ペルシャ湾における海上輸送の要衝、ホルムズ海峡近くで日本の海運会社が運行するタンカーなど2隻が攻撃されてから6月20日で1週間になるが、犯人は未だに判明していない。にもかかわらず、アメリカ政府の反応は早かった。事故の翌日には、ポンぺオ国務長官が「イランに責任がある」と名指しで非難し、トランプ大統領もFOXテレビで「イランがやった」と断定した。もちろん、イランは否定している。

さらに、中東地域を管轄するアメリカの中央軍が「イランが関与した」とする映像を公開した。精鋭部隊のイラン革命防衛隊がボートでタンカーに近づき、物的証拠となる船体に吸着された不発の爆発物を回収しようとした様子だと説明するが、映像は白黒で粗いため、どんな作業をしているのか判別つかない。

しかも、タンカーを運行する日本の海運会社の社長が語った「乗組員は飛来物でやられたと言っている。側面に爆弾を張り付けたとは考えていない」という内容と矛盾する。

思い出されるのが、アメリカがベトナム戦争介入のきっかけとなった「トンキン湾事件」だ。19648月、北ベトナム沖のトンキン湾で北ベトナム軍の哨戒艇が米海軍の駆逐艦に2発の魚雷を発射したとされる事件で、後にアメリカが仕組んだことをニューヨーク・タイムズが暴露した。

湾岸戦争の時の「油にまみれた水鳥」の映像では、イラクのフセイン大統領が油田の油を海に放出していると報道されたが、アメリカの爆撃の結果をフセイン大統領の仕業とすり替え、悪のイメージを世界に決定づけた。クウェートから逃げてきたという少女ナイーラのアメリカ議会での嘘の証言。「私はボランティアとして働いていたが、銃を持ったイラクの兵隊たちが病院に入ってきて、保育器の中に入った赤ん坊を取り出し、冷たいフロアに置き去りにした」。これもアメリカの広告代理店の筋書きだったことが判明しており、ナイーラの父親は駐米大使だった。さらには、アメリカがイラク戦争開戦の最大の理由とした「大量破壊兵器の存在」と「フセイン大統領とアルカイダのつながり」もまた然りだ。

だが、戦争好きのアメリカが今度、戦争に踏み切ると、日本も他人事ではすまない。集団的自衛権の行使を容認した安保法によって自衛隊が出陣することになる。ベトナム戦争の時の韓国軍のように。

日本がやるべきことは、核合意堅持に向けてアメリカとイラン両国に粘り強く相互対話を呼びかけること。 安倍外交は単にアメリカのメッセンジャーであってはならない。

 

※写真は20日付朝日新聞より