突然の悲しい訃報だった。立命館大コリア研究センター研究員の塚崎昌之さんが9月16日に脳出血のため亡くなった。67歳だった。塚崎さんは在日朝鮮人史が専門で、大阪の朝鮮人強制連行研究の第一人者。2019年9月のうずみ火講座で「韓国はなぜ『徴用工』問題にこだわるのか~大阪の朝鮮人強制連行から考える」と題して講演していただいた。韓国大法院の「元徴用工訴訟」判決から1年、「昔の話を蒸し返すな」「解決済みだ」などと韓国バッシングが吹き荒れた時期だ。塚崎さんは戦中、戦後、現在の強制連行被害者への三つの加害についてわかりやすく解説してくれた。

その後、MBSディレクターの亘佐和子さんが塚崎さんをインタビューした際、「私一人で聞くのはもったいない」とメディア関係者に呼びかけて「塚崎塾」がスタート。「メディア関係者だけではもったいない」とうずみ火の読者にも呼びかけさせてもらうようになった。毎回たくさんの資料を用意してくれ、熱く語ってくれた。4月の雨の中での大阪城探訪もそう。午前10時にスタートし、終わったのは夕方。大阪砲兵工廠の跡地や「アパッチ族」が警官に射殺された場所など、詳しく教えていただいた。11月は枚方フィールドワークの予定だったが…。

奇しくもいま、汚染水の海洋放出問題が日中関係を険しくしている。元徴用工訴訟の問題でもそうだったが、日本政府のやり方はあまりにも強引過ぎないか。国際原子力機関(IAEA)のお墨付きを振りかざし、それに理解を示さないのは「非科学的」「非国民」とのレッテルを貼る。大本は自分たちが起こした事故が原因。もっと謙虚であるべきではないか。あらためて、塚崎さんがうずみ火講座で語った言葉を思い出す。「想像力豊かに被害者の思いに寄り添うことが求められている」

 

※写真は4月の大阪城フィールドワーク