住民の合意なき大阪IRカジノ誘致計画を止めるべく、大阪市が大阪IR株式会社に誘致予定地の夢洲の土地を貸す「定期借地権設定契約」の差し止めを求めた裁判が10月18日、大阪地裁で始まった。原告は名古屋市立大名誉教授の山田明さん(大阪市淀川区在住)ら5人。
夢洲は言わずと知れたごみの島。土壌汚染や液状化の可能性があるとして、市は約790億円の負担を決定した。山田さんらは「過大な支出を軽減する地方財政法などに違反する」として住民監査請求したが、「合議不調」となったため、提訴に踏み切ったのだ。
「監査請求で大阪市は居直ったかのような姿勢だった。公共事業や地方財政を研究してきた者として、底なしの財政負担をするリスクは看過できない」。日ごろ柔和な山田さんが語気を強めた。奇しくもその日は、誘致の是非を問う住民投票を求めた府民の直接請求が臨時府議会で否決された日だった。法定数を大きく超える21万筆の署名が寄せられたのに、わずか半日の審議で即日採決。府民の願いは門前払いさながらに退けられた。
今回の「夢洲IR差し止め訴訟」を、山田さんらはこう位置付けている。「さまざまなカジノ誘致反対運動の一角を担うものであり、地盤改良のためとして約790億円の投入をはじめ、カジノ誘致のためにとめどなく予算を投入しようとしている大阪市の財政を救うために投じる一石」。さらに、より多くの府民、市民に夢洲IR誘致の実態を知ってもらい、カジノ誘致計画を止めることを目指すとも。
これからも矢継ぎ早に次の一手を繰り出していくしかない。微力ながら、うずみ火も声を上げていく。沖縄・辺野古のテント村にこんな言葉が掲げられていたっけ。「勝つ方法は、あきらめないこと」。