「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」が10月21日に実施した厚労省、外務省、警察庁との政府交渉。リアルで傍聴したかったが、翌日が今月号の入稿日。残念ながら断念した。終了後の報告会見をオンラインで視聴して驚いた。遺骨が収容されて2カ月近いのに、DNA鑑定は手つかず。遺骨は山口県警科捜研の冷蔵庫の中だという。「あのご遺骨に申し訳ない。83年待って、やっと日の目を見たのに。ご遺骨の立場に立つという、熱意のかけらもない」。井上洋子共同代表が声を詰まらせていた▼DNA鑑定だけでなく、ほとんど何も動いていない現状。政府交渉に同席した国会議員の一人は、民主党政権時の官僚たちのサボタージュを重ね、振り返っていた。まさにこの日、そのほんの数百㍍先で高市政権が発足した。首相交代で、進展どころか「塩漬け」「後退」なのか。それでも刻む会の上田慶司事務局長は「高市政権がどんな態度でこようが、前進していく」と言い切った。パソコンの前で思わず拍手した。めげずに前進あるのみ。自分もかくありたい▼刻む会はこの日、保有する29人分のDNA型のデータを警察庁に提供した。12月19日までに進展がなければ、民間団体などに依頼して独自に鑑定を行うという。11月には犠牲者が5人いる沖縄で会見、遺族探しのキャンペーンも開始する。来年2月には世界屈指のダイバーたちを招く遺骨収容プロジェクトが始まる。同時期に実施する追悼集会には韓国政府関係者が来日する。「現地に来て悲しみを共有してほしい」という井上共同代表の訴えを、日本政府はいつまで無視し続けるのか。なお、この追悼集会には、文在寅(ムン・ジェイン)元大統領の参列もささやかれている。 (栗)

