編集長ブログ

【編集長の誓い】創刊20周年を迎えて

おかげさまで、新聞うずみ火が創刊20周年を迎えました。2005年10月、当時の小泉純一郎首相による「郵政選挙」で自民党が300近い議席を取り、憲法が改悪されるのではないかと危機感を抱いた仲間たちと「誰もが暮らしやすいと感じるような社会にするために何かできないか」と語らったのが発端。あれから20年、残念ながらこの社会はどんどん悪い方向へ転がり落ちているとりわけこの10年、時の政権によって「国のかたち」が大きく変えられた。2015年に安倍政権が成立させた「安全保障関連法」は「集団的自衛権の行使」を容認し「戦争ができる国」に。22年には岸田政権が専守防衛を逸脱しかねない「敵基地攻撃能力の保有」を認め、「戦争をする国」になった。GDP1%以下に抑制されていた防衛費も、23年度から5年間に43兆円に引き上げられている。事実上、GDPの2%となり、世界第3位の軍事大国に。また、「防衛装備移転三原則」で、殺傷能力のある武器の輸出が可能になった。憲法9条がどんどん骨抜きされているのが実情だ「戦争を知っている世代が政治の中枢にいるうちは心配ない。だが戦争を知らない世代が政治の中枢になった時はとても危ない」。かつてノモンハン事件に出征経験がある田中角栄元首相はこう語っていた。戦後80年、国家や民族の優越性をことさらに言い立てる政治家が増え、ますます危ない時代になった右傾化の流れを前にして無力感にさいなまれることもある。だが、そんな時、恩師である黒田清さんの言葉を思い浮かべる。「戦争の対極にあるもの、それは人権社会。この社会を人権社会に近づけることが戦争を遠ざける道だ」。あきらめることなく、21年目へ。 

 

【副編集長ブログ】黒田さんが訴えたマル社会

参院選投開票日前夜、事務所すぐ近くで参政党の「打ち上げ」街宣があった。おぞましいフレーズに合いの手の拍手が沸き起こる。恐怖を覚えた。

気を取り直し、この日、久しぶりに開いたのが「みんなのために 自分のために」(解放出版社)。黒田清さんが手がけた「窓友新聞」で1990年1月号から始まった長期連載「90年代社会」の一部を書籍化したもので、「窓友新聞」に転職する前の私は、一読者として毎月、紙面でこの連載を読むのを楽しみにしていた。

◯社会=マル社会とは何なのか。前書きで黒田さんはこう記している。

〈戦争中までのタテ社会に代わって、日本社会の基盤となったはずの民主的ヨコ社会も、一人一人の個人、一つ一つの団体が、お互いに垣根を作り孤立している間は隙間だらけの社会であり、その隙間に差別が入りくんでくるということです。

では、どうすればいいのか。タテは駄目、ヨコでもアカンというのなら、1990年代の生きかたは「マル社会」でなければならないのではないか。 「マル社会」は、生き方も考え方も同じ人たちが手をつないで丸くなって生きることではありません。それぞれが自分の生き方、考え方を大事にしながら、違った生き方、考え方の人たちが手をつないで生きる社会です。それが自分のため、そして同時にみんなのためになるのです〉  

黒田さん、「窓友新聞」が活動の柱とした反戦反差別。後継を自認する「新聞うずみ火」もそれを標ぼうしてきた。でも、マル社会はさらに遠ざかってしまった。敗戦80年の節目だというのに。

それでも、地道にやり続けます。読者と共に。まもなく創刊20年。

【編集長の怒り】子どもたちを「穴埋め」に使うな

開幕1週間後に取材して以来、2度目の大阪・関西万博だった。2カ月後の6月12日夕方。その日は昼までの小雨も上がり、曇り空が広がっていた。最高気温は30度以下だったが、それでも熱中症と思われる人が相次いで救急搬送されていった三つある診療所の拠点である西ゲート診療所の看護師がいくつかの留意事項を伝えてくれた。「寝不足の子どもは要注意」「吐いた場合の着替えを持参してほしい」「親が自家用車で迎えに来ても会場内まで入れません」「先生がタクシーで市内まで連れ帰ると1万円近くかかります」……。やはり、夢洲で万博をやるべきではなかったのだ▼大阪は梅雨を通り越して夏本番のような猛暑が続く。テントやパラソルの設置、日傘の提供など、小手先の熱中症対策では「焼け石に水」。暑い日には行かないことが一番なのだが、大阪府は、学校単位での校外学習が見送られた子どもたちを無料で引率するツアーを開催する。家庭での来場が難しい子どもたち約1万人を上限に募集し、夏休み中に開催する予定だという。そのための補正予算約1億5000万円も府議会で可決された。吉村洋文知事は記者団にこう言ったという。「子どもたちが万博来場を諦めて閉幕を迎えることなく、未来社会を体験してもらう取り組みが大きく前進した」(6月17日産経新聞)。夏場の来場者が減ることが予想されるので、来場者目標2820万人を達成するために子どもたちを穴埋めに使うことではないのか万博テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だが、パビリオン建設の作業員の命を削り、子どもたちの命まで……。会場の隣ではIRカジノの工事が急ピッチで進んでいた。

【編集長のなげき】郵便局からの非情な通知

▼まさに現代の大岡裁き、胸のすくような報告内容だった。兵庫県知事の告発文書をめぐり、県議会特別調査委員会(百条委員会)に続いて、県が設置した第三者委員会が公表した調査報告書。「告発文書は公益通報」「知事の告発者探し『違法』」などと斎藤知事への厳しい評価が並ぶ。だが、第三者委の藤本久俊委員長は記者会見で「厳しい批判ではない。これがスタンダードだ」と語った。さて、どう出る斎藤知事。議会が閉会する3月26日以降、何らかの発表をする見込みだというが、「これも一つの見解」などと開き直るようなら、議会はもう一度、不信任案を出すべきだろう。   ()

▼そうこうしているうちに春4月。夢洲での大阪・関西万博の開幕が迫る。大阪府は小中高の児童・生徒を学校単位で紹介する事業を進めているが、保護者や学校関係者から不安の声が高まっている。万博会場に含まれる1区にはダイオキシンやPCB、下水汚泥などの有害物質が埋められ、メタンガスなどがいたるところから発生。緊急時の避難経路も限られている。豊中市の「万博校外学習を心配する親の会」は中止を求める署名2万5100筆を市長に提出する。私も強制反対!  (野)

▼郵便局からの通知にうずみ火事務所に衝撃が走った。印刷代に続き、ゆうメールの値上げ。昨年秋の郵便料金の値上げで多少の覚悟はしていたが、1通につき96円だったのが、4月から129円と33円もアップする。創刊20年目を迎え、最大の危機かも。いい知恵があれば教えてください。(宏)

4月12日(土)午後2時~トークセッション「万博のツケは誰が払うの?」

大阪・関西万博を取材・研究しているジャーナリストや財政学者、建築士によるトークセッション「万博のツケは誰が払う!」が開幕前日の4月12日(土)午後2時~、大阪市都島区の大阪私学会館で開かれる。

昨年8月にちくま新書から刊行された「大阪・関西万博『失敗』の本質」で、政治・建築・メディア・経済・都市の視点から検証し、問題点を浮き彫りにした5人の執筆者が一堂に集まる。万博の課題の「現在地」をあらためて洗い出し、万博後の跡地開発やその後に控えるカジノ問題に警鐘を鳴らす。

一般1500円、チラシ持参の方は1200円。

私学会館はJR東西線「大阪城北詰駅」③出口から西へ徒歩2分。 

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