先月に続き、民間 ボランティアに参加 するため輪島市に入っ た。が、相変わらず 不気味な静けさに包 まれていた。能登半島地震の発生からまもなく5カ月になるのに、倒壊家屋は手つかずのまま。解体業者がいないから重機も見かけない。業者と住民との日程調整を行う職員が足りない。平日の昼間とはいえ、被災した家の中の片づけを手伝ってくれるボランティアも見当たらない。▼ふと、頭に浮かんできたのが「棄民」の二文字。「無駄な財政支出は避けたい」。先月、財務省での財務制度等審議会分科会で飛び出した発言だ。ネット上にも避難者に対する心ない言葉が並んでいる。「今だけ、金だけ、自分だけ」の新自由主義がここまではびこる世になってしまったのか。地震大国では、明日はわが身なのに…。▼「高齢化・過疎」とひとくくりにされる能登だが、若者たちが立ち上がっている。今月号で紹介した被災料理人たちもそう。自宅や店が全半壊となり、自分たちの生活も大変なのに、避難所で炊き出し支援。なぜ、自分のことは後回しにできるのか。被災者の一人が古くから伝わる言葉を教えてくれた。「能登はやさしや土までも」。厳しい自然と共存する中で培われた生き方なのかも。また来月も能登に入ろうと思う、知らないうちに「棄民政治」に加担させられていた、なんてことがないように。▼さて、元毎日放送アナウンサー水野晶子さんによる5月4日の能登半島地震の被災地支援ライブ「落語と朗読」。収益金14万円を、輪島市三井町を拠点に支援活動を繰り広げる「のと復耕ラボ」代表の山本亮さんに手渡しました=写真。ご協力ありがとうございました。