この夏も能登半島地震の被災地に入った。大阪から特急サンダーバードで敦賀を目指し、北陸新幹線に乗り継いで金沢に入る。サンダーバード1本で金沢まで行けた時と比べ、片道2150円アップ。往復で新聞うずみ火の年間購読料に匹敵する。

被災地に入るたび、約240棟が焼失した「輪島朝市」を訪ねているが、解体・撤去作業は徐々に進んでいるようだ。先月まで赤褐色に焼けたガレキに覆われていたが、ようやく焼失した建物の基礎部分が見えるようになった。だが、川一本へだてた同市鳳至町(ふげしまち)に入ると、言葉を失う。公費解体は進んでおらず、倒壊した建物は手つかずのままだ。この惨状を見れば、日本が「先進国」とは誰も思わないだろう。

石川県内最大の水揚げを誇る輪島港で70代の漁師に声をかけた。港の海底が2㍍ほど隆起し、漁船200隻ほどが閉じ込められている。漁協の製氷施設も壊れ、元日から漁のできない日々が続いている。海底を掘り下げる工事を行っているが、11月6日はズワイガニの解禁日。水揚げの7割を占めていたが、間に合いそうもない。「わしらは陸に上げれば何もできん」

岸田首相退陣で後任を決める自民党総裁選のニュースが過熱し始めた。能登半島地震の被災地は忘れ去られるのか。「棄民」の二文字が頭をよぎる。明日はわが身……。