高市早苗首相の解散総選挙に乗じて、吉村洋文・大阪府知事(日本維新の会代表)と横山英幸・大阪市長(同副代表)が辞職し、出直しダブル選に臨む。維新が「一丁目一番地」と位置づける「大阪都構想」実現に向けて民意を問うためだというが、2度の住民投票に振り回された市民らは「勝つまでジャンケンか」と憤る。他党も「大義がない」「選挙の私物化」と批判の声を上げ、候補者擁立を見送った。それでも維新の「独り相撲」は続くのか。
「よくテレビに出ていますよね。国政政党の代表、それも政権与党の代表を兼ねて、大阪府知事としての仕事ができるのでしょうか」
大阪府関係職員労働組合(府職労)の小松康則委員長は、怒りを通り越してあきれた表情で切り出した。
「知事が重視すべきは、物価高騰が続く中で日々の生活に困窮し、不安を感じている府民の暮らしを支え、地震や大雨などの災害に備え、安心・安全の街づくりを進めること。知事の仕事に専念して職員を、府民をちゃんと見ていただきたい」
大阪維新の会主導で、「職員基本条例」が大阪府・市でそれぞれ制定された。徹底した職員数管理と削減が進められ、職場は深刻な職員不足となり、長時間労働が常態化している。心身の不調による休職や退職が増え続け、1週間以上休職した職員は24年度で285人を数えるという。
「大阪府は2月議会を控え、2026年度予算の編成、組織改正、人員配置など、府政運営の根幹に関わる多忙な時期を迎えています。そんな重要な時に知事の職を投げ出されたら、停滞を招くのは明らか。それも過去に2度否決された『都構想』を掲げての出直し選挙とは、極めて無責任で身勝手と言わざるを得ません」
吉村知事が1月16日、府議会に辞職届を提出したのを受け、大阪府交野市の山本景市長がⅩ(旧ツイッター)に投稿した。
「2月8日の解散総選挙で、大阪府内各市は四苦八苦しています。選挙期間は12日にも及び、1月27日公示です。しかしながら、死にもの狂いで交野市役所一丸となって頑張っています」と現状を説明した上で、こう訴えている。
「選挙期間17日間の大阪府知事選なんて、もうムリです。1月22日告示なんて、あと、1週間しかありません。公営掲示板は間に合いません。期日前投票所開設も間に合いません。ここまで来たら、大阪府知事によるただの権利の濫用で、大阪府知事による各市長や各市役所職員へのパワハラです」
箕面市の原田亮市長もⅩで、吉村知事宛に市として抗議文を出したことを明かしている。
「十分な告知ができずに有権者が適切に選挙権を行使する機会を損ねることになります。日程の余裕がなく現場を担う職員の負担も膨大になります。さらに、投票用紙の誤交付や二重交付などミスも起きやすい環境につながります。適切に選挙を行うためにも、どうか選挙業務を担う自治体や職員のことも考慮していただきますようにお願いします」
吉村氏と横山氏が当選したとしても、2人の任期は27年4月までと変わらず、再びダブル選挙を行うことになる。費用は計28億円と言われており、市民らは「税金の無駄使い」「どこが身を切る改革や」と怒りをぶちまける。
……
高市早苗首相が1月23日召集の通常国会冒頭での衆院を解散し、総選挙を27日公示、2月8日投開票の日程で実施すると表明した。前回の衆院選から約1年3カ月。物価高の中で2026年度予算や税制改正関連法を早期に成立させるとしていたが、解散で予算の年度内成立は困難となった。なぜ今なのか、注目選挙区は?
なぜ、このタイミングだったのか。高市首相は1月19日の記者会見で、「高市早苗が首相で良いのか、国民に決めていただく」と述べた。さらに「維新との連立の信を問うため」と説明したが、選挙協力しない連立政権をどうやって信を問えというのか。結局、高い内閣支持率に比べて自民の政党支持率が伸びない中、首相人気が高いうちに選挙して自民の議席を増やし、政権基盤を安定させるのが狙いだったとみられる。
政権をめぐっては新たな問題も浮上していた。
高市氏が支部長を務める政党支部に企業から政治資金規正法が定める年間上限額を超える寄付を受けていたとして、神戸学院大の上脇博之教授が同法違反容疑の告発状を奈良地検に送付した。
また、高市首相の「台湾有事発言」で日中関係が悪化し、レアアース輸入が停止した。自民党議員と旧統一教会との関係の深さを示す内部文書が見つかり、高市氏の名前が32回も登場していたという。
裏金問題も決着していない。自民党は1月21日、衆院選の第1次公認候補として284人の擁立を決めたが、派閥裏金事件に関係した議員らも含まれている。杉田水脈元衆院議員の公認も決まり、大阪5区から出馬する予定だ。
大阪5区は、大阪市此花区、西淀川区、淀川区、東淀川区の4区。公明党が新党結成に伴い、撤退した選挙区。前回の衆院選では、維新、公明、れいわ、共産、参政から5人が立候補し、維新の梅林聡氏が当選、れいわの大石晃子氏が惜敗率から比例復活した。
杉田氏はアイヌや在日コリアンらへの差別言動を繰り返し、法務当局が人権侵犯と認定した。23年12月に発覚した裏金問題で計1564万円が不記載だったことが明らかになり、党役職停止6カ月の処分を受けた。前回の衆院選は出馬を見送り、昨年7月の参院選では比例代表で出馬し落選した。
コリアNGOセンター代表理事の郭辰雄(カク・チヌン)さんは「自民党が杉田氏を大阪の候補者にするのは、ネトウヨに期待したもの」と危機感を募らせている。
「選挙の争点になるのは、日本社会は『外国人と共に生きる社会』を目指すのか、それとも『人権を認めず、排除』を強めるのか、これからのビジョンと覚悟を日本の有権者がどう考えるのかです。大阪の選挙戦とその結果は全国に大きな影響を与えることになるでしょう。差別者を大阪から国会に送らないための取り組みが必要です」
三重県の一見勝之知事が昨年12月25日の定例記者会見で、外国籍職員の採用を見直す方針を明らかにしたことが波紋を広げている。全国の人権団体などから批判が噴出、関西でも1月15日、NPO法人「コリアNGOセンター」と「STOP排外主義! 近畿弁護士有志の会」が方針の撤回を求め合同記者会見を開いた。
戦後、日本企業は長く在日外国人を排除。公務員になることも認めなかった。1970年、在日コリアンの青年が国籍を理由に採用内定を取り消された日立就職差別事件で勝訴。就労の機会が広がり、90年代には多くの自治体が外国人に門戸を開いた。三重県も99年に一部を除き国籍要件を撤廃していた。
コリアNGOセンター代表理事の郭辰雄(カク・チヌン)さんは「知事の意見表明を驚きと怒りを持って受け止めた。多くの在日外国人と日本の市民が、差別をなくそうと取り組んできた歴史、蓄積を真っ向から否定するもの」と批判。「情報漏洩の危険性を理由にし、ありもしない外国人に対するリスク意識を喚起させ、憎悪をあおっている。日本国民の安心安全のために外国人を排除すべきだという明確なメッセージ。影響は三重県にとどまらない」と指摘した。
「有志の会」の弘川欣絵(よしえ)弁護士は「三重県で情報漏洩があったとの事実や具体的な懸念は、会見で一切示されなかった。事実に基づかない『雰囲気』で政策を提唱すること自体、社会にまん延しつつある排外主義に迎合するものであり、外国籍の職員たちがスパイ予備軍であるかのような差別と偏見を助長するヘイトスピーチと言わざるを得ない」と強調した。
一見知事は、毎年実施している「県民1万人アンケート」で国籍要件の是非を問い、その結果も踏まえて最終判断したいという。弘川弁護士は「マイノリティである外国籍者の職業選択の自由という基本的人権について、有権者のみを対象とした県民アンケートにより、当事者の意見も聞かず、また熟議もなく、多数決で判断することに強い懸念を覚える」と話した。オンラインで参加した田中宏・一橋大名著教授も「アンケートの調査対象から外国人を除いている。それ自体がとんでもない差別」と批判した。
知事会見の1か月前、全国知事会は、排外主義を否定し、多文化共生社会の実現を目指す共同宣言をまとめたばかりだった。そもそも三重県は、2022年に「差別を解消し,人権が尊重される三重をつくる条例」を制定、国籍を含む人種等の属性を理由とする不当な差別を解消することを責務としてきた自治体だ。「県として取り組んできた多文化共生の施策を自分たちで否定する言動」と郭さん。
三重県の人口に占める外国籍者の比率は、全都道府県中4位。これまで県内14市のうち7市が外国籍職員の採用を続けると表明した。県内外の人権団体、弁護士団体などが、次々と撤回を突き付けている。
南西諸島の北端に位置する種子島。その沖合の馬毛島(鹿児島県西之表市)で、島をまるごと自衛隊基地とする工事が始まって1月12日で3年になった。種子島の住民の日常が脅かされる中、2027年の完成予定は3年ずれ込み、天井知らずの公金がつぎ込まれている。1月10日、建設反対の市民らに同行し、馬毛島に上陸した。
鹿児島空港から早朝の便で種子島空港に向かう。着陸を目前にして、眼下に馬毛島があらわれた。1年ぶりに見た馬毛島は平板な黄土色の島となり、「く」の字形の滑走路や管制塔、巨大な岸壁が確認できた。標高71㍍の岳之腰は跡形もなく、ほとんどの緑も削られている。
空港からレンタカーで西之表港を目指した。波の状態を見極め、急きょ、この日午前、馬毛島に船が出ることになった。基地建設に反対する住民訴訟の原告団長で西之表市議の和田香穂里さん(61)、漁師の浜田純男さん(70)、代理人の塚本和也弁護士をはじめ支援者、メディア二十数人が、小型漁船1隻のピストン輸送で馬毛島に向かった。
馬毛島までは約12㌔、約30分。薩摩半島の開聞岳(かいもんだけ)や屋久島のシルエットが水平線に浮かぶ。馬毛島の島影が近づくと、クレーンが林立し、重機やダンプが走り回っているのがわかった。
市が管理する葉山港に上陸。その正面、タストン・エアポート社の6階建てビルの前では、複数の関係者が警戒していた。タストン社は19年、国に160億円で売却した元地権者だが、今も一部の権利を残しているのだという。
葉山港周辺には種子島の漁業集落の入会地がある。浜田さんら塰泊(あまどまり)地区の漁労の拠点だった。着工後6回目の上陸。漁師が権利を持つ入会地を調査したいと、塚本弁護士らは防衛省と協議を重ねたが、双方の日程の調整がつかなかったという。「なぜ自分たちの入会地に入ることもできないんですか」。浜田さんが繰り返し問いかけても、職員たちは「安全」を理由に立ち入りを拒んだ。
……
1942年に発生した水没事故で朝鮮半島出身者136人を含む183人が犠牲になった山口県宇部市の長生炭鉱をめぐり、高市早苗首相と韓国の李在明大統領が1月13日の会談で、遺骨のDNA鑑定を共同で進めることで合意した。昨年8月に初めて人骨を収容した地元の市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」は20日、関係省庁と非公開で面談。「そう遠くない時期にできると思う」と説明を受けたという。
刻む会は1991年に結成され、毎年、事故の起きた2月3日にあわせ、韓国から遺族を招き追悼集会を招いてきた。2013年に犠牲者の名を刻んだ追悼碑が完成した後は、遺骨収容・返還を目標に掲げ、政府交渉を重ねてきた。
しかし、日本政府は「海底のため遺骨の位置・深度が明らかでない」などと消極的な姿勢に終始。これ以上高齢の遺族を待たせるわけにはいかないと、刻む会は一昨年2月、坑口を開けると宣言。クラウドファンディングを実施し、同年9月、地下4㍍に埋まった坑口を掘りあてた。
協力を申し出た水中探検家の伊左治佳孝さんらが潜水調査を繰り返すなか、昨年8月下旬、坑道内から頭蓋骨や腕の骨などが初めて収容された。
遺骨を山口県警に引き渡し、刻む会が日韓の遺族から独自に採取してきたDNAデータも警察庁に提供。しかし、DNA鑑定は未だに行われていない。2月上旬には海外の専門ダイバーによる大掛かりな遺骨収容プロジェクトが予定され、坑道内で確認された4体をはじめ、多くの遺骨が収容される可能性が高い。リミットが迫る中、刻む会は、それまでに動かなければ独自にDNA調査を行うと、政府側に伝えていた。
そんな中、1月13日の日韓首脳会談で、長生炭鉱で収容された遺骨について、両国が協力してDNA鑑定を進めることが合意された。これを受け、刻む会は20日、警察庁と外務省の担当者と非公開で面談、終了後、井上洋子代表と上田慶司事務局長らが記者会見した。政府側は2月の潜水調査にも言及、「効率よく確実な方法を日韓で探っている」「そう遠くない時期にできると思う」と説明したという。
井上代表は「遺骨の問題を通し、日韓が共同で一歩を踏み出すことができた。DNA鑑定だけにとどまらない、日韓共同での遺骨収容・返還事業に向けて具体的に進む道程が始まるだろう」と話した。 2月7日の追悼集会は韓国から遺族、国会議員や行政安全部の幹部らが来日する。もし、日本政府の関係者が参加すれば初めてになる。
6434人が亡くなり、3人が行方不明となった阪神・淡路大震災は1月17日、発生から31年を迎えた。神戸市中央区の公園「東遊園地」で「1・17のつどい」があり、地震が起きた午前5時46分、犠牲者へ黙とうがささげられた。
7000個あまりの竹と紙の灯ろうが並べられ、ろうそくの明かりで浮かび上がった今年の文字は「つむぐ」。人と人とのつながりを大切にするとの意味があるという。
「お母ちゃん、どこにおるん? もう31年も会えてないよ……」
神戸市主催の追悼のつどいでは、兵庫県加古川市の佐藤悦子さんが遺族代表として追悼の言葉を述べた。
母の正子さん(当時65歳)が須磨区で一人暮らししていた文化住宅は、倒壊し火災に見舞われた。警察や自衛隊員らの懸命の捜索にも関わらず、焼け跡からは骨のかけらさえ見つからなかった。
佐藤さんは母を探し、避難所や病院などを訪ね歩いたが、31年たった今も行方はわからない。
「お母ちゃんがこの世にいないという現実をだんだんと思い知らされるようになってきたわ……」
須磨区の井芹史見代さんは、追悼の集いに初めて参加した。
あの日、1995年1月17日。ドンという突き上げのあと、大きな横揺れに見舞われた。家がつぶれるのではと思うほど、ずっと続いたという。
「ピアノが動き、食器、トイレ、キッチン、お風呂のタイルなどはすべて壊れ、外壁もはがれ落ちるなど被害は大きかったのですが、家族は無事でした」
困ったのが水。トイレを流す水もなく、風呂に入れない生活だったが、「夫がテキパキと指示してくれたので助かりました」
歯科医だった夫は、その年の夏ごろ体調を崩し、近くの病院で手術を受けたが回復せず、西神戸医療センターに転院して再手術を受けたが、翌年1月24日に亡くなった。享年51。医療過誤だった。
井芹さんは専業主婦からフルタイムで働き、高3と高2の二人の娘を育てた。
震災から31年、夫が亡くなって30年。初めて東遊園地での追悼の集いに参加した。
「あの時はすごく寒くて、暖房もつけられない家で大変でした」と振り返る井芹さん。竹灯ろうの灯りを見つめていると、涙があふれてきたという。
一人の女性に熱を上げてしまったのならともかく、複数の女性に手あたり次第……。言葉は悪いが「ビョーキ」としか形容しようがない「セクハラ知事」騒動。福井県知事だった杉本達治氏(63)が2期目の途中で辞任し、知事選となった福井市を、寒波が去った1月13日に訪れた。
「僕は〇ちゃんのお尻から太ももが大好き」「おはよう、もう起きたの? それともおしっこ?」「キスしちゃう」……女性職員に杉本氏が送った1000通を超えるメールやラインの一部だ。これが、東大法学部から自治省(現総務省)官僚を経て福井県のトップに立っていたとは。
きっかけは昨年4月、県の公益通報窓口の弁護士事務所に一人の女性職員が駆け込んだことだ。県の特別調査委は昨年9月から職員約6000人に情報提供を求めた。通報者ら4人から詳細に事情を聴いた結果、杉本前知事が送ったLINEのメッセージやメールなど約1000通をセクハラと認定した。言葉だけではない。懇親会で尻を触るなど痴漢行為も確認され、調査委はストーカー規制法違反や不同意わいせつ罪に該当する可能性も示した。
セクハラは、福井県の総務部長として勤務していた2007年以降、20年近い。女性に自宅住所を求め、「一切内緒で、墓場まで持っていってね」との記述もあった。
1月7日に報告書が公表されると鷲頭美央副知事は神妙な顔つきで、「決して許されない。ハラスメントの防止を率先して実践すべき立場にあった者による執拗かつ長期間にわたる行為で強い憤りを禁じ得ない」などと会見した。
自治労福井県本部の大嶋智委員長は東京の自治労本部に在任中から杉本氏を知るという。「彼は公務員部長もしていたので交渉相手でもあった。仕事は非常にできるし、ざっくばらんで威張ることもない人柄で誰からも好かれていました」。ジキルとハイドではないが、そのギャップに当惑するばかりだ。
岐阜県出身の杉本氏は自治省(現総務省)で大臣秘書官などを歴任、04年に福井県に総務部長、13年には副知事として派遣。19年に知事に当選し、北陸新幹線の敦賀延伸や「恐竜王国」発信などに力を注いだ。
大嶋氏は「県職労は6年前の知事選で前職の西川(一誠)氏を推したため、杉本知事は労組との交渉を一切受け付けなかった。私は連合福井の副会長として昨年、やっと会え、パワハラなどについての要望を渡しました」。杉本知事は若い職員がパワハラなどで次々と退職する中、働き方改革を積極的に進めたという。「官僚答弁の西川氏と違い、原稿もなしに話す杉本さんは人気があった」と大嶋氏。だが、「奥さんと手をつないで歩くなどオシドリ夫婦ぶりを見せていただけに今回、オセロをひっくり返したような感じになんです」
報告書は「福井県庁にセクハラの被害を通報しにくい組織風土がある」とした。大嶋氏は「上司らが知らなかったはずはない。人事課長、総務部長、知事公室長らがお殿様に忖度して女性職員の訴えをつぶしてきた責任は重い」と指摘する。福井市役所OBである大嶋さんは「県内の市町村でこんなことはあり得ない。首長におかしな言動があっても絶対に誰かがブレーキ役になる。県庁って福井城の跡に建ってるでしょ。職員はみんなお堀を渡って登城する。まさに杉本元知事はお殿様だったんです」。
……
2026年が始まった。新年というと筆者のような人生最終コーナーの者でも、夢と希望が持てる何かが始まるのではないかという期待と高揚が少しはあるものだが、まったくない年明けだった。
人生の最後に世界も日本もとんでもない方向に動き、今日まで何をしてきたのか、悔しさと怒りがないまぜの、複雑な気持ちである。このままでは、かつて我々の父や祖父たちが謀略・侵略・戦争と弾圧を止めることができず、アジア太平洋の国々や地域を破壊し、焼き払い、殺し、略奪、暴力を加え、2000万を超える人々の命を奪った一方で300万人の戦死者を出し、沖縄戦、広島・長崎への原爆投下、日本全土が空襲された結果、今もって確定されない多大な犠牲を余儀なくされた。なぜ祖父や父たちが戦争を止めることができなかったかを怒ったように、我々自身が状況をこのままにしておくと子や孫から親父や爺は何をやっていたと言われる。最後の最後まで動き、それなりのバトンタッチができるようにしなければと思わないわけにはいかない。
トランプ、プーチンら世界に関わることを書くと、それだけで終わってしまうので、今号では「働いて、働いて、働いて……」はカッコばかり、実際は「目立つよう、目立つよう、目立つよう……」の高市首相を中心に、国内の問題を書かせてもらう。
天皇制絶対主義の戦前、伊勢神宮は皇室の祖先である天照大神が祀られているということで、斎戒沐浴して厳粛なうえにも厳粛な心と形式で詣でなければならぬものとされた。高市首相は戦前のような思想の持ち主であることを言ってはばからない人物だからそういう詣で方をするのかと思っていたら何のことはない、遺影を抱いてのパフォーマンス、土産物のお菓子宣伝役までかう有様、政権基盤が不安定なだけに、とにかく支持率を高く維持することが最優先になっている。
日本と韓国の間には戦前の植民地支配をはじめとする歴史認識、強制連行、強制労働、従軍慰安婦など今もって解決していない問題が根底に存在する。高市首相はこれらについて否定的見解を公然と主張し靖国参拝も行ってきた。首相就任以降、これらを封印し、李在明大統領が甘いからか、ホテル玄関での異例の出迎え、ドラムを叩いてごまかし、イタリアのメローニ首相の来日についても、女性首相同士ということで盛り上げ、支持率上昇、ご当人は大喜びだろうが、とても中身ある外交とは言えない。まさしく外交辞令的交流、支持率上昇に貢献しただけのことである。
……
「戦争とカジノはつながっている」。映画「ネタニヤフ調書」は、イスラエルのネタニヤフ首相が警察に取り調べを受けているシーンから始まる。刑事捜査は2016年12月から行われていて、ネタニヤフは三つの罪で起訴されている。
一つ目は、映画プロデューサーのアーノン・ミルチャンから葉巻やシャンパンなど総額30万㌦(約4800万円)の贈り物をされた見返りとして、ミルチャンに有利となる税制改正をしたり、彼の米国ビザでの便宜を図ったりしていた件。
次に、大手イスラエル紙「アハロノット」発行人のアーノン・モーゼスに対して、競合する新聞への流通を制限する代わりに好意的な報道を受けていたという疑惑。
三つ目が、シャウル・エロビッチが経営するニュースサイト「ワラ」に介入し、報道内容やスタッフ人事に圧力をかけて、「ワラ」から批判精神を奪い取る代わりに、エロビッチに最大5億㌦(約800億円)もの利益をもたらしていた疑いである。
これらの罪で起訴されたのが19年11月で、裁判は20年5月に始まっていて現在も進行中だ。そう、23年10月7日のハマスの奇襲攻撃があり、その報復としてガザで7万人以上が虐殺されていた期間も裁判は続行していたのだ。
この腐敗した極右政権を支えてきたのがカネ(ワイロ)であり、報道機関への圧力であった。裏金を溜め込みながらマスコミへの圧力を続け、批判的な報道を抑え込むことによって長期政権を維持している自民党とよく似た構図である。
この映画に重要人物として登場するのが、やはり多額の賄賂を送っていたシェルドン・アデルソン。彼はユダヤ系アメリカ人でラズベガスのカジノ王。第1期トランプ政権が誕生した時にダントツの巨額献金を送り、トランプを支えていた人物だ。実はこのアデルソン、ネタニヤフにもワイロを送っていた。そして「イスラエル・ハヨム」という無料日刊紙を発行し、ネタニヤフを礼賛する記事を載せて、この政権を支えていた。映画ではこのアデルソンの取り調べシーンも出てくる。
トランプはアメリカ大統領の中で誰もがやらなかった「エルサレムの首都承認。アメリカ大使館の移転」を強行したが、後ろにいたのがアデルソン。この人物こそがネタニヤフとトランプをつなぐわけだ。ちなみにエルサレムはイスラム教、ユダヤ教、キリスト教の聖地で、ここに首都を置いてはいけない、という国連決議がある。そんなことをすれば一方が一方を恨み、危険な状況になることから、あらかじめ首都にしてはいけない、と決められているにも関わらず強行したのは、トランプに巨額のワイロを送っていたアデルソンの意向だ。
……
2026年は耳を疑うニュースで幕を開けた。1月3日早朝、アメリカのトランプ政権がベネズエラの首都カラカスを軍事攻撃し、同国のマドゥロ大統領を拘束したのだ。名目は麻薬対策で、トランプ大統領はアメリカの法執行機関と連携して実施したと正当性を主張しているようだが、重大な国際法違反であることは明白である。またアメリカは、昨年9月以降、ベネズエラからの「麻薬密輸船」とみなした船への攻撃を繰り返し、計100人以上を殺害してきた。
トランプ大統領は「安全で適切、賢明な政権移行が実現するまでその国を運営していく」と述べている。世界最大の石油埋蔵量を有する同国での利権確保をにらみ、インフラ修復へ米国企業が関与するとも表明した。これらはまるで、歴史の教科書で学んだ帝国主義、植民地主義の復活を思わせる。かつてアメリカは「世界の警察」を自負していたが、もはや「世界を股にかけたギャング」ではなかろうか。アメリカはイランや朝鮮民主主義人民共和国を「ならず者国家」と指摘してきたが、完全にその仲間入りを果たしたと言ってよい。
アメリカ大統領の「ご乱心」に驚かされたら、今度は日本の首相の「ご乱心」だ。高市早苗首相が、通常国会の冒頭で衆議院を解散した。1月開会の通常国会は、26年度の予算審議という重要な役目を負っている。その議論の時間を2週間近く削いでしまうわけだ。しかも、この時期は地方自治体にとっても予算審議など重要な案件を抱えている。ただでさえ忙しい地方自治体職員に、「余計な仕事」を増やすことになってしまう。
それだけではない。多くの18歳の有権者にとっては、まさに受験の佳境である。1秒でも受験勉強に専念したいこの時期に、選挙について考えろというのはあまりにも酷な話ではないか。
その上、この機に乗じて日本維新の会のトップは、大阪府知事と大阪市長のダブル選挙を行う。その理由が、住民投票で2度否決された「大阪都構想」の是非を三たび問うという身勝手なものだ。有権者をないがしろにするにも程がある党利党略、私利私欲の選挙が、今まさに行われようとしている。
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大逆事件で死刑判決を受け、恩赦で無期に減刑。獄中で自ら命を絶った金子文子(1903~26)。死刑判決から自死に至る121日間を描いた『金子文子 何が私をこうさせたか』が2月28日から東京・渋谷のユーロスペースを皮切りに全国で順次公開される。今年は没後100年。長く構想を温めてきた浜野佐知監督が、国家権力に全力で抗った文子を、いまの時代に蘇らせた。
浜野監督は1971年、ピンク映画で監督デビュー。300本を超える映画を手掛け、自主制作作品として作家の尾崎翠、ロシア文学者の湯浅芳子ら100年前の日本で、自らを曲げずに生きた女性たちを描いてきた。その浜野監督が監督人生の集大成として完成させたのが、金子文子の孤高の闘いに迫る本作。文子役を俳優の菜葉菜さんが演じた。
文子は1903年、横浜で生まれたが、父は出生届も出さず、文子は学校に行けなかった。9歳から16歳まで朝鮮半島に住む祖母の家に引き取られたが、ひどく虐待された。この地で文子は、苛烈な植民地支配、朝鮮の人々がそれに抗した「3・1独立運動」を目の当たりにしている。
……
当コラムで、過去に何度も「税の歪み」を指摘してきました。その詳細な事実を政府の公開資料で解説します。
消費税は法人税や所得税の穴埋め 1989年に消費税を設定。その直後に、法人税(基本税率42%→40%)や所得税(住民税率16%→15%)を引き下げ。97年に消費税が3%から5%に増税すると、法人税(同34%→30%)や所得税(15%→13%)も再度引き下げ。甚だしきはアベノミクス。2013年から3回に渡り、法人税(同30%→23・2%)、所得税(13%→10%)の引き下げに。その結果、法人税率は、消費税が設定された1989年が34・7%(課税対象額49・9兆円/法人税18・5兆円)でしたが、2023年には17・6%(同97・5兆円/法人税17・2兆円)に低下しました。法人の課税対象額が大幅に増加しているのに、法人税が減少するという、実に奇妙な現象です。
法人の内部留保 法人企業統計(財務省)によれば、24年度末で637兆円を記録、13年連続で過去最高を更新しました。参考までに、24年度末の全産業(金融・保険を除く)の経常利益は114兆円。前年比7・5%の増加です。また所得税についても、税収は1991年26・7兆円だったのが、2025年24・7兆円に減少しています。この間、経済規模は3割以上も拡大しており、25年時点での税収は①消費税収25・5兆円(1989年=消費税の設定=3・3兆円)②所得税24・7兆円(同21・4兆円)で、法人税は19・8兆円(同19・0兆円)に過ぎません。なお30種類に及ぶ「法人への特別措置」は、年末近くの閣議で、いとも簡単に継続されました。
億万長者、10年で倍増 高額所得者への優遇措置で、「1億円超の高額所得者が10年で倍増し、3・8万人」(1/4朝日)とのこと。株式や不動産からの所得が「分離課税」(15%+住民税5%)の恩恵が効いています。日銀の資金循環表では、個人の金融資産は2286兆円(25年9月末)。半分が現・預金とか。かなり偏りがあるかと。
日本経済の低迷 経済財政白書(内閣府)によると、名目雇用者報酬や民間最終消費支出(実質)は、1992年あたりから低迷したままで、消費税の設定や相次ぐ増税などとリンクしています。また雇用法を何度も改正し(95年、99年)、2004年には、非正規労働者の製造業への派遣が解禁され、今では4割近くをしめます。
悪影響 25年度の出生率は、過去最低の66万人(朝日新聞の推計)で、少子高齢化に拍車がかかっています。消費税は、エンゲル係数(生活費に占める食品の割合)を含み、生活必需品への悪影響が大きい「逆進性」が指摘されています。個人消費の不振は、景気低迷の大きな要因です。税収不足から、膨大な赤字国債が積み上がりましたが、税の歪みを是正すれば、税収不足は解消されるはず。例えば、法人税収。消費税の導入時期(1989年)の課税対象額は49兆円。2023年度は97兆円。法人税率と所得税率を、消費税の導入時期に戻したら、税収不足は吹っ飛びます。税の基本理念は富の再分配です。
下嶋哲朗さんとチビチリガマ
昨年は沖縄戦後80年の年だったのであるが、ある日、次のような報道があった。ノンフィクション作家の下嶋哲朗さんが、石垣島で読谷村出身の方からチビチリガマの出来事を聞き、その後、聞き取り調査をして地域でタブーとされていたガマでの出来事に光をあてたというのである。
ガマ=自然壕。鍾乳洞。
チビチリ=小さな川が尻切れていたのでチビチリ(尻切れ)と名が付いたと考えられている。戦時中、住民は空爆や艦砲射撃から身を守るためこのガマに避難していた。
平和ガイドを引き継ぐ
下嶋さんたちが光をあてた沖縄県読谷村波平(なみひら)にあるチビチリガマでの出来事は強制集団死、 「集団自決」である。それは1945年4月2日に起こった。その80年後の2025年4月2日。NHKテレビは「チビチリガマの悲劇語り継ぐ37歳の平和ガイド」という特集を組み、父、知花昌一さんから平和ガ イドを引き継いだ昌太 朗さんがその思いを話していた。
知花昌一さんと私
昌一さんはチビチリガマのある読谷村波平の方。私は1996年頃に沖縄出身の知人を 通じて彼と知りあい、大阪での私たちの沖縄を考える集会でお話をしていただいたり。私が沖縄に来てからは彼の何我寺(ぬーがじ)を訪ねたりしていた。
しかし何年か前から昌一さんは体調を崩されているとお聞きし、心配していたのだけれど、今、息子の昌太朗さんが平和ガイドをされているとのこと。
昌一さんは83年、下嶋さんたちと協力して、チビチリガマの体験者、遺族に聞き取り調査し、チビチリガマでの出来事を明らかにした。それで彼は「ここであったこと、そして何より命の大切さを伝えたい」(2022年沖縄タイムス)と平和ガイドを30年続けてきたのである。
25年10月、何我寺で昌太朗さんに取材させていただいた
私の住んでいるところから読谷村波平までは車で10分くらい。そんなに近いのに、これまで昌太朗さんの活動を知らなかった。それでさっそく何我寺で取材させていただいた。
私とチビチリガマ
私はチビチリガマで「集団自決」があったこと、同じ波平にあるシムクガマでは避難していた全員が助かったことは知っていたが、詳しいことは知ろうとしていなかった。
でも今回、昌太朗さんのお話を聞き、沖縄テレビの特集「チビチリガマ 真実明らかにした調査」などの動画を見たり、下嶋さんの著書「沖縄・チビチリガマの〝集団自決〟」や「南風(パイヌカジ)の吹く日」を読んで、チビチリガマの「集団自決」のことをまだ少しだが詳しく知り始めた。
山上伊太郎は落ちた偶像と化した。マキノ正博の縁で、日活京都撮影所に入所。稲垣浩監督の『尊王村塾』(1939年)などの脚本を手がけるが、あとが続かない。世はあげて軍国主義に染まっていた。「キネマ旬報」で連載し、のちに『日本映画縦断』(白川書房刊)3巻にまとめた竹中労に稲垣監督が答えている。
「世の中は変わってしまったし、大衆ものを書くといっても、軍国主義の賛美なんぞ彼にできるわけがない。それを無理してメシのためにやろうとするから……」
42年『阿波の踊り子』が脚本家としての最後の仕事だった。これもマキノによれば、「使いものにならなくって、小国英雄に書き直してもらった」(同前)、42年の大映への各社統合で、山上は人員整理で職も失う。稲垣監督の痛切な言辞。
「山上をたすけたくてもどうにもならない時代です。伊丹万作も栄養失調に近い死にざまだった。あの戦争は山上伊太郎を殺した。山中貞雄も殺した……」(同前)
娼妓の足抜きと出奔。そこから始まる年上の本妻との確執。金銭につまっての不義理の借財。着手金をもらいながら、どの脚本もそのままでは作品にすることができなかった。そしてついに山上は従軍志願する。軍属ならばあとに残る家族が食っていける。竹中は、山上に熱量高く関心を抱き、元戦友たちに話を聞き、76年には現地も訪ねた。
報道班軍属として山上がフィリピンに赴任したのは43年12月。戦局はすでに予断を許さない状況で、彼の死までの軌跡は、竹中の同書に詳しい。以下、参考にさせていただく。
山上の上官の話 「昼夜をわかたぬ爆撃下、山上はつねに壕の入口にいてもえあがる火柱を眺めていた。『危ない、中へ入れ』といっても、『自分は戦争を見ることが仕事であります。どうぞおかまいなく』と微笑んでふりかえるのだ。火柱を背負ってくっきり輝く仏像のように柔和なその笑顔は、何より印象的だった」
有名人軍属、ジャーナリストたちは先を争って帰国していた。山上も帰国する機会はあったが隊を離れることはなかった。飲まず食わずの兵士たちは、次々と山や谷で餓死していった。45年6月18日――同僚のM氏は、山道で座り込んだ山上に「がんばりましょう」と声をかけた。
「『いや、もういいんですよ、僕は』と動こうとしない。『先にいってください。ここでいろいろ考えたい。一人にしておいて下さい』と淋しそうに微笑んで、そういわれるのです。『死にますよ、山上さん』と僕は涙を流しながら説得しても動こうとしない。穏やかな顔でした」(同書)
彼は覚悟の上で死地に残った。竹中がいう。「山上にとっての従軍とは、国家の大義にではなく、おのれの覚悟に殉じる道だった」。マキノプロ時代から交流があった、映画プロデューサーの玉木潤一郎の言葉。
「彼は自決したのや。映画が滅びてしまったニッポンに帰るよりも、在天のマキノのおやじのもとにいって仕えたかったにちがいない」(同書)
友人が親の介護で苦労しています。母親が認知症になったからです。父親はやや怪しくなってきたとはいえまだ判断能力はあるそうですが、足腰が弱り、介護が必要でした。一昨年の末にようやく2人とも施設に入ることができたので、少し楽になったそうなのですが、今度はお金の心配が出てきたといいます。
母親の施設は毎月15万円かかります。年金額も高く預金も十分あると聞いていたので心配はしていなかったそうですが、払い始めると年金は少なく、預金もすぐに底をついたとか。仕方なく自分が支払っているものの、この状態を長くは続けていけません。父親名義の財産は十分あるそうですが、父は「母親名義の財産もかなりあるからそこから出すように」と主張しているとか。仕方なく、そのかなりあるという他の預金通帳を実家で捜したそうですが見つからず、途方にくれています。
友人はすでに母親の後見人にはなっているというので、まずは該当する金融機関に問い合わせ、預金のあるなしを確認するようアドバイスしました。さらに彼には他に2人の兄弟がいるので、立て替えていることなど兄弟に現状をすべて話しておくようにとも伝えました。
親の財産で兄弟姉妹が争うことはよくあります。今回のケースでも、預金が見つかり立て替えた分を取り戻せても、勝手にお金を引き出したと言われかねません。兄弟や姉妹と「何でも共有」は親の介護や相続ではとても大事です。
今は終活ブームで備えようと意識する方も増えてきましたが、私たちの親世代は、情報も少なく、一般家庭で準備ができている人はまれです。親子で話し合えないまま認知症になって、財産が凍結されてしまうという事態も起こります。そんな時に役立つのが成年後見人制度です。この制度には「法定後見人」と「任意後見人」があります。
認知症になったあとは前者となり、法定後見人を裁判所で選任することで財産管理や各種手続きが可能になります。ただ何をするにも許可が必要で使いにくいという声も多いのが実情です。
一方、任意後見人は判断能力が低下していない時に、自身で指名することができるため、将来への不安が少し解消できます。親子で事前に話し合うきっかけにもなると思います。ただ、任意後見人にも、契約の内容通り行っているかを監督する「任意後見監督人」がつきますし、不動産の処分などは裁判所の許可が必要です。また法定後見人同様、任意後見監督人にも報酬が必要です。
ちなみに「家族信託」という制度もあります。こちらは財産管理制度です。不動産の処理など、事前に信託された内容の範囲内で家族が自由にできます。ただ上記の制度とは異なり、身の回りの手続きなどはできません。初期費用は高めですが、報酬などは発生しません。
それぞれ他にもメリット・デメリットがあるのでよく調べて、自分たちにはどれが合っているかを見極めたいところです。私自身もいつごろから準備すべきかと思案しています。
狭山事件の支援
ためらう教員も
埼玉県 村松泰
「新聞うずみ火」1月号に露の新治さんが狭山事件について投稿されていたので、私も一筆啓上いたします。
私が狭山市に引っ越してきた時、事件が起きたので鮮明に覚えています。女子高校生が行方不明となり、脅迫状が届けられたのは1963年5月1日のこと。犯人として逮捕されたのが同じ町内に住んでいた石川一雄さんでした。被差別部落のことを、高校教師として学び、教壇に立って生徒たちに話す中で、少しずつ学習していきました。
犯人にでっち上げられた石川さんは一審で、まさかの死刑判決を受けました。教員仲間にも石川さんの救援に手を差し伸べようとしない人もいて、部落差別の根深さ・複雑さを思い知らされました。当時の埼玉高教組も初めは支援していたのに、次第に組合員の中の政治路線の違い(社・共の確執)から離れていきました。
石川さんが保釈され、自宅に戻った日、私は地元の工業高校に勤めていたので、昼休みにクラスの生徒有志らを連れて歓迎の輪の中にいました。炊き出しのおむすびをもらい、生徒らと食べたことが思い出されます。
裁判は、石川さんのつれあいの早智子さんが「第4次再審請求」を引き継ぎ、闘っていくことになりました。新治さんの投稿に添えられた編集部のコメント「石川さんの手に見えない手錠をかけたものは、私たちの心の中にある差別意識に他なりません」にドキッとしました。私もまぎれもなく、その「私たち」の一人であることを思い知らされたからです。
(狭山事件の再審を実現し、差別とえん罪を生み出す社会そのものを変えていかなければなりませんね)
……
ご存知の方も多いこの作品は、新美南吉が1932年に雑誌「赤い鳥」に発表しました。当時18歳。戦後、56年から小学4年生の教科書に採用され、途切れることなく今も子どもたちに読み続けられています。数ある『ごんぎつね』の絵本の中から私が選んだのは、黒井健さんの絵本。教師を始めて教科書で黒井さんの挿絵を見てから魅了されています。
物語は「村の茂平じいさんから聞いた話です」と始まります。右のページにお話、左には挿絵と進んでいきます。一人ぼっちの小ぎつねの「ごん」がいたずらばかりしている様子。次に3日続いた雨の後に穴を出て何か面白いことはないかと小川に様子を見に行くシーンと続きます。そこで、ごんは魚を網で取ろうとしている兵十を見つけます。その兵十がびくを土手に置いてどこかへ行った隙に、ごんは獲物をすべて放り出してしまいます。その様子を黒井さんは丁寧に、躍動感あふれる描写で描いています。
ごんは、うなぎが首に巻き付きあわてている最中に、戻ってきた兵十に「ぬすとぎつねめ」と怒鳴られます。急いで穴に逃げて事なきを得ますが、10日後、村の葬式に出くわすのです。葬列の先頭に兵十を見つけたごん、兵十の母親が亡くなったことを知ります。彼岸花が赤い布の様に咲く墓地までの葬列をごんが眺めている場面は、淡いトーンの画面に一面の彼岸花……それをジッと見つめるごんの背中が描かれて圧巻です。
その晩、ごんは穴の中で、病床の母親はうなぎが食べたいと思ったのに自分がいたずらでうなぎを取ってしまったので死んだに違いないと思い、「あんないたずらしなけりゃよかった」と反省します。その表情が何とも言えず切なく心に響きます。
ごんは、自分と同じ境遇になった兵十に償いを始めます。鰯、栗、松茸と次々に家の戸口の外にそっと置くのですが、兵十には誰からの贈り物かわからないまま幾日も過ぎていきます。知り合いに「神様がしてくれた」と兵十が言うのを知ったごんは、とうとう栗を家の中に入って置きます。それを見つけた兵十は、うなぎを盗んだごんがまたいたずらしに来たと思い、銃を取り……。ラストのあの名シーンとセリフになります。
兵十の最後の一言と、それに応えるごんのしぐさ。黒井さんは、真ん中に横たわるごん、ばたりと落とした銃からの煙を、兵十の背中から描いています。何でこうなるのかなという気持ちのまま。胸に突き刺さるラストシーンです。
北海道 吉田うらら
「新聞うずみ火」1月号ありがとうございました。半世紀前、韓国に留学中の在日韓国人の若者が「北朝鮮のスパイ」にでっち上げられた「11・22事件」のこと、ぜんぜん知りませんでした。同世代の事件に衝撃を受けました。日本の市民が支えたとのこと、それも知らずにのほほんと過ごしていました。日本も危うい時代、国を超えて手をつなぎたいと思います。
東京都 福島尚文
情勢は厳しさが続きますが、個人の尊厳を守り、内外人平等の社会への世直しを目指し、今年も「叛逆老人」を貫きます。健康第一で闘い続けましょう。
兵庫県 柳正之
いつも真実の報道でお世話になっています。昨年8月には、「うずみ火講座」で芦屋市在住の千葉孝子さんの被爆体験を聞くことができ、平和について改めて考えることができました。ありがとうございました。
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■もう一つの猪飼野コリアタウン探訪
うずみ火創刊20周年記念のコラボイベント「もう一つの猪飼野コリアタウンフィールドワーク」が1月31日(土)に行われます。案内人は元教員で「まちの拠り所 Yosuga(よすが)」を主宰する足立須香さん。
午後2時にJR環状線「鶴橋駅」中央改札口に集合。「鶴橋国際市場の60年の変遷」「1600年前からの朝鮮半島との縁」「コリアタウンだけじゃない歴史の話」「多文化共生教育や民族学級の取り組み」などについて聞きながら街歩きしたあと、買い物時間も設けます。
定員15人(要予約)で、定員になり次第、締め切ります。参加費は街歩き1000円、Yosugaでの懇親会3000円(ワンドリンク付き)。
参加を希望する方は足立さん(メール sugapan5889@yahoo.co.jp)か、うずみ火事務所まで。小雨決行します。
■水野晶子さん朗読会「田辺聖子船中日記」
フリーアナウンサー水野晶子さんによる朗読会は3月1日(日)午後2時~大阪駅前第3ビル地下2階の「RHYコンサートサロン 大阪梅田」で開きます。
ピアノ演奏付きの朗読で、1部は「田辺聖子 18歳の戦中日記」、2部は「天気予報と戦争~気象学者・増田善信さんの遺言」です。ゲストトークはMBSディレクターの亘佐和子さん。
参加費2000円。定員60人まであとわずかとなりました。参加希望される方はお早めに、うずみ火事務所までお申し込みください。
前回の「大阪都構想」をめぐる住民投票の時、自民党選出の堺市議に「維新のどこが嫌いか」尋ねたことがある。その市議は「平気でうそをつくところ」と即答し、こう説明した。「うそをつかれると議論にならない。民主主義の崩壊につながります」▼高市首相は「物価高の中で、新年度予算と税制改正関連法を早期に成立させる」と説明していたのに一転、解散総選挙に踏み切った。その理由が「高市早苗が首相で良いのか、国民に決めていただく」。白紙委任せよとでもいうのか▼自分勝手な政治家は大阪にもいる。任期途中で知事を辞任し、市長も伴って大阪出直しダブル選を仕掛けた維新の吉村氏。都にもならないのに、また「都構想」実現に向けて民意を問うと1月22日に第一声をあげた。6年前、2度目の住民投票が否決された後、「僕たちが掲げてきた大阪都構想は間違っていた」「政治家として大阪都構想に挑戦することはもうない」と明言したのは誰やねん▼立憲民主党も新党「中道」に衣替えするや、これまで掲げてきた「安保法制の違憲部分の廃止」「原発ゼロ社会を一日も早く実現」の方針を投げ捨ててしまった▼かつて明治維新から3代目の世代が国家権力の中枢を握り、無謀な太平洋戦争へ突入し日本を滅ぼした。戦争を知らない3代目世代が選挙をもて遊び、再びこの国を滅ぼそうとしている。2月8日、うそをつかない政治家を選びたいものだ。 (矢)
12月10日(水)
矢野の誕生日。夜、大阪十三の居酒屋「風まかせ」で読者有志らによるお祝いの会。返礼に「城が燃えた」講演。
12月11日(木)
夜、事務の吉水享子さんが所属している大阪新音フロイデ合唱団の「第九」。
12月13日(土)
矢野、栗原 朝の新幹線で東京へ。維新の藤田文武共同代表らの公金還元をスクープした「しんぶん赤旗」日曜版の山本豊彦編集長にインタビュー。夜、新宿の「隨園別館」で忘年会。幹事の鷲尾峻一さんの呼びかけで共同通信社の樋口明さんらが初参加。
……
■2月14日(土)午後2時半~森松明希子さん「避難は人権」
東京電力福島第一原発事故から15年。次回の「うずみ火講座」は2月14日(土)午後2時半から、原発賠償関西訴訟原告団の代表で、「東日本大震災避難者の会サンクス&ドリーム」代表の森松明希子さんを講師に招き、大阪市此花区のクレオ大阪西で開きます。演題は「だれの子どもも被ばくさせない」
原発事故のあと、関西地方に避難した79世帯222人が国と東京電力に賠償を求めた「関西訴訟」が大阪地裁で結審しました。国の責任を否定した最高裁判決の厚い壁を破れるのか、注目されています。
森松さんは福島県郡山市から大阪へ、当時3歳と0歳の子どもを連れて避難しました。2018年にはスイスのジュネーブの国連人権理事会で、福島原発事故の被害をスピーチ。結審での意見陳述で「福島に残った夫と子育ての苦楽を共有できず、家族だんらんを失った。事故がなければ、誰も好きこのんで家族バラバラに避難などしない。これ以上『絶望』を与えないでください」と訴えました。
資料代1000円。参加希望者はうずみ火事務所まで。
■3月7日(土)午後2時半~今中哲二さん「原子力開発」
3月7日(土)は京都大複合原子力科学研究所(旧京大原子炉実験所)研究員の今中哲二さんを講師に迎え、「原発事故から15年 日本の原子力開発を振り返る」と題して講演してもらいます。
今中さんの専門は原子力工学。大学院時代より日本の原子力開発のあり方に疑問を持ち始め、原子力を進めるためではなく原子力利用に伴うデメリットを明らかにするというスタンスで研究を行ってきました。
日時:3月7日(土)午後2時半~
会場:クレオ大阪西
資料代:1000円
■4月11日正午からお花見集い
お花見集いは4月11日(土)正午から、大阪城公園の教育塔の東側で開催します。お弁当や飲み物は各自ご持参ください。