日韓の対立をめぐって、日本のマスコミ、特にテレビはどの局も韓国攻撃一色と言っていいぐらい、ヘイト=憎悪まるだしの解説や上から目線のコメントを連日、垂れ流している。

文在寅大統領の側近で、法務大臣に起用すると指名されたチョ・グク氏を「タマネギ男」と揶揄し、どのテレビ局のワイドショーも連日取り上げている。「韓国はとんでもない国だ」という印象を与えかねない、反韓国キャンペーンとも思える報道の影で、日本にとっていくつかの大事なことが報道されていないのではないか。

その一つが、政治家の劣化。

自民党衆院議員で、厚生労働政務官だった上野宏史氏の口利き疑惑の問題。

報道した週刊文春によると、「外国人労働者の在留資格の認定をめぐって、法務省に口利きを行う見返りに、人材派遣会社に1人あたり2万円の金銭を求めていた」という疑い。事実なら、「あっせん利得処罰法」違反という犯罪。政務官を辞めただけで済む話ではない。

安倍政権は外国人労働者受け入れ拡大を推進しており、今年4月に法務省の「入国管理局」が「出入国在留管理庁」へ格上げされ、新たな在留資格「特定技能」が設けられた。これに厚労省も連動し、「技能実習の職種のあり方に関する検討チーム」を設置したが、このトップが上野氏だった。

上野氏は公表したコメントの中で「金銭の要求など不正なことはしていないが、政務官の立場にあることで誤解を招きかねない。政府に迷惑をかけたくない」と説明し、828日に政務官を辞任した。

報道を受けて直接説明する記者会見などは開かず、説明責任を果たさないまま辞任した。説明責任も果たすことなく雲隠れ、安倍総理にも任命責任があるはずなのに大きな声にならず、来月の内閣改造の話題ばかりが先行している。こんないい加減な事で済ませていいのか。

さらに、もう一人。

北方領土について「戦争しないとどうしようもなくないですか」などと発言、国会の「糾弾決議」を受けた丸山穂高衆院議員。日本維新の会に除名された後、NHKから国民を守る党に入党した丸山氏が先月31日、韓国が実効支配する島根県の竹島について「戦争で取り返すしかないんじゃないですか?」とTwitterに投稿した。

戦後74年たったが、空襲に遭い、爆弾の破片で手足をもぎ取られたり、燃える爆弾「焼夷弾」で全身大やけどを負ったり、かけがえのない肉親を奪われて孤児になった人は今も悲しみや苦しみの中にいる。戦争は軍人だけがやるのではなく、一般の私たちも巻き込まれる。「領土を取り戻すためには戦争して国民が血を流せ」と言っているのと同じ。

こんな発言をしながら、ほとんど報道されていない。

韓国を嫌う「嫌韓報道」の陰に隠れたもう一つの大事なこと。それは兵器の爆買い。

先日、防衛相が発表した2020年度概算要求によると、第2次安倍政権になって、6年連続で過去最大を更新して53223億円。

計上された主な武器は、護衛艦「いずも」の事実上の空母化で31億円。いずもに搭載するF35B6機で846億円。敵基地攻撃能力につながる可能性のあるF35A3機で310億円。北朝鮮から米領グアムなどに向かう弾道ミサイルを迎撃するためのイージス・アショアの取得関連費で122億円。

貿易赤字削減のために米国の武器購入をトランプ大統領に迫られたとはいえ、専守防衛を逸脱し、厳しい財政をさらに圧迫する買い物ばかり。で、これらの武器で誰を守るというのか。

韓国ヘイト報道で、私たちは大事なことから目を逸らされている。(矢野宏)