一夜にして1860人が犠牲になった「堺大空襲」から75年目を迎えた7月10日、堺市堺区にある「市戦災殉難之地」碑の前で、空襲犠牲者殉難地追悼会が開かれ、小雨の中、市民ら50人が参加した。

「自由と自治・進歩と確信をめざす堺市民の会」と「堺青年革新懇」の主催で、今年で35回目。

太平洋戦争末期の1945年3月から8月にかけて、堺市は5回の空襲に見舞われた。なかでも7月10日未明からの第４次空襲は、米軍による無差別空爆で当時の市街地の6割以上が焼失し、3000人もの市民が死傷するという甚大な被害をもたらした。100機を超えるＢ29が来襲したことから、「第6次大阪大空襲」とも「堺大空襲」とも呼ばれている。

東京や大阪など大都市を燃やし尽くしたあと、米軍は6月17日から全国の中小都市をターゲットにする。サイパン、テニアン、グアムのマリアナ諸島に飛行場を作り、第58、73、313、314の四つの航空団を配置した。それぞれが一つの都市攻撃を担当した。

第7回中小都市空爆の目標は仙台、酒井、和歌山、岐阜の4都市だった。

米軍は180都市の攻撃リストを制作していた。日本の第5回国勢調査に基づいて、当時の市制を施行していた都市を選んだ。すでに攻撃した大都市、北海道や東北など北緯39度以北にある都市も外した。京都、広島、新潟、小倉の原爆投下目標都市も除外され、139都市について空襲計画が立てられた。

45年7月9日午後10時半過ぎ、堺市に空襲警報が発令された。この時、南50㌔先の和歌山市が空爆を受けていた。堺市では警報も解除され、ラジオも和歌山を攻撃していたＢ29が撤去したことを伝えた。「今夜は大丈夫」と思って寝床に入ろうとした10日午前1時過ぎ、堺の上空に116機のＢ29が来襲した。

追悼会では、堺市在住の増栄康子さん（88）が「土居川の周辺には龍神遊郭があり、遊女がたくさんいて、その遊郭も焼夷弾の直撃を受け、くるわも火の海になり、遊女たちの着物にも火がついて火だるまになり、水を求めて近くの土居川に飛び込んだのだと思います。当時女学生だった私は阪堺電車の中から、真っ黒こげになった遊女たちの死体の山が土居川を埋め尽くし、地獄絵図さながらの光景が、今も脳裏に焼き付いてわすれることができません」と空襲体験を振り返り、こう締めくくった。「戦争体験者の私たち世代も残り少ない命となりました。この史実を後世に伝えていっていただきたい。このバトンを皆さんにお渡しします」