阪神・淡路大震災の発生から30年を迎えた翌1月18日、目を疑う事件がネットニュースに流れた。兵庫県の斎藤元彦知事らが内部告発された問題を調査してきた県議会百条委のメンバーだった竹内英明・前県議の自殺である。「竹内氏は斎藤知事を陥れた黒幕の一人」とSNS(ネット交流サービス)で発信され、ネット上で誹謗中傷を受けていた。その張本人の「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏は動画投稿サイト「ユーチューブ」で「逮捕されるのが怖くて自ら命を絶った」などとデマ情報を発信。Ⅹ(旧ツイッター)でも同様の投稿をした▼さすがに、これは放置できないと判断したのか、20日には兵庫県警のトップが「全くの事実無根だ」と述べ、拡散されている情報を明確に否定した。これを受け、立花氏は「県警本部長が否定したので、私が言ったことは事実ではなかった」と投稿を削除したが、「動画投稿はやったもん勝ち」の世界。立花氏のデマ動画は再生回数を稼ぎ、収益を得ている▼米大統領に返り咲いたトランプ氏のXのフォロワー数は1億を超え、韓国では突然の戒厳令宣布で弾劾訴追案が可決された大統領が、ユーチューブの情報に影響を受けていた可能性が伝えられている。今、インターネットの世界では次々に過激な主張が登場しては拡散され、安易に信じてしまう人の心の動きが注目されている。自分は正しく、相手は間違っているのだから攻撃して当然と思う人が増えている。社会全体が貧しくなり、車にたとえれば、ハンドルの遊びのない世の中になってしまったようだ▼それでも現場を訪ね、愚直に訴えていくしかない。今年、新聞うずみ火は創刊20年。小さな小さな新聞ですが、今年もよろしくお願いします。 (矢)