先週土曜日、JR天王寺駅から北に向かって歩いて5分のところにある「統国寺」へ行ってきた。統国寺の「統」は統一の統、「国」は国、朝鮮半島と深い関係があるお寺だ。

この日夕方から「ナンジャン」というイベントが行われ、この番組の亘佐和子ディレクター、上田崇順アナウンサーと一緒に行ってきたのだが、「ナンジャン」とはナンジャンと思っている方もいるのでは。

ナンジャンは、韓国語で「市場のにぎわい」を表す言葉。漢字で書くと「乱場」。いわば「なんでもあり」という意味だという。 

世界的なイラストレーターの黒田征太郎さんが、友人であり韓国民族の打楽器奏者の第一人者のキムドクスさんに呼びかけ、実現した日韓の友情のイベントだ。

実はこの二人、30年前に一度、ナンジャンをやったことがある。その時は、今は故人となった作家の野坂昭如さん、中上健次さんたちも一緒で、都はるみも参加したという。

黒田さん、キムドクスさんとも「今の日本と韓国のこじれてしまった仲を前にして、もう一度『ナンジャン』をやろう」と意気投合し、思いを一つにして起ち上がることになった。

ナンジャンの実行委員会の一人、ジャーナリストの立岩陽一郎さんは挨拶の中で「このイベントは右や左と、政治的なメッセージを発信しようとするものではありません。日韓対立という『壁』を超えて、画家が描き、音楽家が奏で、みんなで歌って、踊って、語らい、賑わおうとする何でもありのイベントです」と語った。

寺の境内には、かつて東西ドイツを隔てていたベルリンの壁の一部が保存されており、その壁の前に設けられた仮設の舞台で、キムさんと在日4世の若者が韓国伝統楽器の鐘や太鼓を打ち鳴らす「サムルノリ」でスタート。会場を盛り上げました。ラップあり、韓国の民族舞踊あり、歌手の新井英一さんのライブあり、境内にはお好み焼きの屋台も出て、ビールも販売された。

締めくくりは、黒田さんとキムさんの「ライブペインティング」。キムさんが韓国の太鼓「チャング」をたたきながら、黒田さんが音楽に合わせながら白いキャンパスに絵を描いていく。青色や水色、白色の絵の具をたたきるけるように描いていく。海かな、波かな、それともカモメ…。突然、キャンパスの真ん中に、黄色とオレンジ色でお日様を描いた。

「朝鮮半島と日本は水でつながっている。仲良くすべきお隣同士」と黒田さん。こんな言葉で30年ぶりのナンジャンを締めくくった。

「僕は5歳の子を見ると、この子が20歳になった時の時代を考えるのです。今、5歳の子を見て、その子らの20歳の時がこのままでは明るいものになるとは思えません」(矢野)