自民党の裏金事件を受けた改正政治資金規正法が成立した6月19日、国が地方自治体へ指示できるようにする改正地方自治法も成立した。緊急時を口実にして憲法で保障された自治体の権限を奪う悪法であり、自民党が改憲の一つに掲げている緊急事態条項の事実上の導入である。

政府はコロナ禍を例に必要性を強調し、「大規模な災害、感染症のまん延などの国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」で限定的だと主張する。だが、どんな事態に指示を出すのか、具体的なことは何一つ明らかにしておらず、時の政府が恣意的に乱用する危険もある。それに、改正の根拠とする大規模災害やコロナ禍については、災害対策基本法や感染症法などの個別法で国の指示権が規定されおり、思惑は別のところにあるのではないかと勘繰ってしまう。

かつて、この国は内務省の地方支配を通じて中央集権国家を築き上げ、軍国主義に国民を駆り立てた挙句、国家を破滅させた。その反省から、国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」へと改められた。今後、国の恣意的な介入を許し、対等なはずの国と地方が主従関係の時代へと逆戻りさせられるのではないか。

敵基地攻撃能力の保有、武器輸出三原則の廃止、防衛費GDP比1%越えと、「戦争する国」にまい進する岸田政権。国家権力の暴走を止める憲法という「足枷」がまた一つ外されてしまった。次の狙いは何か。徴兵制の復活かもしれない。そういえば、こんな声をよく耳にするようになった「国のために尽くすことは尊いことだ」と……  (矢)