IRカジノのための大阪万博が開幕した。維新による万博の取り組みは2014年にさかのぼる。当時の橋下徹・大阪市長が夢洲をIRカジノの候補地とする基本計画を決めた後、松井一郎・大阪府知事が万博誘致を表明。当初、開催候補地6カ所の中に夢洲は含まれていなかったが、16年に松井氏が夢洲を想定した「試案」を突然公表。維新と蜜月関係にあった安倍政権をバックに、万博誘致の動きは加速した▼万博の成否は維新の党勢に直結する。それを判断するものさしの一つが入場券の売り上げ。運営費1160億円の8割を賄う。損益分岐点は1800万枚だが、現状は半分ほど。開幕直前、吉村洋文知事は万博の成功についてこう答えていた。「予定通り行われば約3兆円の経済効果があり、それだけで成功と言える」▼今年は戦後80年。当時、敗戦を見抜いた人たちがいた。近衛文麿首相直轄の調査研究機関「総力戦研究所」。官民各層から抜擢された36人が出した結論は「日本必敗」。それを否定したのが当時の東条英機陸相で「机上の演習であり、実際の戦争というものは、君達が考えているようなものではない」。データよりも「空気」が重視された▼万博もやってよかったという空気に流され、そのツケを回されることがないよう注視しなけば。