミ」処分地
    対馬市が調査拒否

      名古屋市緑区 落合静香
     
    お久しぶりです。なかなか良いニュースがなく、投稿する気になりませんでしたが、うれしいニュースがあったので、お手紙します。長崎県対馬市が「核ごみ」の処分地調査を拒否したことです。
     
    私は「ツシマヤマネコを守る会」の会員です。対馬市には行ったことはないのですが、会報に掲載されたツシマヤマネコの観察や育成環境の改善などを通して、対馬市には親近感を持っています。島独自の植物などの自然や朝鮮半島に近いため大陸との交流地であることなど、魅力がいっぱいです。
     
    日本の国土をこれ以上放射性物質で汚すことはやめてほしいです。原発を稼働させただけで、排水にはトリチウムが出るのですね。温排水が出て、近くの生物の性決定に影響があるという報告を読んだことがあります。さらに悪いことは、日本の処理水は燃料デブリなどに汚染された水です。このような国は日本だけです。今までの東電の原発に対する対応をみていると、本当に処理できているのか疑問符がつきます。
     
    また、フランスの再処理施設のトリチウムの排出量はケタ違いで驚きました。日本政府は追随するつもりなのですね。とても恐ろしい未来です。
     
    これからも「新聞うずみ火」の記事で情報の提供をお願いします。原発を稼働させない未来を願っています。
     
    (「核のごみ」の処分地選定への第1段階にあたる「文献調査」を受け入れると、20億円の交付金が支払われるとあって対馬市議会は受け入れを採択しましたが、調査に応じるかどうかは市長判断。比田勝市長が調査を受け入れない意向を表明したのです。まさしく朗報でしたね)
    ……

  • 27面 車イスから思う事 「犬はダメ」と入店拒否(佐藤京子)

    久しぶりに入店拒否された。介助犬イムア君を連れて断られたのは初めてだ。勉強会後の懇親会会場として見つけてくれた店。車イスでの入店はOKだったが、「犬はダメ」ということらしい。
     
    幹事さんが店側と交渉するとたいていの場合は拒否される。今回は「車イスはいいけど」と言う。何で客が店舗にお許しを願うのだろう。それに、幹事さんは介助犬について詳しい知識を持っていない。それで説明しても、介助犬の存在すら知らない店側が警戒するのは当たり前かもしれない。飼い主である自分でも、パンフレットなどを見せながら説明するのだが、それでも理解してもらうには一苦労する。
     
    「犬の毛が舞う」「アレルギーの人がいる」「犬嫌いの人がいる」が入店拒否の三大理由だ。確かに犬の抜け毛は止められない。アレルギーのある人によっては亡くなる原因となるかもしれない。犬嫌いな人にも理由があってのことだろう。
     
    なぜ、こうした言い訳が出てくるのか。ぶっちゃけた話、犬を不潔と思うからだ。一番困るのは、犬が店内で粗相したらどうなるのかということだろう。
     
    「身体障害者補助犬法」は障害者の社会参加を促進させるため、2002年10月に施行された。「補助犬を連れている障害者と補助犬を受け入れなくてはいけない」と定められているが、違反しても罰則はない。この法律を作るとき、当事者らが「罰則を付けなくても良い」との発言があったそうだ。罰則を付けて強制するより、弱者を受け入れる世の中であってほしいとの願いだったから。 法律ができて23年過ぎても、街を歩く補助犬が増えたわけでもなく、実働する補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)は1000頭を切っているのが現実だ。
     
    訓練事業者さんは、質の低い補助犬を出さないように尽力している。ユーザーはできる限り補助犬を清潔にするなど良い状態を保っている。それゆえ、「犬だから」と入店拒否されると、ガッカリするというか、へこんでしまう。一般の人は想像しにくいだろうが、ユーザーと補助犬の絆は強い。
     
    (アテネパラリンピック
           銀メダリスト 佐藤京子)

  • 28面 絵本の扉「かんけり」(遠田博美)

    作者の石川えりこさんは、65歳の私より2学年年上。小学校時代の遊びと言えば、缶けりやおにごっこ、かくれんぼ、ゴムとびの世代です。
     
    絵本の主人公ちえちゃんは小学4年生。同じクラスのりえちゃんと放課後に広場に集まり、6年生のしん君や仲間7人でかんけりを始める。おにが30数える間に隠れ、捕まったら、捕まっていない人がおにより先にかんを蹴ってみんなを助ける。
     
    ちえちゃんは缶を蹴るのが怖くて、まだ誰も助けたことがない。一方、りえちゃんは元気で積極的な子。自信たっぷりにちえちゃんを物置に連れて隠れる。その間、おにはどんどん仲間を見つけていく。足の速いしんちゃんも捕まり、りえちゃんとちえちゃんだけが残る。気の弱いちえちゃんはりえちゃんの横でドキドキするばかり。りえちゃんがみんなを助けるべく物置から飛び出す。「わたしが捕まったらちえちゃん、みんなを助けてね」と言い残して。
     
    真っ暗な物置の中で聞こえて来たのは、「りえちゃん、みっけ」というおにの声……。りえちゃんの言葉が、ちえちゃんの頭の中をグルグル回る。彼女は、教室でもよく自分を助けてくれる。物置からのぞくと、りえちゃんが小さく手を振って助けを求めているのがわかった。
     
    「よし!」。ちえちゃんは飛び出す。そして、ついに缶を蹴って捕まったみんなを助ける。その場面が、グン!グン!とページをめくるごとに見開きに続けて描かれていく。「わたしが…」「わたしが、」「かんを」「ける!」この四つの言葉を力強くズームアップで描く石川さんの画力に思わず読み手も力が入りる。
     
    飛び上がっていく缶を見上げるちえちゃんの顔は自信に満ちています。最後のページは、元気よく教室で手を挙げるちえちゃんが描かれています。
     
    小さい頃から鈍くさかった私は、ちえちゃんの気持ちがよくわかります。読みながら、鼻の奥がツンとなり、一歩を踏み出す気持ちを忘れずにと思わせる絵本です。
     
    (元小学校教諭 遠田博美)

  • 30面 平和学習を支えるために 空襲証言 第3弾制作へ(矢野宏)

    空襲被害者の「記憶」を「記録」に。新聞うずみ火では大阪大空襲を体験した証言を小中高校での平和学習に役立ててもらうため、証言DVD「語り継ぐ大阪大空襲」の第3弾を制作します。インターネットを通じて支援を呼びかけるクラウドファンディングに再度、挑戦するとともに、ネット以外でご協力いただける方を募っています。
     
    支援コースは、これまで同様、①3000円コース②5000円コース③1万円コース④3万円コースで、それぞれの返礼が決め、次号でご紹介します。
     
    ネット以外の振込方法は以下の通り。

    ①ゆうちょ銀行
    ・店名(店番)四〇八
    ・普通 記号14030
    ・番号22963181
    ②郵便振替口座
     ・口座記号番号00920-9-173051
     
    郵便局に備え付けの振込用紙に、コース名、郵便番号、住所、氏名、電話番号をご記入の上、振り込んでください。
     
    加入者名はいずれも「平和学習を支える会」です。
     
    物価高で大変な折、ご無理のない範囲でお力添えをお願いします。

  • 30面 編集後記(矢野宏)

    開幕が危ぶまれている大阪万博の会場と同じ、大阪湾の人工島・夢洲に計画されている大阪IR・カジノで、大阪府・市が、事業者の大阪IR株式会社と実施協定を結んだ。カジノ開業までの工程などを定めたもので、従来、2029年秋~冬の開業を目指していたが、30年秋ごろに先延ばしとなった。「国の整備計画認定が半年ほど遅れたから」との説明だが、夢洲の地盤対策などで、さらに1~2年遅れる可能性もあるという。何と甘い見通しか。▼最大の問題が、事業者側が違約金なしで一方的に事業から撤退できる「解除権」を3年間延長して26年9月まで認めたこと。10月8日に生野区民センターで開かれた「夢洲IR・カジノ公聴会」で桜田照雄・阪南大教授が説明していたが、事業者はいつでも逃げ出せるのだという。事業者はMGMとオリックス連合だけなので、府・市にすれば逃げられては困る。土壌汚染などの対策費に788億円を公費投入したように、何とか引きとめるために最大限の優遇措置を取ることになるだろうと。▼大阪カジノは当初、世界の金持ちをターゲットにしていたが、中国国内の賭博規制強化で中国の富裕層は消えた。狙うは国内客。開業は7年後だから、今、携帯でゲームに熱中している児童・生徒たちだ。夢洲には6400台のスロットマシンが並び、パチンコや賭けゲームになじんだ日本のギャンブラーを呼び込むための賭博場となる。市民が泣き、笑うのは事業者とゼネコン、推進した維新か。あかんものはあかんと声を上げ続けるしかない。 (矢)

  • 31面 うもれ火日誌(矢野宏)

    9月7日(木)
     矢野、栗原 夜、大阪市北区の国労会館で開かれた「どないする大阪の未来ネット」主催の「夢洲万博を考える討論集会」を取材。
    9月9日(土)
     矢野 午前、天満天神繁昌亭で行われた桂花団治さんの独演会「第9回花団治の会」。花団治さんが大阪大空襲を題材にした「じぃじの桜」を初披露。午後、大阪ミナミでの打ち上げで、日本酒をぐいぐいと……。
     栗原 群馬県藤岡市の成道寺であった関東大震災虐殺犠牲者の慰霊祭を取材。
    9月10日(日)
     矢野 朝、左足のかかと上辺りに激痛が……歩けない。
     栗原 午後、大阪・KCC会館で開かれた集会「植民地主義とジェンダーを問う 関東大震災朝鮮人中国人虐殺100年に抗して」へ。
    9月11日(月)
     矢野 午前、自宅近くの整形外科で検査するも原因不明。後日、痛風とわかる。
    9月13日(水)
     栗原 午後、大阪・シアターセブンで「燃えあがる女性記者たち」の共同監督、リントゥ・トーマスさんとスシュミト・ゴーシュさんをインタビュー。
    9月16日(土)
     午後、大阪市生野区民センターで「うずみ火講座」。元大阪日日新聞記者の木下功さんが「迷走する夢洲イベント『万博とIR・カジノ』と題して講演。二次会の最中、入院中だった塚崎昌之さんの妻、大田季子さんからメッセージが入る。「亡くなりました」
    9月20日(水)
     矢野、栗原 午前、大阪府吹田市の「千里会館まほろば」で営まれた塚崎さんの告別式に参列。無宗教で営まれ、お経の代わりに演奏された「イムジンガン」に涙が……。
     午後、茶円敏彦さんが新聞の宛名シール貼り。
    9月22日(金)
     栗原 昼過ぎ、新聞うずみ火のゲラを出した後、大阪弁護士会館へ。琉球遺骨訴訟高裁判決の報告集会を取材。
     午後、石田冨美枝さん、柳田充啓さんが新聞の折り込みチラシのセット作業に。
    9月25日(月)
     矢野 昼過ぎ、来社した友井健二さんと「第27回平和を訴えるコンサート」の打ち合わせ。講演後に歌わせてもらうことに。午後、新聞うずみ火10月号が届く。長谷川伸治さん、大村和子さん、工藤孝志さん、康乗真一さん、樋口元義さんがお手伝いに。郵便局の回収に何とか間に合う。
    9月26日(火)
     矢野、栗原 夜、季節料理「川上」が50周年感謝祭へ。先代女将の後を引き継いだ西森美智子さんの労をねぎらう。
    9月27日(水)
     午後、うずみ火事務所で「茶話会」。取材の裏話の後、参加者の近況報告。
    9月28日(木)
     矢野 午後、来社したJR西日本労働組合書記長の幸義晴さんと10月25日の「平和集会」での講演打ち合わせ。
    9月29日(金)
     夜、弁護士の定岡由紀子さんを囲んでの「憲法BAR」。テーマは死刑問題について=写真。
    9月30日(土)
     矢野 夜、豊中市立文化芸術センターで開かれた「森友学園問題を考える会」主催の市民集会「なんとかしたい!壊れ続ける政治と社会」取材。
     栗原 午前、埼玉県熊谷市で関東大震災時の熊谷で起きた朝鮮人虐殺の現場を歩くフィールドワークに参加。三鷹市で開かれた関東大震災前年の中津川朝鮮人虐殺事件の学習会を経て帰阪。
    10月1日(日)
     栗原 午後、大阪市北区の国労会館へ。埼玉県の関東大震災時の朝鮮人虐殺の調査研究を続ける関原正裕さんの講演会。
    10月7日(土)
     矢野 午後、「15年戦争研究会」主催の「豊中空襲フィールドワーク」に参加。人権平和センター豊中の平和展示室、桜塚高校などを見学。
    10月8日(日)
     矢野 午後、大阪市生野区民センターで開かれた「夢洲IR・カジノ公聴会」。大阪府市はIR事業者と実施協定を締結したが、事業者が撤退できる「解除権」が3年間延長されるなど問題山積。

  • 32面 うずみ火講座 11月3日午前2時半~前大阪市議の川嶋さん「大阪万博・カジノの真実」(矢野宏)

    夢洲カジノをめぐり、大阪府・市が事業者と実施協定を結びました。最大の問題は、違約金なしで事業から撤退できる「解除権」を3年間延長したこと。事業者を引き留めるための優遇措置で、今後、ますますの公金投入が危惧されます。
     
    次回の「うずみ火講座」は11月3日(金・祝)、大阪市会でカジノ計画のずさんさを追及した前大阪市議の川嶋広稔さんを講師に招き、大阪市立総合生涯学習センターで開催します。演題は「とことん真面目に万博・カジノの『真実』を語る」
     
    川嶋さんは2007年4月~23年4月まで大阪市議をつとめ、22年6月に結成された「「NO!大阪IR・カジノ」の呼びかけ人の一人。「大阪の成長をIRに託すべきではない」と訴え、大阪市会で維新政治と対峙してきた自民党市議団の論客。
     
    当日は夢洲で開幕が危ぶまれている万博問題や維新政治の「真実」についても語ってもらいます。

    【日時】11月3日(金・祝)午後2時半~4時半(途中休憩あり)
    【会場】大阪市立総合生涯学習センター第2研修室(大阪駅前第2ビル6階)
    【資料代】読者1000円

  • 32面 12月は東京・埼玉・大阪で忘年会(矢野宏)

    東京忘年会は12月2日(土)午後5時~新宿2丁目の中華料理店「隋園別館・新宿店」(都営線「新宿3丁目駅」⑤出口から徒歩3分)で開催します。8時ごろから二次会も予定しています。
     
    翌3日(日)は埼玉読者会。正午に西武新宿線「新所沢駅」西口改札で集合。徒歩5分の「デルフィーノ新所沢」で開きます(会費5000円)。会食後は本川越にタクシーで移動し、喜多院などを散策する予定です。申し込みは根橋さん(090・9245・0531)まで。
     
    大阪は9日(土)午後6時~淀川区宮原の韓国料理店「セント」(地下鉄御堂筋線「東三国駅」から徒歩3分)。
    初めての方もぜひご参加ください。

  • 32面 購読・継続方法(矢野宏)

    ◆購読・継続方法 新聞うずみ火は月刊の新聞です。ぜひ、定期購読の輪にご参加下さい。
    購読・継続を希望される方は、お近くの郵便局か銀行で年間購読料として1部330円(税込み)×12カ月分、計3960円を下記の口座にお振り込みください。毎月23日頃にお手元へ郵送します。
     
    ※郵便振替口座 00930-6-279053  加入者名 株式会社うずみ火
     
    ※りそな銀行梅田北口支店 (普通) 1600090 株式会社うずみ火

    ◆賛助会員・カンパの募集 充実した紙面をお届けするため、賛助会員として応援してくれる方を募集しています。購読料のほかに年会費(1万円~)を収めていただけると、増刊号(不定期)と新聞うずみ火をもう1部贈呈します。カンパもよろしくお願いします。

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