新年に入って腹を立てたこと。今月17日付の警察人事だ。

昨年12月、ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之氏に性暴力を受けたとして訴え、争われた民事裁判で勝訴した。その後、元TBS記者側が控訴したので裁判は続くが、この事件で不可解なことをあらためて指摘しておきたい。警視庁高輪署の刑事が準強姦容疑で逮捕状を取り、アメリカから帰国する元TBS記者を成田空港で逮捕しようとした寸前に「待った」がかかったのだ。

誰が待ったをかけたのか。その前になぜ、待ったがかかったのか。

この元TBS記者は安倍総理に近い政治部記者。姉は安倍昭恵夫人の友達で同級生だという。TBSをやめた後、「総理」というタイトルの「よいしょ本」を出版している。

敗訴判決が出た民事裁判の後に開いた外国人特派員協会での記者会見でも、「総理とお友達だから逮捕されなかったのではないか」とか、「あなたは逮捕も免れる上級国民か」などという質問が相次いだ。

さて、「待った」をかけた当時の警視庁刑事部長。菅官房長官の秘書も務めた警察官僚。その人物が今回の人事異動で警察庁のナンバー2の次長に栄転したのだ。順調にいけば、2年後には警察庁長官になるとみられている。

官僚たちの人事を一手に握っているのが内閣人事局。設置されたのは2014年、第二次安倍政権のとき。それまでは各省庁が人事権限を握っていたが、官邸に一極集中させ、官僚をコントロールする組織で、今では「忖度を生む元凶」とまで言われている。

通常なら逮捕すべき人物を書類送検にとどめるぐらいの優れた警察官僚なのだろうが、これも安倍政権の「えこひいき」ではないかと勘繰っているのは私だけではないはず。(矢野)